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製造環境

水中に含まれる微粒子を除去する性能を高めた新しい高性能繊維濾過装置の開発

長崎県

協和機電工業株式会社

2025年1月28日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 繊維配向と充填密度の最適化により凝集剤フリーで水中の5μm 未満の微粒子を除去する原水変動に対応した高性能繊維濾過装置の開発
基盤技術分野 製造環境
対象となる産業分野 環境・エネルギー、自動車、農業、食品、建築物・構造物、電池、半導体、化学品製造、浄水場・下水処理場
産業分野でのニーズ対応 高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、高性能化(精度向上)、高効率化(薬品使用量削減)、環境配慮
キーワード 濾過、微粒子除去、繊維濾材、水処理、凝集剤フリー
事業化状況 実用化に成功し事業化間近
事業実施年度 令和2年度~令和4年度

プロジェクトの詳細

事業概要

本事業では、工場排水に含まれる5μm未満の微粒子を、凝集剤を使わずに効率よく除去できる繊維濾過装置の開発および事業化に取り組んだ。
3つの要素技術開発と、それらを取り入れた大型装置開発を行った。一つ目の技術開発では、凝集剤を不使用で微粒子の除去性能を向上させるために、濾過に使用する繊維の配向と充填密度を最適化する開発を行った。二つ目の技術開発では、繊維モジュールの長寿命化を図り、濾過中の性能低下を抑えるために、新たな繊維濾材の開発を行った。三つ目の技術開発では、原水の水質変動に自動で対応して安定した濾過性能を発揮することができる自動制御システムを開発した。そして、それらの技術を取り入れた、1日に最大で2000m3の水を濾過することが出来る大型装置の開発を行い、実用性能の検証を行った。

開発した技術のポイント

・凝集剤フリーで微粒子を除去する繊維エレメントの開発
 ‐ 繊維の材質や繊維充填条件を変化させた時の繊維の配向と充填密度を解析し、三次元充填モデルを作成し、流体シミュレーションと数式化を行って濾過特性予測モデルを構築した。これにより、除去対象物に合わせた繊維充填条件の設定理論が整った。
・長期間使用による性能低下を抑制する新しい繊維モジュールの開発
 ‐ 長期間での繊維の伸縮によって弾性復元率が低下することを抑制するための、最適な繊維の組合せを調査して複層化繊維濾過モジュールの開発を行った。
・水質変動に対応する自動制御システムと、繊維の充填密度を可変制御する機構の開発
 - 繊維充填密度を可変することが出来る機構を開発し、水質変動に自動で追従する自動制御システムの開発を行った。
・大型実証試験機の開発
 - 濾過塔直径1200mmの大型実証機を製作し、運転確認を行った

具体的な成果

・凝集剤フリーで微粒子を除去する繊維エレメントの開発
 ‐ 直径1.5~5μmの微粒子を98.6%除去できる繊維条件を設定した
・長期間使用による性能低下を抑制する新しい繊維モジュールの開発
 ‐ 有機系排水用の新繊維では、性能低下年率10%未満を達成
・水質変動に対応する自動制御システムと、繊維の充填密度を可変制御する機構の開発
 - 濁度に応じて充填密度を3段階に可変制御する機構を開発した。
・大型実証試験機の開発
 - 濾過塔直径1200mmの大型機が製品ラインナップに新たに加わった

工業用水の濾過では、後段のUF膜の目詰まり抑制に大きく貢献し、3年以上膜洗浄無しで性能を維持できている
大型化開発によって当社の高性能繊維濾過装置の製品ラインナップが拡充され、1日の処理水量が10m3程度から2000m3までをカバーする製品群となった。

知財出願や広報活動等の状況

【特許】濾過材、濾過装置、及び濾過材の製造方法
 出願番号PCT/JP2022/005539
 特許第7122053号
【発表】
 ・日本水環境学会第57年会 「高性能繊維濾過装置(F-CAP)による限外濾過膜の目詰まり抑制効果の評価」 2023年3月
 ・雑誌 環境浄化技術 2023年5・6月号 「5μm粒子を100%除去する繊維濾過装置」 日本工業出版
 ・雑誌 クリーンテクノロジー 2023年12月号 「繊維濾過設置によるUF膜の目詰まり抑制」 日本工業出版

研究開発成果の利用シーン

開発した高性能繊維濾過装置は、食品工場、化学製品工場、製鉄所、自動車関連工場などの排水処理や、井水や工業用水などの微粒子除去において広く利用できる。特に、凝集剤を使用せずに5μm未満の微粒子を除去できるため、環境負荷を軽減し、工場の運用コスト削減に貢献する。また、性能低下が抑制された繊維モジュールにより、長期運用時のメンテナンスコストも削減される見込みである。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

本プロジェクトで開発した繊維濾過装置は、すでに複数の事業所での実証試験を経て、実導入数を増やしている。これまでは井戸水の除濁、工業用水の微粒子除去、池の水の浄化、メッキ排水処理設備の後段の微粒子除去、塗装排水処理の放流前の微粒子除去などの導入実績がある。今後は食品工場などの有機系排水処理にも適用するための繊維洗浄条件を設定して、九州を中心とした幅広い用途での水中からの微粒子除去分野へ展開する。

提携可能な製品・サービス内容

設計・製作、加工・組立・処理、製品製造、試験・分析・評価、共同研究・共同開発、技術ライセンス、技術コンサルティング

製品・サービスのPRポイント

当社の高性能繊維濾過装置F-CAPは、凝集剤を使用せずに5μm未満の微粒子を効率的に除去できる点が最大の特徴である。特に、1μmから5μm未満の微粒子を90%以上除去することが可能であり、従来の濾過技術を超える性能を実現している。用途としては、膜濾過では膜が目詰まりしてしまうような汚染レベルが比較的高い水で、砂濾過よりも高い微粒子除去性能を必要とする分野への適用が望ましい。また、従来型の砂濾過では大きな設置面積を必要とするのに対し、当社の高性能繊維濾過装置F-CAPは4から8分の1のスペースで設置可能であるため、水処理施設の能力増強や増設用途にも非常に適している。更には、珪藻土濾過のように大きなランニングコストが必要となるような、薬品を使用せずに高精度の濾過が必要となるような生産用水や食品・飲料用途の水の濾過においても、当社のF-CAPはそのような補助剤を使わずに高度な微粒子除去性能を発揮することができる。

今後の実用化・事業化の見通し

これまでの開発実績と実導入実績により、十分なノウハウを蓄積できた。今後はその様々な用途で得られた実運用データを用いて、より幅広い用途に対応して販売を進めていく。凝集剤不使用で高度な微粒子除去性能を発揮することが出来るという利点を活かして、ランニングコスト削減や水の品質向上のニーズがあるお客様への提供を進める。
今後は塩水仕様や処理能力5000m3/日以上の大型機のニーズにも対応し、日本全国から世界へ高性能繊維濾過装置F-CAPを展開する。

実用化・事業化にあたっての課題

・水の種類によっては濾過に適さない水が存在することは、濾過装置全般の共通課題である。特に有機系排水の微生物処理後の水では特異な粘性物質が濾過圧力を異常に上昇させるため、繊維の洗浄方法や運転方法を確立する必要がある。現在は問題解決の糸口が見えており、来年にはそのような有機系の用途へも展開が可能となる見込み。
・当社の高性能繊維濾過装置F-CAPは、非常に幅広い用途で使用が可能である。他の濾過装置に比べて微粒子除去性能が高く、設置面積が小さく、ランニングコストも低いという利点があるため、全国のユーザーへ提案できる装置ではあるが、販売体制が十分でないため、代理店販売や同業他社への装置販売等が必要である。

事業化に向けた提携や連携の希望

代理店販売:高性能繊維濾過装置F-CAPの代理店販売をしていただける企業様との連携を強く希望します
装置販売:水処理プラントメーカーやエンジニアリング会社様への装置販売を希望します

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 協和機電工業株式会社
事業管理機関 公益財団法人長崎県産業振興財団
研究等実施機関 協和機電工業株式会社 事業開発部 事業開発部門
国立大学法人長崎大学
公立大学法人北九州市立大学
アドバイザー 東京工業大学
長崎県工業技術センター

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 協和機電工業株式会社(法人番号:7310001000473)
事業内容 水処理設備の建設、および関連機械装置・電機装置の製造
社員数 553 名
生産拠点 (長崎県) 時津事業所および長崎三重事業所
本社所在地 〒852-8108 長崎県長崎市川口町10番2号
ホームページ https://www.kyowa-kk.co.jp/
連絡先窓口 事業開発部 事業開発部門 部門長 上山哲郎
メールアドレス ueyama@kyowa-kk.co.jp
電話番号 095-881-2516