バイオ
効率的機能性食品素材の開発
東京都
株式会社ゲノム創薬研究所
2022年1月15日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | カイコによる機能性スクリーニング技術を用いた健康食品の効率的開発方法の確立 |
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基盤技術分野 | バイオ |
対象となる産業分野 | 医療・健康・介護 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、高効率化(人件費削減)、高効率化(生産性増加)、環境配慮、低コスト化 |
キーワード | カイコ創薬、機能性食品素材、ノトバイオートカイコ、機能性乳酸菌、経口投与 |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中 |
事業実施年度 | 平成30年度~令和2年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
食品業界では機能性の評価に哺乳動物が用いられ、高コストな上に倫理面での制約も受ける。本事業では、経口摂取によるカイコを用いたスクリーニング系を開発し、摂取後の体内動態を反映可能な安価、迅速な候補素材の選定技術として実用化を図り、効能を有する食品素材の開発に貢献する。また、自然免疫賦活効果や血糖値上昇抑制効果を持つ機能性食品を試作し、系の有用性を実証する。
開発した技術のポイント
・経口摂取技術と機能性評価系の確立
-カイコへのサンプルの腸管内注射の技術評価として、墨汁を注射し、その分布を見る方法を開発した。
-短時間、少量のサンプル投与においても更なる精度向上を目指した。
-個々のカイコ間のばらつきを抑えて、素材の機能性を高精度で再現良く評価することが可能となった。
・ノトバイオート・カイコ確立
-微生物の腸内定着数に関する個体間のばらつきを抑え、再現性のあるノトバイオート・カイコ作出技術を確立した。
-従来は高額な費用を必要としていたノトバイオート動物を少額の費用で作出することが可能となった。
・カイコ評価系によるスクリーニングを用いた機能性検証
-食品製造に適した機能性のより高い天然素材を従来よりも遥かに効率的に発見することが可能となった。
・天然素材の商品化に向けた対応
-機能性物質の同定と作用メカニズムの解明により、科学的なエビデンスに裏打ちされた良質な健康食品開発が可能となり、消費者の健康食品に求める高い水準にも応えることができるようになる。
具体的な成果
・経口摂取技術と機能性評価系の確立
-カイコへの経口投与方法として、餌に混ぜる自然摂取と腸管内注射の方法を確立した。
-機能性評価として、自然免疫賦活効果と血糖値上昇抑制効果の評価系を確立した。
・ノトバイオート・カイコ確立
-複数の微生物種について、ノトバイオート・カイコ作出技術を確立した。
-ノトバイオート・カイコを用いて、自然免疫賦活効果及び血糖上昇抑制効果の評価系を確立した。
・カイコ評価系によるスクリーニングを用いた機能性検証
-研究対象素材をカイコに摂取させ機能性を評価し、高い効果を示す素材を選定した。
-上記選定素材をノトバイオート・カイコを用いて、腸内への定着性などと共に機能性を評価した。
-マウス腹腔マクロファージ、マウス日和見感染抵抗性モデル、ヒトのショ糖負荷試験において、選定素材の機能性検証を行った。
・天然素材の商品化に向けた対応
-事業候補として絞り込まれた素材について、作用メカニズム解明と機能性物質同定を行った。
-選定された素材について、大量製造に向けた製造条件を設定した。
知財出願や広報活動等の状況
・参考文献
-Nishida S, Ishii M, Nishiyama Y, Abe S, Ono Y, Sekimizu K.
Front Microbiol (2017) 8,436
-Matsumoto Y, Ishii M, Sekimizu K.Sci Rep (2016) 6, 26354
-Nakajima et al. Drug Discoveries & Therapeutics 12, 291 (2018)
-Matsumoto Ishii Sekimizu, Drug Discoveries & Therapeutics 13(3):133 136(2019)
-Matsumoto et al. (2019) Communications Biology 157
・特許
-特願2018-136286 「ノトバイオートカイコの作製方法 」
-特願2019-090486 「血糖降下剤、及び、該血糖降下剤を含有する飲食品 」
-特願2020-067794 「ヒト試験方法及びそれを行うために使用するプログラム 」
-特許第6675703号 「乳酸菌、該乳酸菌由来の自然免疫活性化剤、感染症予防・治療薬及び飲食品」
研究開発成果の利用シーン
今回開発した技術により、機能性天然素材の探索、研究及び製品開発プロセスを高度化・効率化することができる。すなわち、食品製造に適した機能性のより高い天然素材を従来よりも遥かに効率的に発見、選定することが可能となる。さらに、機能性素材の作用発現メカニズムや効能物質に関する科学的エビデンスを獲得し、最終商品において効果的に機能性を発現できる効率的な製造条件を設定することができる。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
本事業の成果を活用した健康食品の開発及び製造販売を担う株式会社LABiTを設立するなど、事業化に向けた準備を進めている。
提携可能な製品・サービス内容
試験・分析・評価、共同研究・共同開発、技術ライセンス、技術コンサルティング
製品・サービスのPRポイント
今回開発した技術は、自然免疫賦活効果や血糖値上昇抑制等の生活習慣病の予防、改善効果が科学的なエビデンスに裏打ちされた、良質な健康食品の開発において、一貫して効率的なプロセスを創成し、健全な健康食品事業の発展と国民の健康増進に貢献するものである。
今後の実用化・事業化の見通し
・帝京大学とゲノム創薬研究所の協業中核組織として、株式会社LABiTの設立がある。同社は本事業で得られた知財等の成果物を活用し、広く健康食品の開発と製造販売を担っていくことを計画している。既にダイレクトメールでパンフレット等チラシを食品メーカーへ発送し、マーケットの開発を試みている。既に某食品会社との間で、候補素材を決定し、具体的な商品開発に向けた取り組みを開始している。
・サンプルとして、ゲノム創薬研究所で培養した培養液及び種菌(グリセロールストック)を川下製造業事業者に送っている。現在、複数の川下事業者から問い合わせが来ており、内1社とは事業化素材を決定し、具体的な商品開発に入っている。LABiT及びゲノム創薬研究所では、商品開発に必要な製造過程におけるデータ収集を行うことで川下事業者と共同開発体制を組むべく詰めの検討を行っている。
・事業化する候補素材はほぼ決まりつつあり、事業化計画は順調に進んでいる。本事業で作成したライブラリを使用することで、商品ごとに相応しい機能性素材を提供することが可能であり、提案した素材が事業会社にとって商品化がスムーズにいかないなど要求を満たさない場合には、代替の候補素材を提供できる体制をとっている。
実用化・事業化にあたっての課題
血糖値上昇抑制試験では、事業化候補素材によるヒト試験の実施を計画していたが、新型コロナウイルスの影響で倫理審査の手続が遅れるなどの理由から遅れが生じた。2021年もコロナ感染対策の影響で実施が遅れている。このヒト試験は引き続き次年度以降に実施することを計画している。また、免疫賦活試験では、今後は具体的に商品化を進めている川下事業者の意向も踏まえながら、ヒト由来の細胞及びヒトでの有効性検証を実施することを計画している。
事業化に向けた提携や連携の希望
機能性表示まで視野に入れた健康食品素材の開発に関心のある事業会社と連携して新商品開発等に研究開発企業として関わることを希望している。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社ゲノム創薬研究所 |
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事業管理機関 | 公益財団法人千葉県産業振興センター |
研究等実施機関 | 学校法人帝京大学 医真菌研究センター所長 教授 関水 和久 国立研究開発法人産業技術総合研究所 最先端バイオ技術探求グループ 研究グループ長 新家 一男 |
アドバイザー | 森永製菓株式会社 研究所 健康科学研究センター センター長 藤田 尚孝 ファルマシュプール株式会社 代表取締役社長 長谷川 節雄 国立大学法人東京大学大学院 新領域創成科学研究所 教授 大矢 禎一 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社ゲノム創薬研究所(法人番号:1010001093545) |
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事業内容 | 1.感染症の治療に有効な新規抗生物質の開発 2.自然免疫活性化を指標とした自然食品の開発及びその受託業務 3.カイコの疾患モデルの開発及びその受託業務 |
社員数 | 7 名 |
生産拠点 | 自社柏ラボ(千葉県柏市東大柏ベンチャープラザ201B)及び帝京大学八王子キャンパス医真菌研究センター内「カイコ創薬学講座」関水研究室との共同研究体制を取っている。 |
本社所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷1丁目27番8-1207号 |
ホームページ | http://genome-pharm.jp/ |
連絡先窓口 | 株式会社ゲノム創薬研究所 外山繁勝 |
メールアドレス | toyama@genome-pharm.jp |
電話番号 | 03-5684-8570 |
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