立体造形
高硬度、高耐熱性、低コスト、高エネルギー効率を同時に実現する新たな表面硬化技術
富山県
笹谷工業株式会社
2020年3月23日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 高速回転ツールを用いた鋳物の表面硬化技術の開発 |
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基盤技術分野 | 立体造形 |
対象となる産業分野 | 自動車、産業機械、工作機械 |
事業実施年度 | 平成19年度~平成21年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
φ20程度の円柱状の工具(ツール)を1000RPM程度で回転させながら、鋳鉄表面に押し当てることで局部的に摩擦熱を発生させ、鋳鉄の表面硬度を安定的に800HV以上にする新硬化法を開発する。これにより、φ300までの円筒および角形(平板)形状の片状および球状黒鉛鋳鉄構造物の耐摩耗性を大幅に向上させる手法を確立するとともに、構造物の変形を従来の1/5以下に抑制し、生産効率の大幅な向上を達成する
開発した技術のポイント
摩擦熱を利用した新たな表面硬化法の開発
・高速で回転する円柱状の工具を鋳鉄表面に押し当て、移動させることにより、局部的に摩擦熱を発生させ、表面を硬化させる方法の確立を目指す
・表面硬度:母材の4倍かつ800HV以上。従来のフレームハードニング等のHRC50(513HV相当)を上回り、耐摩耗性を向上させる
・硬化プロセス:自動化。コスト低減、短納期
・熱変形:従来の1/5以下。低入熱による硬化により、熱変形による作業効率悪化を防止
(新技術)
摩擦熱を利用した新表面硬化法
・母材の4倍の硬度
・自動化プロセス
・低温・省エネルギー
・熱変形が小さい
具体的な成果
・高速回転機能を備えた表面硬化装置を開発
-円筒形状ではφ600の直径まで、角形構造物では1,000×1,000×300(mm)の大型構造物の表面硬化を行える装置を開発
・円筒・角材鋳物の表面硬化で、従来技術を大幅に上回る硬度を実現
-円筒鋳物(φ340mm×1,000mm、厚み60mm)、角型鋳物(600mm×450mm×150mm、重量240kg)の実物大鋳物の表面改質を行った
-ほとんど変形のない状態で、目標の硬度800HVと、硬化層の厚さ1mmを達成。本手法がこれらの大型構造物に対して有効であることを示した
・硬化メカニズム分析により、フェライト系、パーライト系ともに本方法の有効性を確認
-硬化のメカニズム解明に向け、フェライト系片状黒鉛鋳鉄を作製し、硬化実験、耐摩耗試験を実施
-パーライト系、フェライト系ともに片状・球状黒鉛鋳鉄への硬化が可能なこと、耐摩耗材として一般に使用されている鋼材(SKD11)と同等の耐摩耗性を有することを確認
-従来の方法では不可能であったフェライト系鋳鉄の表面硬化が可能に
-得られた分析結果を、安定的に高い硬度が得るためのプロセス最適化に生かした
知財出願や広報活動等の状況
論文:今川浩一、藤井英俊、山口泰文、木口昭二「摩擦攪拌プロセスによるフェライト系球状黒鉛鋳鉄の表面硬化」、鋳造工学、82,11(2010)674-679
研究開発成果の利用シーン
自動車金型や工作機械の摺動部等に対して、従来の表面硬化法に代替して本技術を用いることにより、高硬度化、熱変形の抑制、低コスト化等を実現。
また、従来法では不可能であったフェライト系鋳鉄の表面硬化が可能となる。
実用化・事業化の状況
今後の実用化・事業化の見通し
補完研究、試作品作製を経て、数年以内の事業化を目指す
・表面硬化装置、表面硬化した鋳物(自動車用金型等)の事業化に向け、自動車メーカーを含めた研究開発への展開を検討中
・平成24年度までに試作品を作製し、26年度までの事業化を目指す
・本研究で得られた知見を活用して、光陽産業が他の戦略的基盤技術高度化支援事業へ装置を販売する等、実用化面においても成果が得られている
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 笹谷工業株式会社 |
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事業管理機関 | 国立大学法人大阪大学 |
研究等実施機関 | 株式会社木村鋳造所 光陽産業株式会社 学校法人近畿大学 国立大学法人大阪大学 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 笹谷工業株式会社 |
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本社所在地 | 〒939-1346 富山県砺波市狐島241-2 |
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