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バイオ

アームドマクロファージ技術を実現し、作出効率が不十分であった癌種の日本人PDXモデルを迅速に作製へ

東京都

株式会社特殊免疫研究所

2025年1月23日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 卓越したPDXモデル作製に有用な、ヒト由来貪食促進・抑制レセプターを持つアームドマクロファージ技術の開発
基盤技術分野 バイオ
対象となる産業分野 医療・健康・介護
産業分野でのニーズ対応 高効率化(工程短縮)、高効率化(生産性増加)
キーワード PDXモデル,マクロファージ,前臨床試験,がん個別化医療
事業化状況 研究実施中
事業実施年度 令和2年度~令和4年度

プロジェクトの詳細

事業概要

患者由来腫瘍組織を免疫不全マウスに移植して作成されるPDXモデルは、がん患者の腫瘍の性質や抗がん剤への反応性を保持している「がん患者の動物モデル」である。本研究では、従来の超高度免疫不全マウスの欠点を改良した新規高度免疫不全マウス(BALB-RJマウス)を用い、マウスマクロファージの貪食抑制シグナルをヒト化(h SIRPα)し、抗体医薬を利用して患者由来リンパ球を選択的に除去するために、マクロファージの抗体受容体をヒト化(h Fcγ受容体)した「アームドマクロファージ」技術を開発した。従来の方法では作出が困難であった胃癌、大腸癌、乳癌、肺癌などの固形がんのPDXモデルの樹立実現を目指した。

アームドマクロファージ技術による迅速なPDX作出
開発した技術のポイント

・ヒト化ADCP(抗体依存性細胞貪食)を有するアームドマクロファージの開発
- 新規ヒトFcγRマウス、新規ヒトSIRPαマウスの作出
- アームドマクロファージ免疫不全マウス(BALB-RJSGマウス)の創生
・従来法で作出困難な胃癌、大腸癌、乳癌、肺癌等のPDXモデルの高効率樹立
・マウス由来細胞の大量調製方法の開発
・がん治療薬の安全性・有効性の高い評価系の確立

ヒトSIRPα発現マクロファージとヒトリンパ腫細胞の生着率の改善
具体的な成果

・新規ヒトFcγRマウスにより抗体依存性細胞貪食活性が既存マウスの2.3倍に増加
・新規ヒトSIRPαマウスにより貪食抑制活性が既存マウスの約5分の2に減少
・BALB-RJとヒトSIRPαマウスを交配したBRJ-Sマウスを作出、ヒト血液がんの生着率が約2倍向上、生着所要期間が約50%短縮
・口腔がん30症例、軟部腫瘍13症例、肝内胆管がん5症例のPDXモデルを樹立、口腔がんでは国内最大級のPDXライブラリーを構築
・胆管がんのPDXやCDXを用いて抗HER2抗体医薬の有効性を確認

国内最大級の口腔がんPDXライブラリー
研究開発成果の利用シーン

新規がん治療薬の探索、薬効薬理、安全性を確認するために有効なバイオアッセイ法の基盤として、今回開発したPDXモデルが提供される。特に稀少がんである口腔がん、軟部腫瘍、肝内胆管がんなどのPDXモデルは、新たな治療法の確立に重要な役割を果たすと期待される。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

PDXモデル作製、および飼育環境が整っている製薬会社へのBRJ-Sマウス、およびPDXモデルの販売、環境が整っていない製薬会社への薬効試験の委託を事業展開として予定している。

提携可能な製品・サービス内容

共同研究・共同開発

製品・サービスのPRポイント

作製されたBRJ-Sマウスは、従来の超免疫不全マウス(NOG、NSGマウス)と比較して、患者由来腫瘍組織の生着率が高く、生着に必要な期間も短い。また、繁殖力が高く、放射線耐性やストレス耐性も備えているため、薬剤投与によるストレスの影響等で試験途中に死亡するマウスが減少し、より適切な治療薬開発が可能となる。

今後の実用化・事業化の見通し

BRJ-Sマウスを用いることで、治療薬以外の要因によるPDXモデルマウスの脱落が減少し、より適切な治療薬開発の選択が可能となる。PDXモデル作製、および飼育環境が整っている製薬会社へのBRJ-Sマウス、およびPDXモデルの販売、環境が整っていない製薬会社への薬効試験の委託を事業展開として予定している。

実用化・事業化にあたっての課題

本研究ではアームドマクロファージ免疫不全マウス(BALB-RJSGマウス)の作製を中止したが、新規ヒトFcγRマウスの貪食促進活性をさらに高めることで、将来的にはBALB-RJSGマウスの作製も検討課題となる可能性がある。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 株式会社特殊免疫研究所
事業管理機関 公益財団法人栃木県産業振興センター
研究等実施機関 国立大学法人熊本大学
株式会社 キュオール
アドバイザー ブライトパス・バイオ 株式会社
株式会社 カイオム・バイオサイエンス
日本メジフィジックス 株式会社
国立研究開発法人 国立がん研究センター研究所
学校法人 藤田学園 藤田医科大学 医学部

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 株式会社特殊免疫研究所(法人番号:6010001005545)
事業内容 体外診断薬、モノクローナル抗体、各種研究用試薬の製造販売・輸入販売 遺伝子改変動物作製、iPS細胞の樹立及び細胞の遺伝子改変サービス 抗体医薬評価用動物モデルの開発・販売
社員数 70 名
本社所在地 〒112-0004 東京都文京区後楽1-1-10
ホームページ https://www.tokumen.co.jp/
連絡先窓口 抗体診断薬開発部 塩田 明
メールアドレス akira.shiota@tokumen.co.jp
電話番号 0285-52-1011