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材料製造プロセス

スマート鍛造プロセスの実現により、鍛造によって製造される部品の高性能化および低価格化を実現

岡山県

株式会社川上鉄工所

2020年4月12日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 被削性およびコスト低減を可能にするスマート鍛造プロセスの開発
基盤技術分野 材料製造プロセス
対象となる産業分野 環境・エネルギー、自動車、産業機械
産業分野でのニーズ対応 高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、高効率化(生産性増加)、低コスト化
キーワード 自動車/駆動系部品、熱間鍛造品、TMCP加工熱処理、浸炭/耐歪特性、被削性
事業化状況 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中
事業実施年度 平成23年度~平成26年度

プロジェクトの詳細

事業概要

現状、自動車用鍛造品には、熱間鍛造後、再加熱の熱処理(焼鈍)を施し標準的なミクロ組織を造り込むことによって、被削性、耐歪性を付与している。しかし、鍛造+熱処理による2度の加熱工程は非効率でコストアップを招いている。本研究では、鍛造の加工歪と保有熱を制御し、鍛造品のミクロ組織をより適切に制御する「TMCP鍛造」を開発し、一度の加熱工程で、被削性、耐歪性の向上を図り、低コスト化を実現する。さらに実用化に向けた試作、量産を前提とした製造技術の開発も行う

開発した技術のポイント

鍛造の加熱・加工・冷却の制御を高度化することで、鍛造品の形状と材質(被削性、耐歪性)を同時に造り込むTMCPのスマート鍛造技術(焼鈍熱処理工程の省略)を開発し、異径状ギアシャフトなどで高性能化、低コスト化を図った。
・鍛造品のミクロ組織をベイナイトの混在しない適切な(F+P)組織に変態制御するることで、より良好な被削性、耐歪性が確保できた。
・焼鈍を施さない、スマート鍛造のオンライン製造によって、約40%の省エネ化、少CO2化および生産性向上、短納期化が見込める。

スマート鍛造プロセスと他プロセスの比較
具体的な成果

①鍛造成形性とγ粒度≧No.3の細粒化を両立する、制御鍛造技術を確立。
②異径状のギアシャフト鍛造品を700℃まで均一に冷却する、弊社独自の予備冷却技術を確立。(特許権利化)
③適切な分率、粒度の(フェライト+パーライト)組織に変態させる、2段恒温処理技術を確立。(特許権利化)
 上記①、②、③の要素技術からスマート鍛造プロセスが構成される。
➃鍛造/熱処理を一貫して行う、スマート鍛造の連続生産ラインを開発し、そのオンライン製造技術を確立した。
→現行よりも高性能、高生産のスマート鍛造プロセスを、代替技術としてVA提案し事業化させることにした。

ギアシャフト鍛造品の制御鍛造指針
知財出願や広報活動等の状況

論文発表 2件
①TMCPによるギアシャフト鍛造品の材質制御技術(スマート鍛造プロセス)の開発(第1報) 内田清、他。 JFA 2017 APRIL No.58
②TMCPによるギアシャフト鍛造品の材質制御技術(スマート鍛造プロセス)の開発(第2報) 同上  JFA 2017 JULY No.59
特許 3件
①肌焼鋼用の熱間鍛造品の製造方法  出願番号:特願2010-294734  出願、公開のみ。
②鍛造物及びその製造方法  出願番号:特願2013-27282  特許登録済(特許番号:水没で調査中 
③温度調節装置  出願番号:特願2013-027281  特許登録済(特許番号:水没で調査中)   

研究開発成果の利用シーン
スマート鍛造品の各部位のミクロ組織

・TMCPのスマート鍛造プロセスにより、被削性および耐歪性に優れた鍛造品を低コストで製造し提供できる。                        ・スマート鍛造技術は、従来不可能とされていた異径状のギアシャフト鍛造品でも、一様かつ良好なミクロ組織と材質を得ることができる。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細
スマート鍛造プロセスを実現する連続生産ライン

・異径状のギアシャフト鍛造品でもTMCPのスマート鍛造が可能な連続生産ラインを開発。連続生産ラインで試作したスマート鍛造品の品質は、寸法・形状・硬さの規格を満足した。さらに試作を重ね、被削性、耐歪性の向上を図り、その製造技術を確立した。                               ・量産中の自動車駆動系ギアシャフト鍛造品の製造工程を、現行プロセスからスマート鍛造プロセスに変更するためのVA提案を申請し、VAによる事業化(スマート鍛造化)を推進していくことにした。

提携可能な製品・サービス内容

加工・組立・処理、素材・部品製造、製品製造

製品・サービスのPRポイント
スマート鍛品と焼鈍品の切削抵抗比較

①TMCPのスマート鍛造プロセスは、焼鈍や焼準を施す現行プロセスよりも、適切なミクロ組織、良好な材質(被削性、耐歪性)が得られる。
・切削性:幾分粗い(F+P)組織に造り込んだスマート鍛造品は、現行よりも切削抵抗が約2%低減(被削性向上)できた。
・耐歪性:高温浸炭を模擬した過熱テストでは、現行品が異常粒成長を起こしたのに対し、スマート鍛造品は異常粒成長を起こさず、高温安定性(耐歪性)に優れていることが分かった。
・連続生産ラインでオンライン製造するスマート鍛造は、現行プロセスよりも安定した品質と量の鍛造品を、省エネ(少CO2)で提供できる。                                                                                ・量産中のギアシャフト鍛造品にスマート鍛造を適用させて頂くことで、競争力強化(高性能化、生産性向上、環境性向上)が図れる。

今後の実用化・事業化の見通し

・昨年の西日本豪雨で壊滅的被害を受けたが、スマート鍛造ラインを復旧修復し生産体制を再構築。再生ラインで試作実験を重ね、安定製造や製造技術の再確立を推進中。さらに、客先での課題である転造-浸炭時の歪発生/抑止に関する補完研究を追加することにした。                                                                      ・9/18、量産中のギアシャフト鍛造品のお客様であるA社殿を訪問し、当該品にスマート鍛造に適用/変更させて頂くためのVA提案を再申請し、事業化に向けて協議させて頂いた(弊社のVA意欲、復旧修復状況、生産体制や、VAによる競争力強化、メリットなどを、A社:6名、S商社:3名、弊社:2名で議論)。改めてA社殿で社内会議を行い、VA推進の方向で社内をまとめて頂くことになった。現在、A社殿の回答待ち。                                                             
・VAが受諾されると、スマート鍛造のサンプル材を製造/提供し、お客様でのテスト、評価、承認そして量産開始となる予定。

実用化・事業化にあたっての課題

弊社→商社S→アッセンブルメーカーA社→カーメーカーT社の商流において、中小の弊社が商社Sを介して、大手の川下企業A社、T社に工程の変更/承認を得ることの難しさを痛感。

事業化に向けた提携や連携の希望

商流に従って、誠実に、真摯に、地道にVA対応していくしかないと思っています。頑張ります。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 株式会社 川上鉄工所
事業管理機関 公益財団法人岡山県産業振興財団 技術支援部 研究開発支援課
研究等実施機関 岡山県工業技術センター 研究開発部 金属・加工グループ  村上浩二、村岡 賢、吉川満雄   応用技術部 金属・加工科  築山訓明、余田裕之(補完研究)
学校法人鶴学園広島工業大学 工学部 機械システム工学科  日野 実
公立大学法人岡山県立大学 情報工学部 情報システム工学科  福田忠生、尾崎公一
中国職業能力開発大学校 生産機械システム技術科  亀山寛司、川坂将史
アドバイザー マツダ株式会社/杉本幸弘様、  アイシンAW株式会社/清水信之様、  三遠機材株式会社/杉浦和夫様、田中達也様、               JFEスチール株式会社/上井清史様

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 株式会社川上鉄工所(法人番号:7120101061162)
事業内容 熱間精密型鍛造による自動車、産業機械、農機具、工具など向けの鍛造品の製造
社員数 40 名
本社所在地 〒719-1145 岡山県総社市下原1489
ホームページ http://www.kawakami-ironworks.com/
連絡先窓口 営業購買部 部長林祥次
メールアドレス s.hayasi@gaea.ocn.ne.jp
電話番号 0866-92-3671