機械制御
極低温環境でのトライボロジー評価を可能にする装置開発
島根県
株式会社キグチテクニクス
2025年2月27日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 液体水素温度における材料摩耗および力学物性試験機の製作 |
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基盤技術分野 | 機械制御 |
対象となる産業分野 | 環境・エネルギー、航空・宇宙、産業機械 |
産業分野でのニーズ対応 | 高性能化(耐久性向上) |
キーワード | トライボロジー、低温、水素、シール技術、固体潤滑 |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化間近 |
事業実施年度 | 令和4年度~令和5年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
低温環境での摩耗試験や力学物性試験のために、発熱を抑えた駆動系を開発することを目指している。従来のモーターの発熱問題を解決するために、高温超電導体を用いたモーターを試作し、液体水素温度で発熱のない駆動系を実現することを計画している。超電導技術は現在、液体窒素温度で超伝導を示す線材が実用化されており、この技術を用いて世界初となる超電導モーターの開発を目指している。また、エネルギー回生型の小型電源技術の開発も行い、超電導モーターの効率的な運用を図る。この技術開発が成功すれば、他の用途にも波及効果が期待される。
開発した技術のポイント
・高温超伝導線材を用いた駆動機構の開発
-液体水素温度(20K)で動作する高温超伝導線材を用いた駆動機構を試作し、回転と直線駆動の両方を実現した。
-極低温環境で使用可能な新しい駆動電源の設計を行った。
・低温で動作する圧力センサーの開発
-ピエゾ抵抗効果を用いた液体水素温度付近で動作する圧力センサーを開発し、変位測定機能を備えた。
-20K環境中での圧力と変位の精密測定を実現した。
・摩耗試験機の設計・製作
-回転駆動機構と圧力センサーを組み合わせ、極低温環境での摩耗試験が可能な試験機を開発した。
-20Kに冷却可能な冷却機構と真空ジャケットを設計した。
・引張負荷を与える機構の開発
-小型試料用の引張試験装置を設計し、直線駆動力の向上を行った。
-試験片がずれないようにするための治具を開発した。
・熱サイクルを与える機構の開発
-極低温から室温までの温度サイクルを制御可能な機構を開発し、熱サイクル試験を実施した。
・汎用試験機のプロトタイプ製作
-温度と雰囲気制御を備えた試験機のプロトタイプを製作し、様々な環境での試験が可能な装置を実現した。
・液体水素中試験装置の開発
-液体水素中での摩耗試験と引張試験が行える装置を開発し、安全性を確保するための設計を進めた。
具体的な成果
・汎用試験機として必要な熱を発生しない駆動機構として、超電導モーターをこれまでの大きなサイズから手のひらサイズへの小型化に成功した。
・小型化した超電導モーターによる、極低温度20K(-253℃)で、一般的な摩耗試験の手法である、Ring on disk摩耗試験の実施に成功することができ、雰囲気制御・温度可変範囲を備えた汎用の試験機のプロトタイプとして試作機を完成させることができた。
・当該研究成果を応用し、液体水素中での摩耗試験及び引張試験ができる機構を研究開発し、液体窒素中で引張試験を実施し、問題なく試験できることを確認できた。
知財出願や広報活動等の状況
現在のところ、知財の出願は行っていない。
研究開発成果の利用シーン
・航空機に使用する水素タンクや水素燃料供給システムなどの試験機。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
インフラ(水素ステーション、水素発電、定置型燃料電池)、自動車(燃料電池車)、航空宇宙(航空機、ロケット)などの分野で使用される個体潤滑剤、シール材、構造用部材の評価と、装置販売を計画している。
提携可能な製品・サービス内容
試験・分析・評価、共同研究・共同開発
製品・サービスのPRポイント
・液体水素温度並びに液体水素中での摩耗試験を実現するものであり、国際的にみても類を見ない試験機である。
・還元性が強い液体水素の中で摩耗現象を評価することは今まで見えなかった表面劣化の状況が明らかになることが予想され、日本国内のみならず海外からも受託評価の引き合い、試験機販売の引き合いが見込まれる。
今後の実用化・事業化の見通し
・令和9年度からの1台20,000千円程度での装置の販売を計画している。
・令和6~令和7年度の受託評価の中で、装置の操作性に関する追加研究を行い、令和9年度1台、令和10年度2台の販売を予定している。
実用化・事業化にあたっての課題
・液体水素中での試験中に、液体水素が蒸発し、水素ガスが漏れだすことから、蒸発した水素ガスを希釈する機構を組み込んで、液体水素中で試験のできるプロトタイプの完成を目指す。
・超電導モーターを駆動の200A近い大電流を使用するため感電等のリスクを排除する。
・使いやすい試験機にするためユーザーインターフェースを充実させる。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社キグチテクニクス 戦略企画部 |
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事業管理機関 | 公益財団法人しまね産業振興財団 企業振興部 新事業支援課 |
研究等実施機関 | 国立大学法人北海道大学 工学研究院・固体反応化学研究室 教授 島田 敏宏 |
アドバイザー | 川崎重工業株式会社 国立大学法人室蘭工業大学 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社キグチテクニクス(法人番号:9280001002397) |
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事業内容 | その他の製造業 |
社員数 | 240 名 |
生産拠点 | 島根県安来市、愛知県春日井市、埼玉県桶川市 |
本社所在地 | 〒692-0057 島根県安来市恵乃島町114-15 |
ホームページ | https://kiguchitech.co.jp/ |
連絡先窓口 | 戦略企画部 宮本伸樹 |
メールアドレス | miyamoto_n@kiguchitech.co.jp |
電話番号 | 0854-22-2619 |
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