測定計測
土壌汚染の見える化~オンサイトで迅速・簡便に汚染濃度を可視化
熊本県
有限会社坂本石灰工業所
2025年1月22日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 土壌汚染を簡易・迅速に分析する重金属類検出技術を活用した簡易検出材OCTES-2の開発 |
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基盤技術分野 | 測定計測 |
対象となる産業分野 | 農業、建築物・構造物、半導体、化学品製造 |
産業分野でのニーズ対応 | 高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(使用機器削減)、環境配慮、低コスト化 |
キーワード | 環境測定、スクリーニング、オンサイト分析、比色分析 |
事業化状況 | 実用化間近 |
事業実施年度 | 令和3年度~令和5年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
本事業は、土壌汚染対策に必要な重金属類の簡易検出材を開発することを目的とした。現在の市場には、特定の重金属類(ヒ素、水銀、セレン、カドミウム、シアン)を迅速かつ低コストで検出できる簡易分析材が存在せず、既存の公定方では時間とコストがかかる。本事業では、坂本石灰工業所がこれまでに開発した「OCTES-1」の技術を基に、さらに高精度な簡易検出材「OCTES-2」を開発し、これら5つの重金属類に対応することを目指した。これにより、現場で迅速な土壌汚染の検出と対策が可能となり、工期の短縮、コスト削減、仮置き場スペースの縮減などの効果が期待される。さらに、事業目標よりも低濃度での発色が可能な検出材の開発も進めた結果、土壌汚染対策法で規制されている全ての重金属類について簡易分析が可能となった。
開発した技術のポイント
・土壌からの溶出方法の開発
ヒ素、水銀、セレン、カドミウム、シアンの5物質に対し低濃度での検出が可能となる、土壌からの溶出方法を開発。
・低濃度検出技術の開発
ヒ素と水銀について、感度を向上させるための濃縮技術を開発。ろ紙の変更でさらに低濃度の検出を実現し、ヒ素、水銀の低濃度での検出が可能になった。
・呈色を数値化する測定技術の開発
測定者による読み取り誤差を減らす為、測定結果を数値化する技術を開発。LED光源を使用し、分光スペクトルの変化を捉えることで、高精度な測定を実現した。
・セレン、カドミウム、シアンの検出技術の開発
それぞれの目標濃度での検出を達成するための技術を構築した。
・阻害イオンの影響を考慮した技術
ヒ素と水銀について、重金属類の検出に影響を与える阻害イオンを特定し、その影響を最小限にするための試薬の改善とデータ収集を行った。
具体的な成果
・迅速な溶出方法の確立
土壌からの溶出試験で公定法と同等の濃度を達成し、発色の見やすさが改善された。これにより、5物質(ヒ素、水銀、セレン、カドミウム、シアン)の迅速な検出が可能。
・ヒ素と水銀の検出技術の向上
ヒ素検出材の改良により、目標検出濃度0.01mg/Lの発色を確認。水銀検出材でも検出濃度0.0005mg/Lでの発色を確認した。
・呈色を数値化する測定技術の開発
呈色を分光スペクトルで測定する試作機を作製し、機械学習アルゴリズムを活用することで、94%以上の成功率で重金属類の濃度識別を達成。
・セレン、カドミウム、シアンの検出材の改良
セレン、シアンの高感度発色を確認し、カドミウムの発色も目標検出濃度で確認した。
・顧客評価での成功
現場でのフィールドテストにおいて、ヒ素汚染土壌の検出に成功し、阻害イオンを含む実土壌でも測定が可能であることを実証した。
知財出願や広報活動等の状況
特許出願では「ヒドロキシエチルセルロースを原料とした吸水性樹脂の製造方法」(特許第7120589号)および「メチレンブルーによるセレン測定法について」(特願2023-026859)を国内で出願した。
国際商標も出願、登録し模倣品対策も講じた。
研究開発成果の利用シーン
・現場での土壌分析
建設現場や農地などで、簡易に重金属類汚染の有無を確認するための土壌分析に使用可能。
→OCTES-2(検出材)は、汚染の早期発見と対応策の決定をサポートする。
・環境調査およびアセスメント
環境保護活動や土壌修復プロジェクトで、土壌中のヒ素や水銀の濃度を測定可能。
→迅速な判断と効率的な汚染管理に寄与する。
・海外の高濃度汚染地域での利用
開発途上国などの環境調査において、簡便で信頼性の高い汚染分析ツールとして利用可能。
・研究機関および教育機関での教育ツール
大学や専門学校で、環境科学の教育ツールとして使用し、実践的な学習を支援する。
・市場展開を視野に入れたビジネス利用
土壌分析業者やプラントエンジニアリング企業向けに、分析前の事前評価ツールとして、簡易分析の潜在ニーズに応える。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
OCTES-2の事業化状況としては、国内外での販路拡大と製品改良、技術評価の取得を取り組んでいる。国内では展示会への出展によるマッチングを活用し、土壌分析業者やプラントエンジニアリング企業との連携を強化し、市場ニーズに応じた製品の普及を進めている。海外市場では、開発途上国でのテストを実施、国際的な利用拡大を目指し、国際的な規制や基準に対応するための輸送に関連する製品改良と公的な技術評価の取得を通じて、公共工事や環境調査市場への展開を図る方針である。
提携可能な製品・サービス内容
試験・分析・評価、共同研究・共同開発
製品・サービスのPRポイント
・高感度検出技術
OCTES-2は、ヒ素や水銀などの重金属類を低濃度で高精度に検出できる技術を持つ。新たな濃縮方法やマスキング剤の使用により、従来の方法では検出が困難だった条件下でも正確な測定が可能である。
・簡便な現場適用性
ポータブルな装置で現場でも迅速に測定が可能で、複雑な操作を必要としない。
・多用途対応
OCTES-2は、様々な土壌条件での重金属類汚染調査に対応可能で、建設現場や環境調査など、幅広いフィールドで利用できる。
今後の実用化・事業化の見通し
・建設現場や環境調査など、土壌中の重金属類汚染の迅速な判定が求められる場面での需要が見込まれる。
・製品の保管性は6か月間評価済みだが、さらなる品質の長期安定性について評価が必要である。
・国内での特許取得や商標登録が完了し、海外16カ国での商標出願、登録も進行中である。
・国内における法規制や環境基準に対応するための認証取得を検討中である。
・ゼネコンや大学との継続的な連携により、製品の改良と新たな市場開拓が進めている。
・大学を通した開発途上国での実証試験の実施や、海外の研究機関との協力により、海外市場での認知度向上と需要の開拓が期待できる。
実用化・事業化にあたっての課題
・実土壌でのさらなる評価を通じて、共存する阻害イオンが検出に影響を与える可能性があり、その対策が求められている。
・冷蔵保管が必要なため、海外においては常温での保管性の向上が求められる。
・海外事業を検討した場合、法規制の対応と商品パッケージのコンパクト化と輸送コストの削減が求められる。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 有限会社坂本石灰工業所 |
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事業管理機関 | 一般財団法人九州オープンイノベーションセンター |
研究等実施機関 | 独立行政法人国立高等専門学校機構 東京工業高等専門学校 独立行政法人国立高等専門学校機構苫小牧工業高等専門学校 独立行政法人国立高等専門学校機構 熊本高等専門学校 国立大学法人熊本大学 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 有限会社坂本石灰工業所(法人番号:1330002021357) |
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事業内容 | 1)石灰製品の製造販売 2)石灰に付帯する事業 |
社員数 | 92 名 |
生産拠点 | 本社(熊本県) |
本社所在地 | 〒865-0013 熊本県玉名市下273-1 |
ホームページ | https://sakamoto-lime.com/new/ |
連絡先窓口 | 企画開発室 高木泰憲 |
メールアドレス | k-kaihatu01@sakamoto-lime.com |
電話番号 | 0968-76-6165 |
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