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バイオ

未利用資源であるワイン製造残渣を用いて、高付加価値を付けた新規の機能性素材を製造する

北海道

北海道ワイン株式会社

2024年12月5日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 ワイン製造残渣を利用した新規機能性素材の研究開発
基盤技術分野 バイオ
対象となる産業分野 医療・健康・介護、食品
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(精度向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、高効率化(生産性増加)
キーワード ブドウ・ワイン、ポリフェノール、分級・粉砕化、制菌作用、菌叢改善
事業化状況 実用化に成功し事業化間近
事業実施年度 平成30年度~令和2年度

プロジェクトの詳細

事業概要

ワインの製造過程で生じるブドウ圧搾残渣の有効利用方法ならびに生産加工技術は未確立である。本研究課題では、北海道ワインが保有する「ブドウ圧搾残渣を利用した機能性素材の生産技術」を高度化する。さらに、これまでに当研究グループが見出してきたブドウ圧搾残渣の新規機能性の解析を行い、これらの機能を付与した機能性素材を開発しようとするものである

事業概要
開発した技術のポイント

・ブドウ圧搾残渣を用いた機能性素材の高効率生産技術の確立
-分級プロセスの効率化
*分級プロセスにおける律速箇所を把握した上で新たな分級工程の開発を行った。
-粉体化技術の最適化
*果皮及び種子別に粉砕方法の確立を行った。
・ブドウ圧搾残渣を用いた新規機能性素材の研究開発
-制菌作用の評価
*複数種の菌についての制菌スペクトルの解明及び作用機序の解明を行った。
-腸内細菌および皮膚常在菌への影響評価
*ブドウ圧搾残渣が、腸内細菌および皮膚常在菌へ及ぼす影響を評価するとともに、それに伴う生理活性を確認した。
-新規機能性物質の同定
*制菌作用をもたらすポリフェノール成分の特定及び腸内細菌および皮膚常在菌への影響を及ぼす物質を明らかにした。
-新規機能性物質の高効率な抽出技術の確立
*ナイヤガラ圧搾残渣の果皮および種子中からの高効率なポリフェノール成分抽出条件を検討した。
・試作品の作製
*現在までに構築した製造工程を利用し、「機能性素材」の試作品を製造した。

具体的な成果

・ブドウ圧搾残渣を用いた機能性素材の高効率生産技術の確立
-分級プロセスの効率化
*新規の分級プロセスを開発し、作業効率を大幅に改善する事で商業的利用が可能となった。
-粉体化技術の最適化
*果皮種子の混合物だけではなく、果皮及び種子単体における最適粉砕方法を確立させた。
・ブドウ圧搾残渣を用いた新規機能性素材の研究開発
-制菌作用の評価
*複数種の菌について制菌スペクトルを解明し、その作用は特定のポリフェノールによって強くもたらされることを確認した。
-腸内細菌および皮膚常在菌への影響評価
*ブドウ圧搾残渣をマウスが経口摂取する事で腸内細菌および皮膚細菌が変化することを明らかにした。またブドウ圧搾残渣をマウスが経口摂食する事で酸化ストレス低減効果を確認した。
-新規機能性物質の同定
*数十種類のブドウ品種についてポリフェノール原料としてのポテンシャル及びヴィンテージごとの安定性を評価した。
*強い制菌作用を示す特定のポリフェノールを詳細に解明した。
*マウスの腸内細菌および皮膚細菌を変化させる物質がポリフェノール群である事を確認した。
-新規機能性物質の高効率な抽出技術の確立
*ナイヤガラ圧搾残渣中に含まれるポリフェノール成分について抽出挙動のモデル化を行いポリフェノール成分毎の最適抽出条件を導き出した。
・試作品の作製
*機能性素材原料としてブドウ圧搾残渣乾燥粉末を2種類(果皮粉末・種子粉末)試作、試作した機能性素材に対して安全性試験を含む様々な成分分析を網羅的に実施し原料規格を設定した。

研究開発成果
知財出願や広報活動等の状況

本研究で開発した圧搾残渣の分級工程については、「ブドウ種子果皮分離方法」として特許出願した。新規制菌作用物質については、新規性が高いため現在特許出願準備中であり、知財化の時期と調整しながら、学会および国際学術雑誌への投稿を検討している。ブドウ圧搾残渣の抗ストレス、抗炎症および腸内細菌叢改善効果については、学術的な新規性が高いため、知財化の時期を見極めながら国際学術雑誌へ投稿する予定としている。

研究開発成果の利用シーン

圧搾残渣を果皮と種子に分級してから粉末化する事で特定の機能成分をより効率的に集める事が可能となる(抽出を含めて)。経口摂取する事への安全性も確認している事から機能性食品素材としてダイレクトに添加し機能性を付与する事も可能であり、特定成分の抽出物を化粧品に配合する事も可能となる。また制菌作用の機能性を用いれば異業種への応用も可能となる。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

開発した素材をもとにサンプルワークを実施し、機能性食品素材や化粧品素材として事業化を検討している。また先述の事業化と並行して制菌作用を活かした商品化への展開も検討している。

提携可能な製品・サービス内容

素材・部品製造、共同研究・共同開発

製品・サービスのPRポイント

今回、ブドウ圧搾残渣を経口摂取する事で腸内細菌叢及び皮膚常在菌叢を変化させることが見出された。腸内細菌叢が変化とともに現在は酸化ストレス低減効果を見い出したが、腸内細菌叢改善効果は多様な健康訴求効果とリンクしているとの報告があることから複合的な機能性訴求効果が期待できるため、様々なヘルスクレームに対応できる商品が開発できる。これは新型コロナウイルスの影響により急速に変化をしている健康トレンドにも対しても柔軟な対応が可能であることが示唆している。

今後の実用化・事業化の見通し

・機能性食品素材としての事業化
-最初に機能性食品素材としての事業化展開を検討している。機能性表示食品の中では健康食品のサプリメントがその多くを占めており、本開発品は直接配合を目論んでいる事から市場ニーズに合致した素材である。本開発品を機能性食品素材として、アドバイザー企業をはじめ機能性食品を扱う企業向けに販売することを検討している。
・制菌作用
-直接太陽光があたる箇所への配合、例えば車のシートや壁紙といった資材に配合し自動で制菌・消臭をもたらす機能を付与する展開を検討している。

実用化・事業化にあたっての課題

事業化への課題については、生産技術の確立について効率的な生産技術の目処がついたので現時点で追加研究の必要はないが、付与する機能性については、刻々と変化する市場ニーズや川下企業のニーズについて、市場調査結果等を考慮し自社でエビデンスを取得する機能性の見極めが必要な事である。しかしながら腸内細菌叢改善にリンクした更なる機能性評価や成分分析が見込まれる場合には引続き研究が実施できる体制にある。また本格的な事業化に向けては、既に新たな生産設備の導入検討や、素材の大規模製造展開に向けて委託による製造先の検討が必要である事から川下企業のニーズに合わせた全国展開はまだ検討段階である。

事業化に向けた提携や連携の希望

量産設備の導入等が必要になった場合には、各種支援施策等を調査して活用していく事も検討している。また当該製品(ブドウ果皮/種子粉末)は中間的素材のため、BtoCの商品開発を行う場合には川下企業との連携・交渉が重要となる。機能性食品や化粧品の各用途別毎に販売ターゲットを明確にし連携をしていきたい。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 北海道ワイン株式会社 製造企画部
事業管理機関 公益財団法人北海道科学技術総合振興センター 研究開発支援部
研究等実施機関 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 産業技術環境研究本部 工業試験場 材料技術部 化学プロセスグループ
学校法人昭和大学  医学部 生理学講座 生体制御学部門
学校法人北海道科学大学 薬学部薬学科 医薬化学分野

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 北海道ワイン株式会社(法人番号:1430001050454)
事業内容 日本ワインの製造販売、ビール・発泡酒・ワインビネガー・ビネガードリンクの製造販売、ワイン製造残渣を活用した研究開発
社員数 82 名
本社所在地 〒047-8677 北海道小樽市朝里川温泉1丁目130番地
連絡先窓口 北海道ワイン株式会社 製造企画部 田島 大敬
メールアドレス hirotaka-tajima@hokkaidowine.co.jp
電話番号 0134-34-2181