測定計測
血漿中の微量元素測定によりMCI・認知症のリスクを診断する技術を開発
神奈川県
株式会社レナテック
2025年1月9日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 血漿の金属元素測定による認知症及び血液がんリスク診断技術の開発 |
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基盤技術分野 | 測定計測 |
対象となる産業分野 | 医療・健康・介護 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加) |
キーワード | 元素分析、認知症、ICP-MS、検査、血液 |
事業化状況 | 事業化に成功し継続的な取引が続いている |
事業実施年度 | 令和4年度~令和5年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
本事業は、血漿中に含まれる微量金属を計測する技術を開発し、軽度認知障害(MCI)・認知症および血液がんのリスク診断技術の確立を目指すものである。 具体的には、以下の研究開発を実施した。
・血漿中微量金属を安定的かつ再現性に優れた測定するための研究(採血管の選定、前処理方法の確立、血清との比較研究)
・認知症および血液がんリスク診断アルゴリズムの開発
・開発したリスク診断アルゴリズムの検証
・認知症モデル動物を用いたメカニズム研究(微量金属の変化の解析、微量金属の影響の解析)
開発した技術のポイント
・血漿中の微量元素を安定的かつ高い再現性をもって連続測定するための方法を確立した。
・大量処理、低コスト、かつ穏やかな前処理条件での誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)測定を可能にした
・血清と血漿の測定値の相互変換を可能にした
・過去の膨大な血清データの活用を可能にし、検体収集の効率化を実現した
・機械学習を用いて、MCI&認知症または白血病に対するリスク診断アルゴリズムを開発した。
・MMSE検査と同時に実施した結果、認知リスク診断は相関関係があることを確認した
具体的な成果
・血漿の前処理方法の確立
-血漿中の微量元素を安定的に測定するための前処理方法を開発
-誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いた大量サンプルの低コスト測定が可能に
・血清と血漿の測定値の相互変換式の構築
-血清と血漿の測定値間に高い相関関係を発見
-過去の血清データの活用や、血清・血漿どちらの検体も利用可能に
・MCI・認知症および白血病のリスク診断アルゴリズムの開発
-血漿中の微量金属濃度データを統計学的に解析
-従来の検査方法よりも高精度で疾患を区別可能なアルゴリズムを確立
・開発したリスク診断アルゴリズムの検証
-約3,000名のボランティアの検体を用いて検証
-MCI・認知症リスク診断アルゴリズムはMMSE検査結果と有意な相関を示す
-白血病リスク診断アルゴリズムは新規検体に対しても高い精度で判別可能
・アルツハイマー病モデルマウスを用いた研究
-特定の微量元素の不足と認知機能低下の関連を発見
-元素補給による認知機能改善傾向を確認
-特定の微量元素が認知機能に重要な役割を果たす可能性を示唆
これらの成果により、血漿中の微量金属分析を用いたMCI・認知症および血液がんのリスク診断技術が確立された。
知財出願や広報活動等の状況
・国際特許出願 PCT/JP2024/6138
-名称: 認知症リスク評価方法及び認知症リスク評価システム
-出願日: 令和6年2月20日
-出願人: 株式会社レナテック
-発明者: 稲垣精一、岡本直幸、清水拓弥、藤本俊介、島田昌一、山本雪子
研究開発成果の利用シーン
開発した血漿中微量元素濃度測定技術により、血漿中の微量元素を大量の検体を安定的に測定することが可能となり、血清・血漿どちらの検体も利用可能になった。また、この技術の応用として血清中の複数の微量元素濃度からMIC・認知症リスクを診断するアルゴリズムや白血病リスクを診断するアルゴリズムを開発した。開発したリスク診断アルゴリズムは、採血のみという低侵襲な方法でありながら、高い特異度・感度を有している。また、約3,000名の一般ボランティアを募っての検証でも高い検査性能を示した。
開発した認知症リスク診断アルゴリズムは客観的な指標での評価が可能であり、現行のMMSE検査とも相関があることから、MCIや認知症のスクリーニング検査としての医療機関での活用が可能である。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
メタロバランス・認知リスク検査(MB-MCI)として事業化し、2024年9月から検査を開始した。
検査価格は18,000円(税別)で全国の提携医療機関に提供している。
提携可能な製品・サービス内容
試験・分析・評価、共同研究・共同開発、受託分析
製品・サービスのPRポイント
・採血のみでMCI・認知症のリスク評価が可能
・従来のMRIやPET検査、専門医による認知機能検査と比べ、時間と費用を大幅に削減
・多くの人が気軽に受検可能
・約3,000人規模のボランティアによる検証で高精度を確認
・MCIリスク検査(MB-MCI)のD判定の陽性的中率は88%
・MCI・認知症を高い精度で区別可能
・MCIの早期発見により、認知症への進行抑制の可能性がある
今後の実用化・事業化の見通し
2024年9月から事業化し、初年度は1万件の検査実施を目指している。販売ルートとしては、既存のメタロバランスがんリスク検査(MB-C)の販売ネットワーク(全国約150件の提携医療施設、2024年9月末時点)を活用する。また、物忘れ外来や認知症外来の医療機関との新規契約推進、NTTプレシジョンメディシン株式会社との提携も進めている。NTT関連会社の社員・家族70万人を対象とした展開も期待される。
65歳以上のMCI患者は2020年時点で500万~600万人と推定され、年間10%程度が認知症に移行するリスクがあるため、市場ニーズと緊急性は高いと考えている。
実用化・事業化にあたっての課題
事業化後の課題としてはMCIリスク検査の普及に伴う対応策の確立である。検査の普及により、受検者の10%以上がMCIと判定される可能性があり、これらの人々に対する効果的な対応が必要となっている。
具体的には、効果的なMCI回復トレーニング方法の開発と普及が急務である。この課題に対応するため、研究チームは大学等の研究機関と共同研究を行っているが、現状では、MCI検査の普及が先行すると予想されるため、短期的な対応策も計画されている。具体的には、各地の物忘れ外来や認知症外来の調査を行い、MCI判定を受けた人々への適切な紹介システムを構築する予定である。
事業化に向けた提携や連携の希望
他疾患への応用や疾患検体の蓄積のため、保存検体を所有している大学や医療機関との共同研究を希望。またMCIの進行抑制のための非薬物療法の効果測定の指標として活用できるか研究をしたいため、集団の追跡研究や介入研究をしている大学等との研究を希望。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社レナテック 開発研究部、ヘルスケア分析センター |
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事業管理機関 | 公益財団法人木原記念横浜生命科学振興財団 |
研究等実施機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪精神医療センター こころの科学リサーチセンター 島田昌一、中村雪子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター 藤重夫、長尾卓也 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社レナテック(法人番号:1021001021577) |
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事業内容 | メタロ・バランス検査(がんリスク・認知リスク)、光触媒除菌脱臭機器の設計・施工・保守管理・レンタル |
社員数 | 20 名 |
本社所在地 | 〒259-1114 神奈川県伊勢原市高森4-19-15 |
ホームページ | https://www.renatech.net/ |
連絡先窓口 | 研究開発部 清水拓弥 |
メールアドレス | shimizu@renatech.net |
電話番号 | 0463-92-6114 |
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