複合・新機能材料
ダイス鋼製のプレス用金型の熱処理加工における熱処理歪みを極小化することに成功
長野県
岡谷熱処理工業株式会社
2020年4月10日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 金型の熱処理における歪みの極小化技術の研究開発 |
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基盤技術分野 | 複合・新機能材料 |
対象となる産業分野 | 自動車、産業機械、工作機械 |
産業分野でのニーズ対応 | 高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、低コスト化 |
キーワード | プレス金型、熱処理歪、マルテンサイト変態、平面度 |
事業化状況 | 事業化に成功し継続的な取引が続いている |
事業実施年度 | 平成22年度~平成23年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
当事業は、プレス用金型の熱処理において生じる歪みを、極小化(0.01mmレベル)する技術の研究開発を行うものである。具体的には、最適な熱処理プロセスの開発を行い、さらには歪み修正用の加圧真空焼戻し炉の開発および実用化の検証を行うものである。これにより熱処理時間の短縮と熱処理後に実施していた金型修正加工(研磨・微調整)を削減し、プレス用金型の高精度化・納期短縮・低コスト化および環境保全に貢献する
開発した技術のポイント
仕上げ加工を削減することで、金型製造に要する時間を大幅に削減
・金型の熱処理後の歪み:従来0.3~0.4mm→0.01mmレベル(いずれもA3サイズ)
・熱処理に要する時間:従来約480~510分→2/3以下に短縮
(新技術)
<歪み修正炉を利用した熱処理>
・変寸や変形を最小化
・歪みはA3サイズで0.01mmクラス
・歪みが小さいため、仕上げ加工に要する時間を大幅に削減
・高価な工具の使用量を抑え、コスト削減につながる
具体的な成果
・歪みの加圧修正技術を確立
‐焼入れ処理において歪み修正を行う際の加圧治具の種類、最適な圧力、最適な金型冷却方法を検証した
‐歪み修正用の治具を開発し、SKD11鋼の焼き戻し処理における歪み修正を実施し、小型金型において生じる歪みは0.010~0.095mmに抑えられた
・炉内温度制御技術の開発
‐熱処理における歪み量の減少には、正確な温度制御が必要であり、焼入れ処理に用いる真空炉内の温度状況を計測
‐炉内温度が1030℃設定表示の場合、有効加熱領域の温度幅は5℃以内であり、均等な加熱であることを把握
・歪み修正用の加圧真空焼き戻し炉を開発
‐治具の加圧による歪み修正を行う場合、手作業部分が多く再現性に問題があることから、加圧機能を持ち、真空雰囲気での歪み修正が可能な炉を開発
‐開発炉によるSKD11鋼の焼き戻し時の歪みはサイズが小型であれば歪み0.02~0.03mm、中型・大型であっても0.04mmレベルの歪みであり、歪みを大幅に抑制
‐熱処理時間は従来480~510分であったところ、処理時間350~360分であり、27~30%の処理時間削減に成功
知財出願や広報活動等の状況
・雑誌:「金型の熱処理における歪み極小化技術の現状」(隔月刊メカニカル・サーフェス・テック、H23年12月号)、「SK/SKS鋼製プレス金型の熱処理ひずみ抑制・修理技術の開発」(開発紹介)(月刊プレス技術H24年7月号)他8件
・出展:中小企業総合展inTOKYO(H22.12)、諏訪圏工業メッセ(H22.10、H23.10、H24.11)
研究開発成果の利用シーン
・プレス金型、順送金型等への適用
・受注先の後加工コストの低減、納期の短縮化に貢献
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
H23年度に事業化に成功
提携可能な製品・サービス内容
加工・組立・処理
製品・サービスのPRポイント
・金型製作時間短縮→熱処理時間を従来の約70%に短縮した。また、熱処理後の川下企業での仕上げ加工にかかる時間を、半日~2日を数分~数時間に短縮した
・低コスト化→川下企業における仕上げ加工において、その加工量が著しく減少したため、機械・工具類の消耗を減らし、さらには使用電力・切削油の消費も減少した
・精度向上→仕上げ加工の加工量を減らすことで、仕上げ加工を原因とする金型の残留応力が減少する。これにより経年変化が少なくなり、金型の精度が長く保持される
今後の実用化・事業化の見通し
H23年に事業化に成功し、長野県内外の金型メーカーに採用されている。サポインで対象としなかった鋼種についても引き続き、研究を実施している
・サポイン終了後、川下企業へ熱処理加工を提供し、その性能に対して満足との評価を得ている
・サポインで対象とした鋼種(SKD鋼)とは異なるSK鋼やSKS鋼の金型についても、歪みの極小化を図るべく、研究開発を開始した。本件に関しては、平成23年度のサポインに採択され、順調に研究開発を進めている
・今回開発した熱処理方法による熱処理加工品が、長野県内外の金型メーカーに、新規採用されてきている。今後、全国的な営業活動を行い、さらに顧客を増やしていく
事業化に向けた提携や連携の希望
輸送コストと納期の関係で国内遠方(300km以上)顧客への対応のため、工場進出
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 岡谷熱処理工業株式会社 |
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事業管理機関 | 株式会社信州TLO 技術移転グループ |
研究等実施機関 | 長野県工業技術総合センター 材料技術部門 金属材料部 国立大学法人信州大学 工学部 機械システム工学科 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 岡谷熱処理工業株式会社(法人番号:5100001019405) |
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事業内容 | 熱処理加工の提供、金属熱処理(真空熱処理)、真空浸炭・真空浸炭窒化、コーティング(イオンプレーティング)処理、精密ショットピーニング、ラッピング処理 |
社員数 | 34 名 |
生産拠点 | 長野県岡谷市本社工場 |
本社所在地 | 〒394-0033 長野県岡谷市南宮1-5-2 |
ホームページ | http://www.okanetu.jp |
連絡先窓口 | 取締役専務兼営業部長 中澤 信貴 |
メールアドレス | gene@okanetu.co.jp |
電話番号 | 0266-23-4610 |
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