表面処理
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で高潤滑性を、ナノダイヤモンドで高耐摩耗性を実現する複合めっき技術を開発
福井県
アイテック株式会社
2020年3月26日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | PTFE;ナノダイヤモンドを分散させた複合めっき技術の開発 |
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基盤技術分野 | 表面処理 |
対象となる産業分野 | 環境・エネルギー、自動車、産業機械 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、環境配慮 |
キーワード | ナノダイヤモンド、分散、トライボロジー、複合めっき |
事業化状況 | 事業化に成功し継続的な取引が続いている |
事業実施年度 | 平成20年度~平成22年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
近年、エンジンの低燃費化が進む中で、エンジンの機械的損失の低減が重要な課題となっている。これらの問題を解決するために、高潤滑性を有するPTFEおよび耐摩耗性と硬度を有するナノダイヤモンドをめっき皮膜中に分散させることで、摺動部品の耐磨耗性、耐焼付性、潤滑性の付与及び初期なじみの向上を図る。そのため、ナノダイヤモンドとPTFEを分散させた混合複合めっき技術の開発を行う
開発した技術のポイント
PTFEとナノダイヤモンドを用いて、耐摩耗性と低摩擦性を有する新規性・革新性のある表面処理技術を開発
・ナノダイヤモンド→(ND)の分散手法の開発ND表面へポリマーのグラフト率:50%以上、ND平均粒子径:50nm以下
・PTFE/ND混合分散めっき液の開発(PTFEとNDの分散安定性の調査と最適グラフト鎖の構造設計)→NDの平均粒子径:50nm以下、PTFEの平均粒子径:200nm以下
・PTFE/ND混合複合めっき技術の開発→めっき皮膜中のPTFE/NDの混合分散状態:10vol%以上
・摩擦・摩耗試験におけるPTFE/ND混合複合めっき皮膜の最適条件の決定→硬度:Hv1000以上、摩擦係数:硬質クロムめっきより20%低減、耐摩耗性:硬質クロムめっきの3倍以上、臨界剥離荷重:50N以上、初期なじみ過程における異常摩耗の抑制:DLCの3倍以上
(新技術)
PTFE/ナノダイヤモンド混合複合めっき
(新技術の特徴)
・長寿命
・環境保護
・初期なじみ性
・潤滑性
・低コスト
・耐焼付性
具体的な成果
・PTFE/ナノダイヤモンド混合分散液の開発
-ND表面のラジカル補足性を利用したPEGのグラフト反応やイオン性官能基の導入反応について検討を行い、最適な反応時間及び温度を決定した
-アニオン性官能基導入NDとポリカチオン系界面活性剤によりND分散液を作製、また界面活性剤により作成したPTFE分散液を混合して、安定した分散状態となる条件を確立
・複合めっき技術の開発
-ナノダイヤモンド粒子をめっき液中に分散させ、めっき被膜中に均一に共析させる技術を確立した
-アニオン性官能基導入NDにポリカチオン系界面活性剤を添加したND分散液とPTFE分散液を用いて、めっき処理を行うことで、めっき皮膜中にNDとPTFEの両粒子を均一に分散・共析させる条件を見出した
-PTFE/ND複合めっき皮膜の摺動試験結果から、熱処理温度300、250℃で作成することにより優れた低摩擦性を示すめっき膜を実現できる可能性が示された
知財出願や広報活動等の状況
・論文:「ナノダイヤモンド複合めっき被膜とそのトライボロジー特性」トライボロジスト第56巻p.621-626(H23.10)
「ナノダイヤモンド複合めっき皮膜」月刊トライボロジー25(2),P32-34(H23)
・出展:機械要素展、機能性コーティング展等、複数の展示会に出展
・特許:「ダイヤモンド微粒子を分散させた複合めっき液及びその製造方法」(特許第5435477号)、「複合めっき被膜の形成方法」(特許第5614538号)
「刃物」(実用新案登録第3159606号)
研究開発成果の利用シーン
自動車エンジン部品(ピストン、ピストンリング)、軸受、コンプレッサー部品(ピストンリング、スクロール部)等に用いられ、省エネと長寿命化を実現する
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
・H23年度に実用化に成功
・試作加工可(摺動部品へのめっき処理)
提携可能な製品・サービス内容
加工・組立・処理、共同研究・共同開発
製品・サービスのPRポイント
・耐摩耗性向上:ND複合めっきは、従来の硬質クロムめっきの2.5~3倍の耐摩耗性及び、相手材への攻撃性は7割以上低減する特性を持つ
・省エネルギー化:硬質クロムや窒化クロム等に対して、摩擦係数が20%以上低く、省エネ効果が期待できる
・新製法等の実現:DLCやCrNに比べ、めっき技術であるため、素材を選ばず密着性能を確保でき、また、ナノ分散技術を応用することで様々なナノ材料を用いためっき技術が可能
今後の実用化・事業化の見通し
事業化に向け、共同研究を継続的に実施
・現在、試作品の性能試験を実施している。これまでは一定条件下での試験であったが、実機相当の条件における試験に移行し、耐摩耗性、摩擦係数の評価を実施している
・実機部品に処理を行い、ランニングによる評価試験へ移行する。コストと効果(性能)の両立を目指し、事業化に向けた共同研究を継続予定
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | アイテック株式会社 |
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事業管理機関 | 公益財団法人ふくい産業支援センター |
研究等実施機関 | 国立大学法人新潟大学 国立大学法人福井大学 福井県工業技術センター |
アドバイザー | TPR株式会社日立産機システム株式会社 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | アイテック株式会社(法人番号:5210001012646) |
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事業内容 | 眼鏡の表面処理の研究開発・製造・販売その他、電着塗装、イオン・プレーティング・スパッタリングなどの技術をデジタル家電、自動車部品等の市場に展開等 |
社員数 | 200 名 |
生産拠点 | 本社工場 |
本社所在地 | 〒916-0016 福井県鯖江市神中町2-6-8 |
ホームページ | http://www.eyetec.co.jp |
連絡先窓口 | 新事業開発本部 小泉将治 |
メールアドレス | Masaharu_Koiuzmi@eyetec.co.jp |
電話番号 | 0778-51-5000 |
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