表面処理
コールドスプレイ方式を進化させ、自動車パワートレイン摺動部の軽量化に挑戦
福岡県
富士岐工産株式会社
2020年3月20日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 自動車パワートレイン摺動部における溶射技術の開発 |
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基盤技術分野 | 表面処理 |
対象となる産業分野 | 環境・エネルギー、航空・宇宙、自動車、ロボット、産業機械、建築物・構造物、工作機械 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上) |
キーワード | 溶射、表面処理、耐摩耗、硬度、耐面圧 |
事業化状況 | 事業化に成功 |
事業実施年度 | 平成20年度~平成22年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
溶射温度を低くできる新しい溶射方法により、自動車用パワートレイン(動力伝達部)に適用可能な硬質皮膜形成技術を開発する。資源リスク、硬度、環境負荷などを考慮した鉄ベースの溶射粉体材料の開発を行うとともに、流体シミュレーションを活用して、従来技術では得難いHV800を超える硬度のパワートレイン部品摺動面に最適な溶射皮膜の施工技術と装置の開発を行う
開発した技術のポイント
自動車パワートレイン摺動部の軽量化のためコールドスプレイ法を利用した溶射技術を開発
・皮膜の低摩耗化、耐摩耗性の向上→従来:720Hv→開発品:800Hv以上
・コールドスプレイ法の溶射方法と装置開発→安価な窒素を混合したガスを用いた条件で、溶射粒子600m/sec以上を達成
・低環境負荷溶射技術の確立→従来:100kW以上(高速フレーム溶射法)→コールドスプレイ法:10kW以下
・10%硬度向上
・焼入油の削減
・希少金属の削減
・騒音の防止
・VCRへの適用
(新技術)
・コールドスプレイ法
(新技術の特徴)
・焼入油不要
・硬度800Hz以上
・静か
・鉄ベースの合金で硬度達成
・エネルギー消費小
・高速フレーム溶射にて、工業化可能な皮膜の開発に成功
具体的な成果
・鉄ベースの溶射材料の開発
‐当初からの技術的目標値を満たす「Fe-C-Cr系合金」、「Fe-C-Cr-Si系合金」、「Fe-C-Cr-Mo-W(-N)系合金」、「Fe-C-Cr-Co-V系合金」の開発と表面酸化膜が少ない粉体の作製技術を開発
‐「Fe-C-Cr系合金」、「Fe-C-Cr-Si-Co-V系合金」の粉末材料を従来のコールドスプレイ装置において、85%以上のヘリウムガスを使用した作動条件で成膜を達成。また、800Hv以上の皮膜硬度を得ることができた
・コールドスプレイ用最適合金設計
‐Fe-C系合金の組織に及ぼす炭素濃度及び冷却速度依存性について解析し、母相をマルテンサイト組織にすることで、粒子硬さを800Hv以上にできることを明らかにした
‐マルテンサイト組織の場合、Cr及びSi添加は硬さを向上させることを明らかにした。その知見を活かしてFe-0.4%~0.8%C合金で、800Hvまで粒子硬さを上昇することを可能とする合金成分と冷却速度を得た
・コールドスプレイ法の溶射方法と装置開発
‐当初計画の技術的目標値を満たす、粒子速度600m/secを達成する装置/ノズルを開発したが、従来のコールドスプレイ装置の皮膜硬度よりも10%程度低い硬度となった
‐硬度強化のため更に粒子の高速化を図った装置を開発し、粒子速度920m/secを達成した。また、粒子速度920m/sec以上を目指して改良を行い、その達成の見通しを得た
・高速フレーム溶射にて、工業化可能な耐摩耗、耐面圧性を有する皮膜の開発に成功した
知財出願や広報活動等の状況
・論文:「コールドスプレー粒子群の飛行速度計測方法の開発」(日本溶射学会)
・雑誌:研究室紹介「富士岐工産株式会社技術室」(日本溶射協会誌Vol.46No.32009P97-99)
・特許:「皮膜の製造方法」(特願2008-95051出願中)
研究開発成果の利用シーン
耐摩耗性や耐面圧性を必要とする部材に適用することで、長寿命化や軽量化・小型化が実現する
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
・2018年に高対摩耗、耐面圧皮膜の開発に成功。
・産業分野での商品化、事業化に成功。
提携可能な製品・サービス内容
加工・組立・処理、素材・部品製造、製品製造、共同研究・共同開発
製品・サービスのPRポイント
・強度・剛性向上:耐面圧性能が1GPaまでの高耐久性皮膜
・低コスト化:小型化、省スペース化、軽量化、微細化を可能とするコールドスプレイ装置の試作機の製作が可能
・新製法の実現:コストパフォーマンスが従来技術と同等以上のエンジン用部品などの製作が可能
今後の実用化・事業化の見通し
川下企業ニーズ対応のため補完研究を実施
・川下企業にトラクションドライブ装置向けの試作品の性能評価を実施して頂いたが、川下企業の要求性能を完全には達成できなかった。コンソーシアムメンバーが一体となって、当該部材やその他のニーズに見合う技術・装置開発の補完研究を実施している
・2018年に産業機械分野での商品化に成功
・更なる拡販を計画中
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 富士岐工産株式会社 |
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事業管理機関 | 公益財団法人福岡県産業・科学技術振興財団 |
研究等実施機関 | 国立大学法人九州大学 国立大学法人鹿児島大学 福岡県工業技術センター 機械電子研究所 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 富士岐工産株式会社(法人番号:2290801010489) |
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事業内容 | (1)鉄鋼関連作業:製鐵所及び製鋼所における製造ラインの操業及び管理、(2)プラント関連:各種ボイラ・圧力容器等の管構造物の製作・プラント建設、(3)溶射作業:セラミックス・金属など多様な皮膜を高速で形成する表面処理 |
社員数 | 500 名 |
生産拠点 | 名古屋、姫路、北九州、大分 |
本社所在地 | 〒807-0801 福岡県北九州市八幡西区本城四丁目8番16号 |
ホームページ | Http://www.fjk-kk.co.jp |
連絡先窓口 | 技術室 田籠康児 |
メールアドレス | tagomori@fjk-kk.co.jp |
電話番号 | 093‐791‐0511 |
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