測定計測
【世界初】非侵襲・持続的に血中乳酸濃度の測定を可能にする画期的な急性期向け医療機器開発プロジェクト
東京都
株式会社フジタ医科器械
2021年2月15日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 光を用いた非侵襲的な乳酸測定装置の開発 |
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基盤技術分野 | 測定計測 |
対象となる産業分野 | 医療・健康・介護 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、デザイン性・意匠性の向上 |
キーワード | 医療機器、低侵襲医療、乳酸測定、敗血症、解糖系 |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中 |
事業実施年度 | 平成29年度~令和1年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
現在、身体重症度の判断は、採血した血液を分析し血液中の各種成分分析データを基に判断している。採血時に身体的な侵襲がある上に針痛を与える。測定の度に採血を必要とする為に、連続的な測定が出来ない。ラクテート(体内乳酸)を非侵襲的に検出・測定及び連続的変化を捉える事で、患者の身体状況の変化を迅速に捉え、治療と対応が可能となる。また、スポーツ医学の分野での乳酸測定においても、非侵襲的測定は大変有用である。
開発した技術のポイント
(1)光を用いた非侵襲血液計測ユニットの開発
・レーザ光源の開発
・光学フィルタの開発
・クリアな信号を得るための検出技術の開発
・乳酸の検出波長に合わせた低出力LEDアレイの開発
(2)乳酸・ピルビン酸の選択検出技術の開発
・微弱信号の選択的な検出と増幅技術の確立
・検出の信号処理法(多変量解析など)の確立
・生体模擬基準器(生体光学ファントム)の開発
(3)乳酸測定試作装置開発
・スポーツ医学向けおよび医療機器向け乳酸測定装置の試作器開発
具体的な成果
(1)光を用いた非侵襲血液計測ユニットの開発
高出力のレーザ光源を開発(1000~2000nm,平均出力3W以上)。広帯域赤外線透過試験では4種類のバンドパスフィルタを用い、フィルタによって適切な波長を選択可能。医療機器に適用するため波長域を300mW級まで下げた低出力光源を開発。
レーザ光源で開発した光源部と光学フィルタ開発で開発したフィルターを組み合わせることで、クリアな信号の検出が可能となった。
(2)乳酸・ピルビン酸の選択検出技術の開発
人体に対して害のないレーザ光出力乳酸測定を行うことが困難な「ヘテロダイン法」ではなく、光源を高出力化し、検出側も工夫して散乱信号を検出できるような明るい光学系を挿入。これにより、乳酸信号を検出できる目標を達成。より低出力化を目指したLEDアレイの開発も成功した。
(3)乳酸測定試作装置開発
「(2)乳酸・ピルビン酸の選択検出技術の開発」における乳酸およびピルビン酸を疑似血液およびヒトの血清中でも検出できるかを試験し、スペクトル分離法を駆使することで検出できることを示した。
知財出願や広報活動等の状況
レーザー装置はすでに特許出願し、公開中。
医療機器測定装置としての機器やアルゴリズムなども現在特許出願準備中。
研究開発成果の利用シーン
光を用いた「採血を必要とせず・体を傷つけない」非侵襲的乳酸測定機器の開発により、簡易かつ連続で血中乳酸濃度を測定可能である。
超急性期における患者の血中乳酸値は健常者の20倍以上となり一定数数値以下に抑え込むことが患者の生命予後に対する急性期医療の治療指標のゴールデンスタンダードとなっている。
乳酸は重症外傷、敗血症、集中治療下にある患者の重症度・予後とよく相関し、病態および治療効果を反映する極めて重要な物質である。
患者状態が時々刻々変化する救急・集中治療においては、そのリアルタイムな生体状況の把握を非侵襲的かつ経時的に医療従事者に伝える医療機器は皆無である。従来の採決による乳酸測定は「必要な時に可及的速やかに採血し測定結果を参考にする」という病態、病状から乳酸測定の必要性を読み取っていた。本開発品は生体内の血中乳酸値と経時的な測定が可能になるため、必要な時にアラートで警鐘を鳴らすなどの機能を持つことで患者の病態の変化を見逃さない。
こうした画期的な医療機器が全身管理の必要な急性期医療にはこのような測定機器が強く求められる。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
レーザ装置はすでに特許出願、公開中。
可能性試験を行った光源光学系は波長選択、フィルタ選択、検出系の構築など、開発が大きく進展した。
NDA をいち早く締結し、事業化に向けて製品開発向け公的資金を活用し現在開発の真っ最中である。
提携可能な製品・サービス内容
製品製造、試験・分析・評価
製品・サービスのPRポイント
前述の通り、乳酸は重症外傷、敗血症、集中治療下にある患者の重症度・予後とよく相関し、病態および治療効果を反映する極めて重要な物質である。
乳酸を非侵襲的かつ経時的に測定できることは極めて重要な医療機器開発に取り組むことになり、変化のタイミングを逃さないといった側面からは治療に対する対応の遅れなどによる患者予後に極めて多大な影響を与えると考える。
さらに重要なことは、血中の乳酸濃度のみならず血中ピルビン酸濃度の測定も模索していることにある。ピルビン酸は急性期病棟に設置している血液ガス分析装置の測定項目にはどのメーカーにもなく、生化学分析や委託業者などに分析と測定結果を求める為、乳酸との一機的な濃度比較ができていない等の背景があった。
乳酸とピルビン酸の生化学的位置づけは、全身の酸素供給が極端に低下することからピルビン酸が乳酸へと変化する。糖がエネルギーとして体に代謝される解糖系と呼ばれる過程で、ピルビン酸が乳酸に変化すると糖がエネルギーとして変化されないことから、乳酸とピルビン酸の血中濃度費は非常に重要な指標であり、一般外科から超急性期医療まで必要とされている。
今後の実用化・事業化の見通し
研究成果を実用段階に推進すべく、新たな試作、製品開発のための資金調達を行った。
サポイン時の技術的なアカデミアとのコンソーシアムはそのまま継承し、医学系アカデミアは日本救急医学会理事を迎え、新たな指標や実臨床に耐えうる仕様に変更とした。
また、新たな特許項目を見出し、追加の特許並びに意匠や商標といった知的財産全般の取得も考慮している。さらに、本製品に対する需要はは全世界がターゲットとなるため海外輸出も見据えた規格の対応や価格帯にも対応できる仕様を標準とした。
2021年内に製品製造を完了し、薬事対応のための各種試験などを2021年、販売を2022年初頭と設定した。
特許の各国出願が整備されていない為、展示会や世界各国とのwebミーティングなどにはまだ開示できない段階であるが、従来から模索している海外販路に関しては従来のチャネルに加え経産省やJETRO、中小機構など各行政の施策に参画し、販路獲得に翻弄している。
実用化・事業化にあたっての課題
非侵襲的乳酸測定装置に対し日本をはじめ世界各国でのヒアリング調査についてまとめたところ、製品仕様の側面と医療機器レギュレーション(薬事対応)に対し課題があった。
【製品仕様に対して】
・血中乳酸濃度に加え血中ピルビン酸濃度の表示
・濃度表示の桁数
・救急車、ドクターヘリ内での使用
・重症患者の持続モニタリング
・センサーの価格帯と単回使用の模索
・救急外来での重症度評価
【医療機器レギュレーション】
・海外規格の更新に伴う製品仕様の設計変更
・対応電圧による回路変更
販売戦略は、コンソーシアムの先生方の協力を得て学会発表を行い、先生方に対する認知度を上げる活動を行なう予定。
また、販売活動は弊社の販売網と全国にある代理店に協力を依頼し、販売を行なう予定である。
事業化に向けた提携や連携の希望
医療機器として、海外販路を模索する場合当社がすべての販売管理や修理、薬事対応など盲亜することは不可能である為、世界各国の医療機器メーカーとの協業。
さらに医療機器として有効性、安全性、再現性が担保された暁には、スポーツ科学分野への横断的な転嫁も模索している為、スポーツ科学のアカデミアやスポーツメーカーとの協業なども検討したい。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社フジタ医科器械 |
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事業管理機関 | 株式会社フジタ医科器械 |
研究等実施機関 | 学校法人帝京大学 理工学部情報電子工学 国立大学法人宇都宮大学 工学部基板工学科情報電子オプティックコース 農学部応用生命科学科バイオサイエンスセンター 国立大学法人千葉大学 医学部薬理学 学校法人獨協学園獨協医科大学 医学部薬理学講座 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社フジタ医科器械(法人番号:9010001006763) |
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事業内容 | 業務用機械器具製造業 |
社員数 | 64 名 |
本社所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷3-6-1 |
ホームページ | http://www.fujitaika.co.jp |
連絡先窓口 | 株式会社フジタ医科器械 代表取締役 前多 宏信 |
メールアドレス | h_maeda@fujitaika.co.jp |
電話番号 | 03-3815-8810 |
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