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測定計測

目視を超える“もう一つの目”で挑む、ATL早期発見AI

大阪府

スキルシステムズ株式会社

2026年2月5日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 成人T細胞白血病(ATL)早期発見のための画像AI技術の確立とATL判定支援システムの開発
基盤技術分野 測定計測
対象となる産業分野 医療・健康・介護、情報通信、金属加工
産業分野でのニーズ対応 高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(人件費削減)、高効率化(使用機器削減)、高効率化(生産性増加)、低コスト化
キーワード 画像検査、異常検知、自動検査、品質検査、欠陥検出
事業化状況 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中
事業実施年度 令和4年度~令和6年度

プロジェクトの詳細

事業概要

本研究開発事業では、ATL早期発見のための画像AI技術の確立とATL判定支援システムの開発を行った。研究体制はスキルシステムズ株式会社をプロジェクトリーダーとし、大阪国際がんセンターを研究開発サブリーダー機関として実施した。主要な研究内容は、異型細胞・正常細胞のサンプル画像の採取と分類ノウハウの提供、少ない教師データを自己増殖させる仕組みの確立、ATL判定に必要な性能水準のオリジナルなAIモデルの確立、実運用を踏まえた研究成果の実証実験である。世界的に見ても、血球画像を対象とした画像診断AIは業界初の取り組みとなる。最終的に延べ96,931枚(約210症例)のサンプル画像を入手し、AIモデルの開発を行った。

ATL早期診断支援AIシステム
開発した技術のポイント

・VAE(変分自己符号化器)を用いた架空細胞画像の自動生成技術
-正常細胞から異常細胞の架空画像を3枚以上自己増殖できる機能を確立
-ESRGANを実装し画像の解像度向上を実現

・3D化技術による教師データ拡張
-X軸、Y軸、Z軸に各々10度ずつ回転させた3D画像を実現
-Blenderを用いた3Dモデル開発環境を構築

・高精度AIモデルの確立
-VGG、ViT(Vision Transformer)、k-Fold Cross Validation等を実装
-ファインチューニングの導入により学習時間短縮と精度向上を実現
-最終的にATL判定精度96.3%を達成

・WGAN(Wasserstein Generative Adversarial Networks)とSynthetic CellGANによる細胞種類別画像生成技術の確立

リンパ細胞写真
具体的な成果

・サンプル画像収集: 令和4年度に65症例から13,000枚、令和5年度に180症例から83,931枚の計96,931枚のサンプル画像を採取し、予定を上回る成果を達成した。
・AI精度向上: 令和4年度に目標精度70%に対し74%を達成、令和5年度に目標精度90%に対し96.3%を達成した。
・架空画像生成技術: VAEモデルにより正常細胞から異常細胞の架空画像を3枚以上自己増殖できる機能を確立し、分類精度について3%程度の上昇を確認した。
・実証実験: 大阪国際がんセンター及び大阪鉄道病院にてAIによるリンパ細胞の異常分類の評価を実施し、技師に代わる精度であり且つ安定した評価が可能であることを確認し、早期の導入を希望された。

知財出願や広報活動等の状況

・令和5年度7月にEdgeTechにて研究中の取り組みをPR活動として実施した。
・令和6年度10月に日刊工業新聞にて研究中の取り組みをPR活動として実施した。

研究開発成果の利用シーン

本AI判定支援システムは、ATLの早期発見が困難な医療現場において、熟練の医療従事者が不足している地域や、ATLに接する機会が少ない医師、経験の浅い医師による診断精度のばらつきを解決する場面で利用される。特に血液内科ではない一般医を対象として、経過観察や専門医への紹介のタイミング判断に活用できる。また、フローサイトメトリーによる高額な診断に代替する安価な診断手段として、多くの医療機関での導入が期待される。さらに、教育用ツールや標準化のための異常分類ツールとしての活用も想定されており、医療従事者の技術向上にも貢献する。現在、感染者が多い地域(九州地方)の医療機関を中心に実地評価を実施している。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

令和7年度からの事業開始に向けて、クラウド上にAI分類ソフトを構築し、想定顧客環境での試験導入を完了した。セキュリティ対策として SSL通信による通信経路の暗号化、ファイアウォールの適切な設定と監視体制、ロールベースのアクセス制御システム、データバックアップ体制を構築した。システム効率性については負荷に応じた自動スケーリング、リソース使用状況の常時モニタリング体制を確立し、サーバレスアプリを併用した低コストで高効率な構成を実現した。分析装置販売会社のセラビジョン・ジャパン株式会社、シスメックス株式会社との技術提案と実装連携を模索中であり、検査会社の株式会社ファルコバイオシステムズとも検査会社からの視点で多くのアドバイスを頂いている。

提携可能な製品・サービス内容

設計・製作、共同研究・共同開発、技術ライセンス

製品・サービスのPRポイント

・AI診断1回ごとの従量課金型のため、顧客はイニシャルコストが不要となる
・AI分類ソフトの機能やWindowsアップデートなどメンテナンスコストは不要となる
・目標精度96.3%を達成した高精度なATL判定支援システム
・世界初の血球画像を対象とした画像診断AI技術
・熟練医師と同等の診断精度を安定して提供
・フローサイトメトリーの20,000円~30,000円と比較して大幅なコスト削減を実現
・ローカル実行型とクラウド型の両方に対応し、医療機関のセキュリティポリシーに柔軟に対応
・経過観察における使用が医療現場で高く評価されており、専門医への紹介タイミングの適切な判断を支援

今後の実用化・事業化の見通し

血液画像自動分析装置市場は2020年から2027年にかけて年平均成長率5.7%で推移し、2027年には約150億円規模に拡大する予測がある。血液診断市場全体においても2024年の約300億円から、2030年には約480億円まで成長する見込みである。AI支援型の診断技術は商用医療技術としての現実味を帯びており、本ソフトの市場展開可能性は極めて高い。今後はATLの早期発見支援という医療的意義に加え、より広い血液疾患分野への応用展開を見据えた製品・サービスの進化を図り、国内外の医療現場におけるAI活用のロールモデルとなることを目指す。HTLV-1キャリア診療ガイドライン2024への「AI支援による異常分類の標準手順案」も提案したい。

実用化・事業化にあたっての課題

事業化展開において医療ガイドラインとの整合性確保が重要な要素であり、現在のHTLV-1キャリア診療ガイドライン2024では異常リンパ球の判定は「目視により実施すること」と規定されているため、AI支援による異常分類が臨床診断における補助的手段として正式に認定される必要がある。また、保険収載に関しては相当のハードルが存在するとの指摘もあり、関連学会や医療行政との対話を継続して進めることが課題となっている。

事業化に向けた提携や連携の希望

画像解析とAI技術を融合させた「人の目に代わるもう一つの目」の実装を通じ、医療をはじめとする多様な分野の課題解決に取り組んでいる。本開発のATL早期発見AIシステムは、熟練医が顕微鏡下で判断していた微細な異常細胞を高精度に検出し、診断支援精度96.5%を実現した。この技術は、医療分野にとどまらず、目視・経験・勘に依存するあらゆる領域に応用可能である。例えば、製造業における外観検査や品質管理、農業における病害・熟度判定、介護・福祉分野における体調変化モニタリング、さらには行政分野での公衆衛生データ解析など、多様な領域での社会実装が期待される。スキルシステムズは、これらの分野におけるAI導入を支援し、異常を見抜く技術を共通基盤として産学官連携を推進している。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 スキルシステムズ株式会社
事業管理機関 一般財団法人大阪科学技術センター
研究等実施機関 スキルシステムズ株式会社
地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター
アドバイザー 恩賜財団済生会泉尾病院
株式会社三協
東和薬品株式会社

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 スキルシステムズ株式会社(法人番号:9120001213332)
事業内容 コンピュータシステムのハードおよびソフトウェアの開発及び販売、労働者派遣事業法に基づく労働者派遣事業、医療・介護関連のソフトウェア開発事業、医療用の機器・器具・備品・消耗品等の販売、前各号に付帯する一切の事業
社員数 31 名
生産拠点 大阪市東淀川区東中島1-17-26 神戸市中央区中町通3-1-16 サンビル502 東京都台東区上野3-13-9 珠和ビル2階201号
本社所在地 〒533-0033 大阪府大阪市東淀川区東中島1-17-26
ホームページ https://www.skill-systems.co.jp/
連絡先窓口 スキルシステムズ株式会社 開発第2本部 横田祐介
メールアドレス y-yokota@sic-net.co.jp
電話番号 06-6370-4199