複合・新機能材料
鋳鉄に代わる軽量複合材料でエアコンの高性能化に寄与
静岡県
アドバンスコンポジット株式会社
2023年2月12日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | エアコン用圧縮機の省エネと小型化を両立する高強度軽量スクロール翼のニアネット鋳造技術の開発 |
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基盤技術分野 | 複合・新機能材料 |
対象となる産業分野 | 自動車、産業機械 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(小型化・軽量化)、高性能化(信頼性・安全性向上)、環境配慮 |
キーワード | エアコン、圧縮機、スクロール、複合材料 |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中 |
事業実施年度 | 令和1年度~令和3年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
エアコンの圧縮機に用いられるスクロール翼は主に重い鋳鉄製であり、頻繁に加減速を繰り返すインバーター制御でのコントロールが難しくなっている。
そこで本研究開発では、圧縮機のさらなる省エネと小型化を加速を目指す。
具体的には、高圧鋳造技術と最新CAEを組み合わせたプロセスにて、アルミニウム基複合材料による軽量スクロール翼のニアネット鋳造技術を確立する。
アルミニウム基複合材料は機械加工性に優れる点が特徴。複合材料の品質安定性を向上して低コスト化を図る。
開発した技術のポイント
1. 高体積分率のセラミックプリフォーム作製
・粒状のホウ酸アルミで40~50vol%のプリフォームの作製技術
・ゲルキャスト法によるスクロール翼形状のプリフォームを試作
・アルミ合金部を機械加工することで高効率な仕上げ加工を実現
2. ニアネット高圧鋳造技術の開発
・初期流動を粒子法、伝熱・凝固解析をオイラー法で鋳造CAE
・高圧鋳造にガス抜きや湯道を設けた鋳造方案を開発
・複雑なスクロール翼形状のアルミ基複合材料をニアネット成形
3. ホウ酸アルミを含むアルミ基複合材料の特性評価
・強度300MPa、ヤング率150GPa、熱膨張係数15ppm達成
・高圧鋳造におけるプリフォームの変形をX線CTで直接観察
・高圧鋳造におけるホウ酸アルミの相変化を解明
具体的な成果
1. 強度300MPa以上、弾性率(ヤング率)150GPa以上、熱膨張係数15ppm以下の粒状ホウ酸アルミニウムを含むアルミニウム基複合材料を作製した。
2. 高いVf(セラミックの体積分率)を有するプリフォームとして、40~50vol%のプリフォームを、実際のスクロール翼形状を模した3次元複雑形状に成形できた。
3. 改良した高圧鋳造技術によって、複雑形状のプリフォームの変形を抑えて、アルミニウム基複合材料鋳造体を作製した。
4. 機械加工性に優れる粒状のホウ酸アルミニウムを用い、機械加工部分を可能な限りアルミニウム単独にした。それにより工具寿命の増加、加工時間の短縮を実現できた。
5. プリフォームの予熱温度や高圧鋳造時の加圧力を鋳造CAEから最適化し、歩留まりの向上とプロセスの省エネルギー化を実現した。
6. 高圧鋳造技術によって、アルミニウム基複合材料のニアネット成形を実現できた。
知財出願や広報活動等の状況
本プロジェクト内に特許を2件申請した。
・特願2022-004376
・特願2022-004377
研究開発成果の利用シーン
本研究開発では、高圧鋳造を中核技術として、エアコンに要求される鋳鉄並みの機械的特性を有する軽量な新高強度アルミニウム基複合材料を開発する。さらに、3次元複雑形状を有するスクロール翼を造形するためのプロセス技術を開発する。
これらの技術により、エアコン用圧縮機の省エネと小型化を両立を目指す。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
今後は早い段階で量産化技術の確立を行う。さらに、工程内廃棄物の再利用や、コスト低減への取り組みを一層加速する。また、分散生産(地産地消)においても、開発した企業の利益が確保できるような仕組み作りを検討していく。アドバンスコンポジット株式会社では、業務用エアコンのスクロール素材の事業化を考えており、順次、家庭用エアコン、車載用エアコンへの展開も視野に入れる。さらにスクロールコンプ レッサーを活用した冷却技術の発展も急務であり、高速演算サーバー用 CPUの展開も視野に入れている。
また、残された課題は以下の3つである。
1. ニアネット高圧鋳造技術の量産化への対応
2. 資源確保の観点から粒状ホウ酸アルミニウムに変わるセラミックでの開発(アルミナを用いた試作はプロジェクト内で実施済)
3. 新型コロナ禍でのプロジェクトであったため、川下ユーザのニーズに対する詳細な調査の不足(鋳造体の寸法精度、サイズ、表面処理など)
提携可能な製品・サービス内容
素材・部品製造、共同研究・共同開発
製品・サービスのPRポイント
企業が保有する高圧鋳造技術と、ホウ酸アルミニウムを用いたアルミニウム基複合材料をベースとした。それらを基に、鋳鉄素材を置換レベルの物性を有するアルミニウム基複合材料を作製するための技術開発を行った。さらに、近年製造業では製造プロセスにおける省エネ化が要求されているため、プロセスの最適化を鋳造CAEや最先端のセンシング技術を活用して実現してきた。
今後の実用化・事業化の見通し
今後は早い段階で量産化技術の確立を行う。さらに、工程内廃棄物の再利用や、コスト低減への取り組みを一層加速する。また、エアコンの分野におけるスクロールコンプレッサーは、静粛性の必要性から、今後さらに需要の増加が予測される。同時に、分散生産(地産地消)においても、開発した企業の利益が確保できるような仕組みを検討していく。アドバンスコンポジット株式会社では、業務用エアコンのスクロール素材の事業化を考えており、順次、家庭用エアコン、車載用エアコンへの展開も視野に入れる。
さらにスクロールコンプレッサーを活用した冷却技術の発展も急務であり、車載バッテリー冷却用や高速演算サーバー用CPUの展開も視野に入れている。
実用化・事業化にあたっての課題
1. ニアネット高圧鋳造技術の量産化への対応
2. 資源確保の観点から粒状ホウ酸アルミニウムに代わるセラミックでの開発(アルミナを用いた試作はプロジェクト内で実施済)
3. 新型コロナ禍でのプロジェクトであったため、川下ユーザのニーズに対する詳細な調査の不足(鋳造体の寸法精度、サイズ、表面処理など)
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | アドバンスコンポジット株式会社 製造開発部 高木 義夫 |
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事業管理機関 | 公益財団法人静岡県産業振興財団 革新企業支援チーム |
研究等実施機関 | 静岡県工業技術研究所 材料科 鈴木 洋光 国立研究開発法人産業技術総合研究所 マルチマテリアル研究部門 尾村 直紀 学校法人大同学園大同大学 工学部 機械工学科 前田 安郭 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | アドバンスコンポジット株式会社(法人番号:7011001106596) |
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事業内容 | 高圧鋳造法を生かした高機能材料や部品製造をおこなっている、新素材製造メーカーです。 |
社員数 | 38 名 |
生産拠点 | 静岡県富士市 |
本社所在地 | 〒417-0801 静岡県富士市大渕2259-9 |
ホームページ | http://www.advance-composite.co.jp/ |
連絡先窓口 | アドバンスコンポジット株式会社 経営企画部 マーケティング室 石田 公一 |
メールアドレス | ishida@advance-composite.co.jp |
電話番号 | 0545-32-7904 |
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