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測定計測

世界で初めて、生体試料表面を高速で分析する超微量定量分析装置

神奈川県

株式会社バイオクロマト

2026年2月9日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 世界初、生体試料表面の高速かつ超微量定量装置
基盤技術分野 測定計測
対象となる産業分野 医療・健康・介護、環境・エネルギー、農業、食品、化学品製造、空間メタボローム
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(精度向上)
キーワード レーザーアブレーション、定量イメージング、有機物・無機物の同時分析、大気圧イオン化法、空間メタボローム
事業化状況 実用化に成功し事業化間近
事業実施年度 令和4年度~令和6年度

プロジェクトの詳細

事業概要

本研究開発では、薬剤の到達状況や病状の進行を正確に評価するため、生体組織に分布した薬剤やバイオマーカーを、分布情報を保ったまま直接・高速・高感度に定量できる装置を開発した(図1)。これにより、一連の分析処理を短時間で行うことが可能となり、大量サンプルの迅速な評価が実現する。このような装置は世界的にも例がなく、創薬や医療分野において大きな潜在的ニーズを有する。特に、がん組織や細胞といった微小空間での高速定量を可能とすることで、がん治療への応用が期待される。
現在、本装置は実用化段階にあり、事業化直前まで進んでいる。当初想定していた医療分野に加え、植物・食品研究、さらには材料分野からの利用要望も寄せられており、装置販売に向けたデモ測定や受託分析による事業化も視野に入っている。
事業は最高難度の技術は当面、実用化段階が続くが、難易度の低い技術より順次段階的に事業化に移行する。

LA-API-MS装置図
開発した技術のポイント

・ガルバノレーザーアブレーション技術により高速スキャンを実現
・アンビエントイオン化質量分析と誘導結合プラズマ質量分析を組み合わせ、有機物と金属の同時検出を可能にした
・微量重量測定装置によりアブレーション前後の重量変化を計測
・気中パーティクルカウンターでエアロゾル量の時間変化を計測
・内標準法による高速交互スキャンでマトリックス効果を低減
・「グリッド照射法(定量イメージング法)」とくり貫き照射法との2つの照射方式を開発(図2)
・特定部位の定量値算出から連続領域の定量イメージングまで対応
・1回の分析で複数成分の情報取得が可能
・定量範囲を任意に設定することが可能
・ピクセル単位で定量しながら掃引的に分析する定量イメージングが実現した(グリッド照射法による定量イメージング法を開発)
・指定範囲を一度に励起して定量分析することが可能となった(くり貫き照射法による局所定量法を開発)これにより、数十秒以内での高速測定を実現

グリッド定量分析とくり貫き照射分析
具体的な成果

フェムト秒ガルバノレーザーアブレーション装置を応用して成分の定量イメージング法を確立した。有機物検出用にコロナ放電イオン源を開発し、フタル酸ベンジルnブチル0.1マイクログラムが検出可能となった(相対標準偏差3.9%)。レーザー集光径9.48マイクログラムを実装し、1平方ミリメートル四方を1秒以内に照射完了できた(目標30秒以内)。試料重量測定として、全照射範囲の重量を直接測定することが可能となった(1マイクログラム単位の精密ミクロ天秤を実装し、少なくとも125マイクログラムの検出が可能)、8ナノメートルの粒子検出を実現し、8~600ナノメーターの範囲で任意の粒子を選択し、50Hzで高速測定することが可能となった。シスプラチン50ナノグラムの検出に成功し、感度が実用レベルであることが確認された。また、酢酸トコフェロールを用いて定量法を確立した。添加回収実験では104.2%の良好な回収率を達成し、定量イメージングによる二次元的な濃度分布可視化を実現した(図3)。

グリッド毎の定量値をマッピング
知財出願や広報活動等の状況

バリア放電イオン源、コロナ放電イオン源、超音波ミストイオン源の3種類のイオン源を開発しており、このうちコロナ放電については「特許出願」、超音波ミストについては「特許成立」している。
本研究開発により、以下の2件を特許出願した。
(1)特願2025-018900 「分析試料表面に含まれる有機化合物をイオン化するシステム」
(2)特願2025-036417 「分析試料表面に含まれる分析対象物質の含有率を定量する方法」

研究開発成果の利用シーン

・創薬分野での薬剤スクリーニングと候補成分の作用機序検証
・ドラッグデリバリーシステムの効果評価と薬剤到達量測定、がん治療における患部への薬剤集積評価
・病理組織検査におけるバイオプシー検体の微小切片分析
・タンパク質へのリガンド結合評価
・バイオマーカーの局在化分析
・抗がん剤などの医薬品開発における病的状態の細胞に対する体内動態情報および薬物送達評価
・一度の分析で複数成分情報を取得し、患者負担軽減への貢献
・従来の免疫染色やPETでは区別困難な代謝物等の類縁物質評価
・植物の薬剤取り込みの毛脈分布
・魚類の耳石研究(年輪のように履歴が追える。本手法を必要とする研究者が多い)
・材料(例えばポリプロピレン)の劣化部の解析
これらの利用により、医療分野のニーズに広く対応が可能とともに、植物、材料分析ににも応用が可能である。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

研究開発期間中に装置のプロトタイプが完成し、定量イメージング技術が確立された。動物試料および植物試料を用いた有機無機同時イメージングの実証実験も成功しており、技術の有用性が確認されている。アドバイザーからの評価では「本事業は極めて高い成功を収めた」「装置のプロトタイプ機を完成させており」との高い評価を得ている。現在は研究用装置としての段階にあり、本格的な製品化に向けた取り組みが今後必要となる。製薬企業への技術導入による創薬支援用途が早期の市場開拓対象として想定されている。
受託分析サービスとしての展開も開始されており、動物組織をはじめ、植物組織、動物組織等の組織イメージング、さらには生物以外の材料分析等への展開も検討している。

提携可能な製品・サービス内容

試験・分析・評価、共同研究・共同開発

製品・サービスのPRポイント

世界初の生体試料表面高速超微量定量装置として、従来技術では不可能であった有機化合物と金属元素の同時イメージングに加え、定量までを実現した。本技術は、局所1点の定量であれば、レーザーによるサンプリングから測定完了までを数十秒で実施できる高速性を備え、研究・検査現場で求められる大量サンプル処理に対応する。特殊な前処理が不要で、試料をそのまま測定できるため、操作が簡便で再現性の高いデータ取得が可能である。
また、測定エリアを任意に設定でき、組織中の「どの部位に、どの濃度で成分が存在するか」を迅速に把握できる。定量測定をピクセル単位で行う場合、そのピクセルを連続的に走査することで、定量イメージングを可能にした。
これにより、従来の濃淡画像による主観的な判定から、“単位重量当たりの濃度”という具体的な定量値に基づく客観的な濃度分布解析へと移行できる技術である。

今後の実用化・事業化の見通し

製薬企業への技術導入による創薬支援用途が早期の市場開拓対象となる。新薬候補物質のスクリーニングやドラッグデリバリーシステムの効果評価において、定量イメージング技術は高い付加価値を提供できる。バイオマーカーの空間分布評価に関する受託分析サービスとしての展開も見込まれる。中長期的には、医療機関や検査機関への装置導入による診断支援技術としての応用が期待される。がん組織における薬剤到達量の評価や、特定成分の局在解析による疾患ステージの判定補助など、高精度診断への貢献が可能である。装置メーカー、臨床研究機関、製薬企業との連携強化により実用化を目指す。
事業化は段階的に行う予定。まずは有機・無機物の同時分析可能な技術として、受託分析を行いながら実用化の検討を行い、有機・無機物同時分析装置を開発し事業化する。その後、定量機能を付与して受託分析を行い、定量装置として実用化検討を行い装置販売を目的とした事業化を行う。

実用化・事業化にあたっての課題

・装置の汎用性向上と操作性の簡便化が求められ、市販装置として開発する必要がある
・操作プロセスの自動化やメンテナンス性の向上、コンパクト化、および低コスト化といった改良が必要
・ユーザーが限定的な専門知識でも操作できるようソフトウェアの改良が必要
・測定対象試料の拡張として、個体試料、液体試料、さらには生体に近い湿潤状態での測定への対応が望まれる
・定量精度のさらなる向上と標準化のため、論文化により国際的に通用する手法に仕上げる必要がある
・定量については、分析法バリデーションの実施と測定手順の標準化が必要
・産業界や臨床現場での信頼度を高めるため、学会発表や論文発表により認知度を高める必要がある。

事業化に向けた提携や連携の希望

最終的には「定量が可能な市販装置」の開発が必要であり、その実現には相応の開発資金が必要である。そのため本事業では、段階的に事業化を進める方針としている。まず(1)受託分析事業を近日中に開始し、市場ニーズの把握と技術評価を進める。次に(2)有機・無機物の同時イメージング装置(定量機能なし)として製品化し、2026年6月以降の販売開始を目指す。当面の販売モデルは定量機能を備えないものの、感度の標準化や半定量測定が可能であり、さらに一般的な質量分析イメージングでは実現できないレーザー照射技術を有するため、事業化可能と判断している。販売対象も製薬分野に限定せず、大学研究機関、食品分野、化粧品メーカーなど幅広い市場を想定している。
現在、複数の企業・大学と連携を進めているが、より広く連携先を募り、事業推進体制を強化したいと考えている。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 株式会社バイオクロマト 開発部
事業管理機関 よこはまティーエルオー株式会社 プロジェクト推進部門
研究等実施機関 株式会社バイオクロマト 開発部
学校法人順天堂 大学院医学研究科 松川岳久助教(現:順天堂大学 薬学部 衛生化学分野 教授、(併任)医学部 衛生学・公衆衛生学講座(衛生学)、(併任)医学部 法医学講座)
国立大学法人東京大学 大学院理学系研究科 平田岳史教授
アドバイザー 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所
国立研究開発法人産業技術総合研究所
東京大学大学院医学研究科
ユーロフィン分析科学研究所株式会社

参考情報

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 株式会社バイオクロマト(法人番号:8021001001787)
事業内容 科学・分析機器製造業:試料前処理、直接質量分析に関する装置・消耗品の開発と、分析サービスを提供する。
社員数 17 名
本社所在地 〒251-0053 神奈川県藤沢市本町1-12-19
ホームページ https://www.bicr.co.jp/
連絡先窓口 株式会社バイオクロマト 開発部 島田 治男
メールアドレス h.shimada@bicr.co.jp
電話番号 0466-23-8382