材料製造プロセス
高効率で省エネルギーな新しいベーマイトの製造方法の開発
岐阜県
河合石灰工業株式会社
2025年1月27日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | ベーマイトの新規製造技術の開発 |
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基盤技術分野 | 材料製造プロセス |
対象となる産業分野 | 自動車、電池、エレクトロニクス、化学品製造 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(小型化・軽量化) |
キーワード | ベーマイト,リチウムイオン電池,セラミックス,フィラー |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化間近 |
事業実施年度 | 令和2年度~令和4年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
本研究は、次世代電動車に対応したリチウムイオン電池(LiB)の安全性向上とコスト削減を目的とし、ベーマイトの新規製造技術を開発することを主眼に置いている。リチウムイオン電池用セパレータの短絡・発火事故防止のための塗工材料としてベーマイト使用が始まってきており、今後EV普及も予想され、年間約10%の市場成長が見込まれている。ベーマイトは量産に課題があり、加熱や攪拌の方法など、より高効率に製造する技術の開発が必要である。また、用途に合った結晶にコントロールする必要がある。本事業では、結晶成長を制御しつつ効率的にベーマイトを量産する製造技術の開発が実施された。
開発した技術のポイント
・微細でかつ高結晶なベーマイト
結晶サイズの微細化とそれに相反する高結晶性の両立。
・ベーマイトの高純度化
電池の誤動作や性能劣化を引き起こす不純物の混入防止と高純度化。
・製造方法の高効率化 ~低コスト化、大量かつ安定生産~
低コスト化とういう面で、ベーマイトは、高温高圧の熱水中での合成を行うため、圧力容器(オートクレーブ)を用いた生産であり、連続的な大量生産を行うことが難しい。設備や製法で制限のある中、独自の技術で製造方法の効率化を実現した。
具体的な成果
微細ベーマイトの製造プロセスが確立され、粒子径0.3μm、1%脱水温度400℃、純度99.7%という高性能なベーマイトが製造可能となった。また、新たな加熱方式を採用することにより、原油換算で約30%のエネルギー削減を実現した。これは高い生産能力と製造コスト削減に寄与する技術となった。試作品は川下製造事業者に提供され、前向きな評価が進められている。
知財出願や広報活動等の状況
展示会を通じて製品のPR活動も実施しており、多くの資料請求やサンプルの引き合いがあった。開発された知財は一般公開しないノウハウとする技術と特許出願する技術成果に分けて、知的財産化を進めている。
研究開発成果の利用シーン
開発されたベーマイトおよび製造技術は、次世代リチウムイオン電池向け塗工フィラーをはじめ電子部品用難燃フィラーとして使用できる。微細ベーマイトの特性を活かし、電池や電子部品の軽薄短小を可能とし、特に電池では電池容量を増加させより高性能なEVの実現に寄与することが期待される。電動車市場の拡大に伴い、EVやハイブリット車におけるLiBの安全性向上や航続距離延長に貢献する。また、車載基板の難燃フィラーとしても利用される。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
開発された微細ベーマイトはパイロットスケールでの製品提供を始めており、製品紹介資料を作成し、順次顧客へ展開し、顧客評価、サンプルワークへと進んでいる。また、開発された製造技術は省エネと量産に適した高効率な生産技術を実現するものであり、顧客の需要予測に合わせた生産設備の設計へと進んでいる。展示会でのPR活動を通じて新規顧客の開拓も進行中であり、今後更なる事業展開が期待される。
提携可能な製品・サービス内容
素材・部品製造
製品・サービスのPRポイント
「ベーマイト」は、1925年、J. Boehmにより発見され、その名「Boemite」と名付けられた天然鉱物である。ベーマイトはアルミナの水和物であり、耐薬品性、電気絶縁性、難燃性に加え、アルミナに比べて柔らかく加工性に優れた材料である。河合石灰工業は、1996年にベーマイトのの開発を始め、ベーマイトの形状をコントロールする技術(特許)を特徴とした製品戦略を展開し、世界に先駆けて2005年に量産を開始した。以来、ベーマイトのトッププランナーとして、日本の電子部品、樹脂成形物及びそれら製品を使用する産業の発展を陰ながら支えてきた。現在では、電子材料用難燃剤等の用途で国内関連企業10社以上にベーマイトを提供しており、国内関連企業とのつながりが深い。また、ベーマイト形状を、板状、針状、粒状、イガグリ状、扇状、花弁状、ナノ等に制御する技術が特徴であり、ベーマイトメーカーの中でも形状制御技術でトップレベルのサプライヤーである。
今後の実用化・事業化の見通し
河合石灰工業は既に事業化しているベーマイトに加え、今回開発した技術により微細でかつ高結晶なベーマイトをより安価に提供する。国内企業を中心に電池関連企業と電子基板メーカーのほか、広く難燃剤や熱伝導フィラー、補強フィラーを求めるユーザーにベーマイトを提供し、ベーマイトを通じて社会に貢献する。河合石灰工業のベーマイトはユーザーのニーズに合わせた製品開発が特徴であり、絶え間ないベーマイトの特性改良とベーマイトをベースとした複合材料の開発を進める。
実用化・事業化にあたっての課題
原料や燃料価格の高騰の半面、ユーザーからは海外勢に負けない安価なベーマイトを求められており、事業の拡大には、さらなる製造原価の削減が必要であり、製造技術の革新による課題解決が不可避である。また、人員不足の日本において、機械化による省力化が不可欠となっている。ベーマイトの量産事業化における大きな課題は生産効率と省人化を考慮した設備開発と投資である。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 河合石灰工業株式会社 開発部 |
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事業管理機関 | 公益財団法人岐阜県産業経済振興センター 技術振興部 |
研究等実施機関 | 社国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学 工学部 |
アドバイザー | 岐阜県セラミックス研究所 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 河合石灰工業株式会社(法人番号:4200001013456) |
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事業内容 | 石灰及びその加工品の製造販売、機能性製品の製造販売 |
社員数 | 200 名 |
生産拠点 | 岐阜県大垣市、和歌山県和歌山市、茨城県鹿島市 |
本社所在地 | 〒503-2213 岐阜県大垣市赤坂町2093 |
ホームページ | https://www.kawai-lime.co.jp/ |
連絡先窓口 | 開発部 執行役員 部長: 木戸健二 |
メールアドレス | k-kido@mail.kawai-lime.co.jp |
電話番号 | 0574-71-1127 |
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