バイオ
前例のない「ノロウイルス経口ワクチン」を昆虫蚕で創り出す
福岡県
KAICO株式会社
2025年1月22日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | カイコーバキュロウイルス発現系を用いた経口ワクチンの製造基盤技術の開発 |
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基盤技術分野 | バイオ |
対象となる産業分野 | 医療・健康・介護、環境・エネルギー、化学品製造 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加) |
キーワード | 経口ワクチン、ノロウイルス、カイコ―バキュロウイルス発現系 |
事業化状況 | 研究実施中 |
事業実施年度 | 令和4年度~令和5年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
承認されたワクチンがなく、毎年20万⼈が亡くなっているノロウイルス感染症に対して、カイコを使った経口ワクチン技術により「ノロウイルス経口ワクチン」として実用化を目指す。実用化に向けて、本事業により当該技術を製薬会社へライセンスアウトできるまでに昇華させることを目的とする。事業1年目には製造⽅法構築、2年目で動物実験等により有効性・安全性データを取得する。
開発した技術のポイント
・不活化技術の確立
-カイコやバキュロウイルス由来成分を含むサンプル中の抗原タンパク質を特異的に定量するELISA測定系を確立した
-製造工程中でバキュロウイルスを不活化する方法として、約30通りの方法から不活化剤Aによる工程を確立した
・製剤化技術の開発
-サナギの殻をメッシュにより除去する方法を確立
-カプセル充填のための賦形剤の組成を確立し、試作品の製造を実現
・特性解析による品質確認
-精製した抗原タンパク質のN末アミノ酸配列解析やCD分析により、想定通りの構造であることを確認
-凍結乾燥カイコサナギ粉末状態での27度12週までの安定性を確認
・有効性の実証
-抗体ELISA試験とHBGA結合阻害試験を確立
-マウスでの経口投与試験により、血清IgG/IgA抗体価、HBGA結合阻害活性、腸管洗浄液のIgA抗体価の上昇を確認
具体的な成果
・不活化⽅法の開発
-抗原含量試験を開発した。
-製造⼯程中でバキュロウイルスを不活化する⽅法を開発した。
・製剤化技術の開発
-製造⼯程を構築し試作品製造を実施した。
・特性解析
-試作ワクチンの性質を、構造解析・物理化学的性質・抗原性・成分分析により評価した。
-安定性試験として、凍結乾燥カイコサナギ粉末状態での抗原の安定性を27度で評価した。
・安全性の確認
-アレルゲンに関する解析を実施し、5種類のアレルゲンについてリスク分析を⾏い、いずれの物質も製造⼯程中の⼯夫でリスクを低減できることが分かった。
・有効性の確認
-有効性試験として抗体測定試験、HBGA結合阻害試験を⽴ち上げた。
-ワクチン候補品のマウスでの経口投与による免疫原性試験を実施し、血清IgG /IgA抗体価、HBGA結合阻害活性および腸管洗浄液のIgA抗体価の上昇を確認した。
研究開発成果の利用シーン
この研究開発の成果は、主にノロウイルス感染症に対する経口ワクチンの製造基盤技術として利用される。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
製薬企業との連携およびライセンスアウトによる実用化を目指しており、薬事承認機関である医薬品医療機器総合機構(PMDA)への相談を実施した。本事業の具体的な研究開発は製法構築と試作ワクチンの評価の2つに大別される。製法構築は事業内で開発が完了したが、試作ワクチンの評価は本事業で未達の項目があり、補完研究にて継続して評価していく。
提携可能な製品・サービス内容
共同研究・共同開発、技術ライセンス
製品・サービスのPRポイント
従来の注射型ワクチンとは異なり、口から服用できるため、医療従事者不足の地域でも容易に接種できる。特に、医療体制やコールドチェーンが整っていない途上国においては、医療資材や医療従事者が不要となるため、輸送が容易になり、大きなメリットとなる。
今後の実用化・事業化の見通し
「試作ワクチンの評価」については、いくつかの課題が残っており、補完研究にて継続して評価していく予定である。
補完研究については、R4年度から本事業と並行して実施してきたAMED-SCARDA事業「カイコ昆虫モダリティによる低価格な国産組換えワクチンに関する研究開発」内で実施していく計画である。並行して、経口ワクチン開発に関心を示す製薬企業との交渉を開始しており、同社へのライセンスアウトを目指す中で必要に応じてKAICO社内での補完研究を実施していく。
実用化・事業化にあたっての課題
カイコにはアレルゲンが含まれることが知られており、その安全性確保が重要な課題である。製造工程中の工夫でアレルゲンリスクを低減できると考えており、具体的な方法について補完研究で検討する予定である。また、単回・反復投与毒性試験も補完研究で実施する予定である。
マウス試験では、試作ワクチンの経口投与により抗体価の上昇とHBGA結合阻害活性が確認された。しかし、ヒトでの有効性を確認するためには、さらなる研究が必要である。特に、注射剤で初回接種を行ったマウスに対する経口投与での追加接種の効果や、有効成分由来の分解物、投与スケジュール・投与用量についての詳細な検討が補完研究で実施される予定である。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | KAICO 株式会社 |
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事業管理機関 | 一般財団法人九州オープンイノベーションセンター |
研究等実施機関 | 国立大学法人九州大学 |
アドバイザー | 国立大学法人鹿児島大学 株式会社FFG ベンチャービジネスパートナーズ リアルテックホールディングス株式会社 株式会社ユーグレナ |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | KAICO株式会社(法人番号:9290001081036) |
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事業内容 | (1)タンパク質の受託発現 (2)試薬・診断薬・医薬品原料の製造・販売 |
社員数 | 19 名 |
生産拠点 | 【研究所】 福岡県福岡市西区九大新町5-5 いとLab+ 研究開発棟 |
本社所在地 | 〒819-0388 福岡県福岡市西区九大新町4-1 |
ホームページ | https://www.kaicoltd.jp/ |
連絡先窓口 | 熊崎有希 |
メールアドレス | kumazaki@kaicoltd.jp |
電話番号 | 092-707-4016 |
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