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材料製造プロセス

グラフェンの革新的製造技術を開発し、量産化・低価格化を実現する

東京都

株式会社常光

2025年2月18日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 夢の機能材料「グラフェン」量産化・低価格化を実現する革新的製造技術の開発
基盤技術分野 材料製造プロセス
対象となる産業分野 自動車、産業機械、情報通信、スマート家電、電池、半導体、工作機械、エレクトロニクス、印刷・情報記録、化学品製造
産業分野でのニーズ対応 低コスト化
キーワード グラフェン,黒鉛層間化合物,超高圧ホモジナイザ,製造技術,大量合成
事業化状況 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中
事業実施年度 令和3年度~令和5年度

プロジェクトの詳細

事業概要

高品質グラフェンを低価格で量産化できる技術の確立を目指し、WJM(湿式ジェットミル:Wet jet mill)法と層間化合物法を組み合わせた革新的な製造技術の開発に取り組んだ。
・製造方法の最適化とコスト削減への対応。
-従来のCVD法、溶液法、電気化学的剥離法における課題を克服するため、量産性に優れたWJM法と製造費の安い層間化合物法を融合。
-製造工程は「前処理」「本処理」「後処理」の3段階で構成され、それぞれの工程で最適化を実施。
・前処理工程のスケールアップ
-スケールアップ対応の処方を開発し、量産化を目指す基盤を構築。
・本処理工程の最適化
-適切な分散溶媒と分散条件を選定し、効率的かつ安定的なグラフェンの製造を実現。
・半自動化装置の開発
-前処理工程において、手作業の25倍の処理量を可能にする半自動化装置を開発。
-装置には以下の技術を採用し、効率性と耐久性を向上。
*マグネット式シールレス撹拌機
*耐薬品性に優れたFFKM(四フッ化エチレン-パーフルオロメチルビニルエーテルゴム)パッキン

開発した技術のポイント

高品質グラフェンの低価格量産化を実現するため、WJM法と層間化合物法を組み合わせた革新的な製造技術を開発した。前処理、本処理、後処理の各工程で最適化を行い、グラフェン濃度を20倍の1.0 g/Lに向上させ、回収率80%以上を達成した。また、前処理工程の半自動化装置を開発し、処理量を従来の25倍に増加させることに成功した。
これらの改良により、1gあたりの製造に必要な時間を5日間から0.5日間に短縮し、製造原価を1 gあたり4,000円以下に抑えた。さらに、ラマン分光装置による分析とTEM観察により、欠陥が少なく、層数が5層以下の高品質グラフェンの製造を確認した。
図1は、開発したハイブリッド型「NAGS Type-GIC」のイメージ図である。

具体的な成果

・高品質なグラフェンの製造:
-ラマン分光装置を用いたラマンスペクトルの解析の結果、DバンドとGバンドの比(ID/IG)が0.1以下となり、極めて欠陥の少ないグラフェンを製造することに成功した。(図2はラマンスペクトルの一例)
-ラマンスペクトルの解析とTEM観察により、グラフェンの層数が5層以下であることを確認した。(図3はTEM画像の一例)
・製造コストの削減:
-製造工程の最適化により、グラフェンの濃度と回収率を向上させ、製造原価を1gあたり4,000円以下に削減した。
-この成果により、従来の同等製品と比較して1/10以下の価格での提供が可能になる見通しを得た。
・前処理工程の半自動化:
-手作業の25倍の処理量を実現する自動化装置を開発し、その装置にて黒鉛層間化合物の合成が可能であることを確認した。

ラマンスペクトル
TEM画像
知財出願や広報活動等の状況

補助事業開始前に出願した特許(特願2021-068784:「薄片化黒鉛の製造方法」発明者 3名 出願人:株式会社常光、国立大学法人大分大学)は、事業期間中の令和4年に審査請求を実施し、事業終了後の令和6年4月4日に登録された。
・上記以外に、製造方法に関する特許を令和5年12月に2件出願した。これらは、事業終了後に審査請求およびPCT出願の準備を進めている。
・広報活動として、Advanced Automotive Battery Conference Europe(2024年5月13日~16日、フランス・ストラスブール)において学会発表と展示を実施し、販路開拓を推進している。

発表時のスライド画像
研究開発成果の利用シーン

高品質なグラフェンを低価格で量産する技術を開発した。この成果は、プリンテッドエレクトロニクス分野において、特に導電性インクの材料として幅広い用途での活用が期待されている。
また、導電性インク以外の分野でも、以下の応用が有望視されている。
-リチウムイオン二次電池(導電助剤)
-センサーおよび電子部品
-樹脂、ゴム、炭素複合材料のフィラー
-放熱シートや放熱材料
-潤滑剤

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

ディスプレイやタッチパネル、フレキシブル・ウェアラブルデバイス、センサー、太陽電池などへの適用が見込まれる。ただし、製品化にはインク化や塗料化、被膜形成といったノウハウが重要となる。事業化計画として、2024年から無償サンプルの提供を開始し、2026年4月に発売開始を予定している。

提携可能な製品・サービス内容

素材・部品製造

製品・サービスのPRポイント

開発されたグラフェンは、ラマン分光装置を用いたラマンスペクトルの解析とTEM観察により、欠陥がID/IG=0.1以下と少なく、層数が5層以下の高品質な製品である。
製造工程の最適化により、1gあたりの製造原価を4,000円以下に抑え、従来製品の10分の1以下の価格での販売を目指している。
量産化技術としては、WJM法と層間化合物法を組み合わせた革新的なアプローチを採用した。前処理工程では、手作業の25倍量を一度に処理可能な半自動化装置を開発し、生産効率を大幅に向上させた。これにより、高品質なグラフェンの低コストでの量産が可能になった。

今後の実用化・事業化の見通し

事業化計画として、2024年に無償サンプルの提供を開始し、2025年には有償サンプルの提供を予定して、2026年4月に製品の発売開始を目指している。実用化に向けては、インク化や塗料化に関するノウハウの獲得が重要であり、印刷メーカーや電池分野の企業との連携が鍵となる。
また、コーティング工程の重要性も指摘されており、コーティング方法や乾燥過程が製品特性に影響を及ぼす可能性があることから、これらの最適化が求められる。さらに、量産化と事業化を円滑に進めるためには、製造工程に精通した企業との連携が不可欠である。

実用化・事業化にあたっての課題

・ラインナップ不足
-現状は、厚みやサイズ、分散溶媒などが同一の製品しか製造できていない。
-顧客の多様なニーズに対応するためには、製品ラインナップの拡充が不可欠である。
・製造スケールの拡大
-現在、1回のバッチで製造可能なグラフェン量は約125gにとどまっている。年間100kg以上の生産量を確保するには、1バッチあたりの製造量をさらに10倍以上に増やす必要がある。
-大規模な製造体制を確立し、安定した供給を実現することが、事業化に向けた重要な課題である。

事業化に向けた提携や連携の希望

素材ビジネスは実際のユーザーに使用してもらい、そのフィードバックを基に製品力を向上させる必要がある。そのため、使用が想定されるユーザー候補とつながるための活動を継続していく。しかしながら、本事業は全社的には異業種への進出に該当し、営業担当の人数が限られている状況である。
このことから、材料を扱う商社とのコネクションを活用し、より広範なユーザーを獲得するための活動が重要となる。この点において、商社の紹介などのご支援をぜひお願いしたいと考えている。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 株式会社常光 札幌研究開発室 材料グループ
事業管理機関 一般社団法人首都圏産業活性化協会
研究等実施機関 国立大学法人大分大学 理工学部
アドバイザー 日本化工塗料株式会社
Nanoview株式会社

参考情報

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 株式会社常光(法人番号:6010001003689)
事業内容 メディカル分析装置、体外診断用医薬品の研究開発・製造・販売、X線機器・画像診断機器等の医療機器の販売、ナノ微粒化機器の開発・製造・販売、および材料の受託加工
社員数 254 名
生産拠点 静岡県、神奈川県、台湾
本社所在地 〒113-0033 東京都文京区本郷3-19-4
ホームページ https://jokoh.com/
連絡先窓口 札幌研究開発室 材料グループ 薬袋博信
メールアドレス h_minai@jokoh.com
電話番号 080-3345-8745