接合・実装
新レーザ溶接工法で溶接不良ゼロの電池カースの製作
滋賀県
髙橋金属株式会社
2025年1月28日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 独自レーザ光軌跡コントロール溶接技術を用いた次世代自動車用高性能電池パックの開発 |
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基盤技術分野 | 接合・実装 |
対象となる産業分野 | 航空・宇宙、自動車、農業、産業機械、電池 |
産業分野でのニーズ対応 | 高性能化(耐久性向上)、高性能化(小型化・軽量化)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高効率化(人件費削減)、高効率化(生産性増加) |
キーワード | レーザ溶接,高気密/高強度,スキマ・ギャップ |
事業化状況 | 実用化間近 |
事業実施年度 | 令和3年度~令和5年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
商用車用の電動化に必要な電池パックは、車体のフレームに直接取付けされる事から、高気密、高強度、が要求され、航続距離を満たすための軽量・コンパクト化が望まれている。この要件を満たす電池パック部品の実現を目指し、ファイバーレーザ溶接技術を開発する。これにより、電池セルの組み付けを溶接に変更し、通電抵抗を低減させて発熱を防止するとともに、電池パックのコンパクト化と軽量化を図ることを目的としている。これらの技術開発を通じて、商用車の電動化を推進し、カーボンニュートラル社会の実現に寄与することを目指す。
開発した技術のポイント
・ギャップトラッキングレーザ溶接技術
-板厚に対するギャップ吸収を可能とする溶接工法。できる工法開発
-ギャップのある接合をオリジナル溶接軌跡を用い母材強度以上の接合強度を実現できる工法開発。 -接合部の状態監視を行い、リアルタイムに溶接条件を変更し溶接レーザ溶接システムの開発 。
・異種金属接合技術
-鉄、アルミ、銅を異種接合するバインドレーザ溶接工法の開発。
-引張強度70MPa以上(アルミ母材強度以上)を実現。
・電池セル端子接合技術
-通電時の発熱を防ぐ最適加工条件を把握。
-接合部の金属間化合物が有っても接合強度が満足できる溶接工法の最適条件。
具体的な成果
・ギャップトラッキングレーザ溶接技術の開発
-変化する溶接直前の状態を計測した結果に基づきリアルタイムで溶接条件を変更し、自動追従加工するファイバーレーザ溶接システムの構築。
-オリジナル溶接軌跡を開発し、接合隙間(ギャップ)が有っても母材強度で接合出来る工法の開発(板厚/ギャップ アスペクト比 2倍以下、従来工法ではギャップ0.2㎜が限界であったが最大0.5㎜まで吸収を達成)。
・髙橋金属式バインドレーザ溶接工法の開発
-電池パックケース熱管理のために、伝熱材とヒートシンクの異種金属接合工法を開発。
-銅をバインド材とした鉄ー銅ーアルミの異種金属溶接工法で、アルミ合金(A5052材)のバインドレーザ溶接において4.3kNの接合強度(荷重)を達成。
・電池セル端子接合技術の開発
-ボルトナットによる機械的接合に代わる、バスバーレス・レーザ溶接工法の開発。
-バスバー方式で電池セルをレーザ溶接接合する事に対応するクラッド端子の開発。
知財出願や広報活動等の状況
・出願特許:
特願2023-119819 「電池用端子、電池用端子の製造方法」
特願2023-216757 「レーザ溶接システム及びレーザ溶接方法」
・機械要素技術展(2024)へのサポイン事業で開発したアイテムの展示を行った。(2024/10/2~10/4)
研究開発成果の利用シーン
川下企業が開発・生産する商用車用電池パック用、電池ケースに活用される。従来工法では板金部品の加工精度が溶接部の気密性・強度に影響していたが、溶接直前の接合部の状態に合わせた最適加工条件で加工する事で高気密・高強度を達成できる。また、ワークのバラツキをロボットのティーチングにより補っていたが、この作業の無くなる事から、生産時間の約40%を削減する事が出来るため、顧客の生産変動にタイムリーに対応でき、且つ最適価格での部品提供が可能となる。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
本研究開発品である電池パックは、川下産業と連携して開発を進めており、採用されるとトヨタ自動車株式会社、いすゞ自動車、日野自動車向けの小型電動トラックに搭載されるものである。また、電池パックと合わせ周辺部品である高電圧ボックスやジャンクションボックスといった部品もセットで供給する予定である。
更に、商用車向け以外にも、船舶、農機、建築、輸送などの電動化に向けた電池パックの受注展開へも販路を開拓し事業展開を広げる。
提携可能な製品・サービス内容
加工・組立・処理、素材・部品製造、製品製造
製品・サービスのPRポイント
・高強度接合の実現
-板厚とギャップのアスペクト比が2倍以下でも母材破断強度を得る溶接軌跡を開発。
-リアルタイムで接合部のギャップを監視し、最適な加工条件に自動調整する「レーザ軌跡コントロールシステム」により不良発生を防止。
・異種金属接合の革新
-鉄材とアルミ材の間に銅材を挟むことで、アルミ材の母材強度以上の接合強度を実現。
-金属間化合物が発生しても強度を維持できる工法を確立。
・電池パックの端子開発
-銅材とアルミ材を一体化するプレス加工の2種類の工法を開発。
・軽量でコンパクトな電池パックの実現
-小型トラック向けの気密性、耐食性、高強度を兼ね備えた電池パック筐体を実現。
・評価技術と可視化技術の確立
-接合品の引張強度試験や組織観察、溶接現象の可視化技術を構築し、接合技術の信頼性を向上。
・初期投資の回収リスクを低減
-小ロット生産でも対応可能な鈑金工法を採用し、コスト効率の高い製造を実現。
今後の実用化・事業化の見通し
研究開発時には溶接速度2m/minを基本に加工条件の設定を実施したがより高速化を図るため3m/minの加工速度の加工条件の検証を実施。これにより、商用車向け以外にも、船舶、農機、建築、輸送などの電動化に向けた電池パックの受注展開へも販路を開拓し事業展開を広げる。また、R6年10月には、機械要素技術展2024へもサポイン事業で開発した電池ケースのサンプル展示を図り、事業化を図るため展示会出典を行った。今後、自社のWebサイトへも情報展開を図り認知度の向上と新規開拓へ繋げる。
実用化・事業化にあたっての課題
電池パックを構成する板厚1.0mm,1.6mmの材料について加工条件設定は完了しており、今後板厚を変更し加工条件の追加取得、加工速度・照射角度・継手形状を変更し電池パック以外への加工展開が図れる様に進める。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 髙橋金属株式会社 |
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事業管理機関 | 公益財団法人滋賀県産業支援プラザ 連携推進部 プロジェクト管理室 |
研究等実施機関 | 滋賀県東北部工業技術センター |
アドバイザー | 国立大学法人 大阪大学 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 川下企業 ユニット部品 生産技術責任者 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 髙橋金属株式会社(法人番号:9160001006765) |
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事業内容 | 金属製品製造業 |
社員数 | 335 名 |
生産拠点 | 本社工場、細江工場(滋賀県長浜市)海外事業所(中国蘇州市、タイ) |
本社所在地 | 〒526-0105 滋賀県長浜市細江町864-4 |
ホームページ | https://www.takahasi-k.co.jp |
連絡先窓口 | 髙橋金属株式会社 |
メールアドレス | h-kitamura@takahasi-k.co.jp |
電話番号 | 0749-72-4820 |
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