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測定計測

超ワイドギャップ半導体・6G先進材料の超高周波応答検査のためのテラヘルツ分光システムの高度化開発

山梨県

日邦プレシジョン株式会社

2025年1月10日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 超ワイドギャップ半導体・6G先進材料の超高周波応答検査のためのテラヘルツ分光システムの高度化開発
基盤技術分野 測定計測
対象となる産業分野 自動車、情報通信、スマート家電、半導体、エレクトロニクス
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高性能化(精度向上)
キーワード ワイドギャップ半導体、パワーデバイス、電気特性、6G、誘電率
事業化状況 実用化に成功し事業化間近
事業実施年度 令和3年度~令和5年度

プロジェクトの詳細

事業概要

テラヘルツ時間領域分光法の基盤技術開発および高度化開発とその技術を基盤としたテラヘルツエリプソメトリを用いた半導体評価装置の開発に取り組んだ。具体的には、異方性材料評価用検査装置、高周波数応答検査装置、インライン型検査装置の3種類の開発を目指した。測定精度の向上、信頼性向上、評価効率の向上、2次元マッピング測定対応、ネットワーク接続対応などの課題に取り組み、目標とした装置開発に成功した。これにより、炭化シリコン、窒化ガリウム、酸化ガリウムなどの次世代パワー半導体材料の電気特性およびエピ膜の膜厚を非破壊・非接触で評価が可能になり、製造現場で評価可能なインライン装置の試作機が完成した。6G材料の求める周波数帯域での複素誘電率計測が可能となった。

開発した技術のポイント

・テラヘルツ波を用いた非接触・非破壊キャリア濃度測定技術を確立した。これにより、水銀プローブを用いたCV測定のような試料の汚染を気にせず、効率的な評価が可能となった。
・酸化ガリウムなどの異方性材料評価に対応した解析手法を確立した。特に、透過測定による酸化ガリウムの異方性評価に成功した。
・遅延機構の検討、レーザーの安定性評価、アンテナ素子の改良などにより、測定時間の短縮と高精度化を実現した。ダイナミックレンジを2桁改善し、信号対雑音比を向上させた。これにより、6G用材料を対象とした50 GHz以上の複素誘電率の計測に成功した。
・開発技術をインライン検査装置に実装し、工場内ネットワークに接続可能な半導体製造工程に適した検査システムを構築した。

具体的な成果

・測定精度の向上
-低周波数限界0.7 THz以下、高濃度限界1.0E19 cm-3を達成
-低濃度限界は10の15乗台の評価を達成
・信頼性向上
-標準偏差を平均値の1%程度に向上
・評価の効率性向上
-酸化ガリウムの透過測定による異方性評価に成功
-エリプソメトリによる高濃度窒化ガリウムと異方性酸化ガリウムの評価に成功
・2次元マッピング測定対応
-透過測定システムでSUICAの透過画像取得に成功
-エリプソメトリシステムで炭化シリコン基板の面内分布可視化に成功
・ネットワーク接続対応
-インライン用システムを構築

副次的成果として、大手装置メーカーからの受注獲得、海外展開の可能性、多機能検査装置への展開可能性が挙げられる。今後の課題は測定時間の短縮と精度向上であり、これらの克服により非接触・非破壊の面内分布測定装置の実現を目指す。

知財出願や広報活動等の状況

・測定領域の拡張に成功、一部成果を論文発表
-V. C. Agulto, T. Iwamoto, M. Nakajima et al., Sci Rep 11, 18129 (2021).
・評価の効率性向上への対応 ・異方性結晶であるGa2O3, ZnOにおいて キャリア密度、複素屈折率スペクトルの評価に成功
-T. Iwamoto, V. C. Agulto, M. Nakajima et al., Jpn. J. Appl. Phys. 62.SF (2023) SF1011.
-Z. Zhao, V. C. Agulto, T. Iwamoto, M. Nakajima et al., Opt. Mat.X 24(2024) 100352.

研究開発成果の利用シーン

研究社が開発したテラヘルツ分光システムは、以下のシーンでの利用が期待される。
・半導体製造工程における検査
-非接触・非破壊でキャリア濃度・移動度・抵抗率および膜厚を高精度測定
-炭化シリコン、窒化ガリウム、酸化ガリウムなどの化合物半導体評価に対応
-パワー半導体デバイスや6G向け先進材料の品質管理に貢献
・ウエハ全量検査
-非接触・非破壊測定により全ウエハ検査が可能
-測定時間短縮と高精度化により実現性が向上
・研究開発
-新規パワー半導体材料開発の効率化
-6G材料の誘電率や屈折率の高精度測定
・多機能検査装置への展開
-キャリア濃度、膜厚測定に加え、表面形状など複数項目の測定が可能

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

装置メーカーからの受注を獲得し、水銀プローブ計測の代替装置として期待されている。来年度に2台、再来年度に5台の販売計画が立てられており、当初予定より1年前倒しでの展開となる見込みである。海外展開も視野に入れており、非接触・非破壊の電気特性評価装置として他の材料への応用も期待されている。さらに、表面形状計測機能を追加した多機能検査装置への発展可能性も検討されている。ただし、事業化に向けては測定時間の短縮と精度向上、データ解析手法の改善が課題となっている。これらの課題を克服することで、より広範な分野への展開や市場競争力の強化が見込まれる。

提携可能な製品・サービス内容

製品製造、試験・分析・評価、共同研究・共同開発

製品・サービスのPRポイント

開発したテラヘルツ波を用いた半導体評価システムは、非接触・非破壊検査によるパワー半導体評価を実現した革新的な製品である。水銀プローブによる汚染やダメージの無い高精度な電気特性評価を可能にした。炭化シリコンや窒化ガリウム、酸化ガリウムなど異方性を持つ次世代材料にも対応し、独自技術により正確な電気特性および膜厚の評価を行える。高濃度キャリア濃度測定も実現し、幅広い試料に対応可能である。
また、インライン型検査装置として設計されており、半導体製造工程への組み込みが容易で、自動搬送モジュールによりウエハの全品検査を自動化できる。これにより、時間短縮とコスト削減を実現した。
さらに、6G通信に必要なテラヘルツ帯材料の評価にも応用可能で、次世代通信技術開発にも貢献する。将来的には表面形状計測など機能を拡張し、多機能検査装置への進化が期待される。これらの特長により、幅広い顧客層のニーズに応える製品として期待されている。

今後の実用化・事業化の見通し

テラヘルツ分光システムを用いた半導体検査装置の実用化・事業化の見通しは良好である。装置メーカーからの依頼を受け、水銀プローブに代わる新たな検査装置の構築が進行中である。
水俣条約による水銀規制の強化に伴い、非接触・非破壊で高精度な測定が可能な本技術への需要は今後さらに高まると予想される。また、パワー半導体評価だけでなく、膜厚検査装置としても導入された。また、6G通信に不可欠なテラヘルツ帯材料の評価など、応用範囲の拡大も期待されている。
さらに、データ解析手法の改善により、表面形状計測などの機能を追加した多機能検査装置への発展可能性もある。これらの要因から、本技術の実用化・事業化の見通しは非常に有望であり、半導体産業における重要な役割を果たすことが期待される。

実用化・事業化にあたっての課題

測定時間の短縮と精度向上が求められる。現状ではウエハ全体の検査に時間がかかるため、面内分布測定の実用化に向けては、より高速かつ高精度な測定技術の開発が必要となる。
次に、データ解析手法の改善が課題である。表面形状や多層膜の評価など、より多くの情報を取得するためには、高度なデータ解析技術の開発が不可欠である。
さらに、テラヘルツ分光システム市場における競争の激化が予想される。世界中で研究開発が活発化しており、競争力を維持するためには継続的な技術革新と市場ニーズに合わせた製品開発が重要となる。
これらの課題を克服することで、本技術はパワー半導体デバイスや6G通信などの分野で大きな貢献を果たすことが期待される。研究社には、これらの課題に対する戦略的な取り組みが求められる。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 日邦プレシジョン株式会社 テラヘルツプロジェクト リーダー
事業管理機関 公益財団法人やまなし産業支援機構 中小企業振興部 経営支援課
国立大学法人大阪大学 国立大学法人大阪大学 レーザー科学研究所
アドバイザー 国立大学法人 東京農工大学
旭化成株式会社
株式会社東レリサーチセンター
株式会社ダイセル

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 日邦プレシジョン株式会社(法人番号:1090001011160)
事業内容 半導体及び液晶パネル製造装置、検査装置の設計・製造
社員数 177 名
本社所在地 〒407-0175 山梨県韮崎市穂坂町宮久保734
ホームページ https://www.pnp.co.jp/
連絡先窓口 岩本敏志
メールアドレス toshiyuki.iwamoto@pnp.cp.jp
電話番号 0521-22-8998