研究開発された技術紹介

パルスめっき及び無電解めっき法を用いて、六価クロムや鉛を用いない高耐食性合金めっき技術の開発並びにダイヤモンド等のナノ粒子をめっき皮膜中に均一に分散させたクロムめっきの代替となる耐摩耗性、潤滑性に優れた高機能めっき技術の開発を行う。この技術をエンジン部品、自動車用金型及び周辺機器に適用することにより、自動車関連部品の高機能化と自動車産業等から求められている環境負荷の少ないめっき技術を実現する

本研究開発により、パルス波形を用いた電気めっき法を利用し、タングステンをニッケル皮膜中に高濃度で含有させることにより、クロムめっきと同等の皮膜特性を有し、高い均一電着性を実現した。また、無電解めっき法では、鉛フリーかつ、高硬度・高耐食性及び低摩擦係数の皮膜を作製することができ、浴管理技術においても安定な条件を確立した。
(新技術)
・硬質クロムめっき以上の皮膜特性
・有害物質の排除・開発皮膜を自動車用プラスチック成形金型及びその周辺機器に成膜し従来品と比較して2倍の長寿命化を実現

開発した皮膜及び、めっき技術は、以下の特徴を有する。
1パルスNi系合金めっき
・R.N.10、HV850(硬質クロムと同等)
・摩擦係数0.22(硬質クロムの1/4)
・膜厚のばらつき±10%以内(硬質クロム±114%)2鉛フリー無電解Ni系合金めっき・R.N.10、HV900～1300(硬質クロムと同等以上)
・摩擦係数0.34(硬質クロムの1/2)
・皮膜中の鉛含有率20μg/g(RoHS指令、ELV指令：鉛含有量1、000μg/g以下)開発されためっき皮膜はプラスチック成形機へ搭載され、ナイロン系樹脂を対象にしたものでは、約7倍の寿命の向上確認できた。

パルスNi系合金めっきは従来硬質クロムめっきと同等以上の性能を有していることから、硬質クロムめっきの代替としての利用が可能である。また鉛フリー無電解Ni系合金めっきは、ナイロン樹脂を対象としたプラスチック成形機への搭載では従来品と比較して長寿命化が確認されていることから、各種プラスチック成形機への利用が推奨される。

現状、市場における鉛フリーめっきに対する需要は減少傾向にあるため、現在はパルスめっき及び鉛フリー無電解めっき法を用いての処理は行っていない。

本製品は、欧州におけるＲｏＨＳ指令やＥＬＶ指令等、各国における有害物フリーの要請に応え、国際競争力強化に寄与できる表面処理である。また、本めっき技術は産業機器において求められている耐食性、耐摩耗性、耐久性、耐熱性及び潤滑性等の機能に優れており、今後、自動車産業ばかりでなく、種々の産業分野においても利用促進が期待できる。また、 本技術がクロムめっきの代替技術として普及することにより、作業環境が整備され作業者の安全性が確保できる。また、鉛を含まない無電解合金めっき皮膜が形成できるため、環境汚染が低減され、自然環境への負荷の軽減も期待できる。

精密部品・精密工具への高機能化、長寿命化研究を行うと共に、学会発表、各種展示会などを通して川下企業へのマーケティング活動を行い、販路拡大を図る。

新たな市場拡大を図るため、電気パルスめっきにおいては、様々な製品を考慮し、複雑形状への均一めっき成膜条件の確立が今後の技術課題である。また、各ユーザーの使用条件下に合わせた皮膜機能性データの構築が必要である。