バイオ
ヒト脂質代謝機能を持つ新鮮肝細胞をオンデマンドに供給する
広島県
株式会社フェニックスバイオ
2023年2月4日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 脂質代謝研究素材として高脂質代謝機能と高利便性を備えるヒト肝細胞の開発 |
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基盤技術分野 | バイオ |
対象となる産業分野 | 医療・健康・介護 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(精度向上) |
キーワード | 脂質代謝、ヒト肝細胞、脂質異常症、医薬品、機能性食品 |
事業化状況 | 事業化に成功 |
事業実施年度 | 平成30年度~令和1年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
生活習慣病は現代社会の大きな問題であり、その予防と治療を目的として、脂質を標的とする機能性食品や創薬などの研究開発が行われている。その研究現場では、高い脂質代謝機能と高い利便性を備えた研究素材に対して大きなニーズがある。本研究開発では、脂質の研究領域に求められているニーズを備える新しい研究用ヒト肝細胞を開発し、脂質研究を加速させ、生活習慣病による健康や医療費の問題解決に貢献することを目指す。
開発した技術のポイント
脂質代謝機能を維持しながらPXB-cells LAを安定的に供給する培養方法が確立された。また、PXB-cells LAは従来素材と異なり、ヒト本来の脂質代謝機能とほぼ同等の性質を有しながら、医薬品/食品分野における各種化学物質の脂質代謝への影響を評価可能な素材であることが証明された。
具体的な成果
・PXBマウスからのPXB-cells LAの取り出し方法の確立
-PXBマウスからPXB-cells LAを回収する際の、週齢、細胞調整温度、灌流液における適切な条件を確立した。
・PXB-cells LAの取り扱い方法の確立
-PXB-cells LAの脂質代謝能を最大限に引き出すための条件を確立した。
・PXB-cells LAの脂質代謝機能の確認
-PXB-cells LAの脂質代謝能を最大限に引き出すための播種速度、培養期間、及び培地条件を確立した。
-細胞輸送が脂質代謝能に影響を及ぼさないことを確認した。
-PXB-cells LAが、従来素材と比較して高度な脂質代謝能を有することを遺伝子/タンパクレベルから確認した。
・PXB-cells LAの脂質合成・分解機能の確認
-PXB-cells LAの医薬品や食品由来成分に対する脂質代謝能への反応が、過去の報告例とほぼ同等であることを確認した。
・ヒト由来素材との比較
-PXB-cells LAの分泌脂質成分が、ヒト血清やヒト非凍結幹細胞と全く同じ構成を示す事を確認した。
知財出願や広報活動等の状況
・学術論文での発表
以下の学術誌で成果が掲載された。PXB-cells LAの特徴や従来素材と比較した利点について詳細に解説することで、製品認知度の向上が期待できる。
学術誌1:Biomedical Research Tokyo
タイトル:Lipoprotein profile and lipid metabolism of PXB-cells🄬, human normal hepatocytes from liver-humanized mice: proposal of novel in vitro system for screening anti-lipidemic drugs
掲載:Biomedical Research Tokyo Vol.41, No.1, p.33-42, 2020
学術誌2:Journal of Biological Macromolecules
タイトル:PXB-cells, fresh primary hepatocytes from humanized mouse livers, exhibit nonalcoholic fatty liver like properties, including large very low density lipoprotein
掲載:Journal of Biological Macromol Vol. 21 , No. 1, p51-52, 2021
・学術会議での発表
-第7回International Conference on Food Factors(国際フードファクター会議:神戸)令和元年12月1~5日
-EASL 2020 International Liver Congress(欧州肝臓学会議:オンライン)令和2年8月25~28日
-第74回日本栄養・食糧学会大会(オンライン)令和2年9月20日
-第27回HAB(Human Animal Bridging)研究機構学術年会(東京)令和2年9月3~5日
-JAACT 2020 国際会議(日本動物細胞工学会:オンライン)令和2年11月17~20日
・特許
サポイン事業研究により得られた新規知見について、令和元年度内の国内/国際特許申請を完了している。
・販促準備
PXB-cells LAの取り扱いマニュアルについて、社内・社外用を作成するとともに、パンフレット、リーフレット、及びホームページでの掲載準備を進めている。
研究開発成果の利用シーン
今回開発した研究用ヒト肝細胞であるPXB-cells LAは高い脂質代謝機能と高い利便性を備えているため、脂質を標的とする機能性食品や創薬などの研究素材として大いに活用できる。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
令和3年度における販売に向け,最終調整を行っている.
提携可能な製品・サービス内容
製品製造、試験・分析・評価
製品・サービスのPRポイント
今回開発した研究用ヒト肝細胞であるPXB-cells LAは高い脂質代謝機能と高い利便性を備えているため、脂質を標的とする機能性食品や創薬などの研究素材として大いに活用できる。PXB-cells LAの利用により脂質研究が加速し、生活習慣病による健康や医療費の問題解決が進むと考えられる。
今後の実用化・事業化の見通し
PXB-cells LAは、令和3年度中に販売開始を予定している。販売開始初期は、学術活動においてコンタクトを持ったエンドユーザーに対して優先的に商品紹介を行う。また、株式会社フェニックスバイオの既存のエンドユーザーに対しても商品紹介を進めていく。エンドユーザーの確保については、上記の個別対応に加え、販売代理店候補とも交渉を進めている。これらの活動によるエンドユーザーの対象は、国内外の食品系企業・研究者、及び製薬系企業・研究者である。
次に、PXB-cells LAを利用する脂質代謝分析業務の実施については、先ず株式会社フェニックスバイオにおいて細胞培養及び試料採取の実施体制確立を進めており、これによりエンドユーザーからのクレームに対応できる体制とする。並行してこの商品に興味を持つ受託試験実施機関との交渉を進めており、当該受託試験実施機関では既に脂質代謝を研究しているエンドユーザーを持っていることから、営業と細胞培養及び試料採取の全てが完結できる見込みである。
PXB-cells LAの供給体制は、現在は株式会社フェニックスバイオの本社施設に加え、カナダ エドモントン州のKMT Hepatech社(子会社)への移管を予定している。
最後に、PXB-cells LAの有用性・商品性を向上させるために、PXB-cells LAと組み合わせる脂質分析方法の発展・充実も重要である。そのため、当事業に参加いただいた秋田県総合食品研究センターや、当事業において脂質分析を委託したスカイライト・バイオテック株式会社との連携を今後も維持し、分析方法の発展・充実に努める。
実用化・事業化にあたっての課題
・PXBマウスの社内研究において、移植するヒト肝細胞ドナーによって、PXBマウスの肝機能が変化することが確認されている。今後、異なるドナー由来のPXB-cell LAについて、脂質代謝機能を評価するとともに、解析を進める。
・PXB-cells LAの化学物質への影響に関して、変化が確認されなかった化学物質(エボロクマブ)について、化学物質のメカニズムをより理解することで試験方法を見直し、再解析を進める。
・2年間の研究で得られたマイクロアレイデータについて、一部の解析は完了したが、データ量が膨大であるため、PXB-cells LAの脂質代謝機能の理解を深めるために、さらなる解析を進める。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社フェニックスバイオ 受託試験部 |
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事業管理機関 | 公益財団法人ひろしま産業振興機構 |
研究等実施機関 | 秋田県総合食品研究センター |
アドバイザー | 武田薬品工業株式会社 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社フェニックスバイオ(法人番号:3240001023089) |
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事業内容 | 医薬品開発等の受託試験サービス |
社員数 | 44 名 |
本社所在地 | 〒739-0046 広島県東広島市鏡山3-4-1 |
ホームページ | https://phoenixbio.co.jp/ |
連絡先窓口 | 株式会社フェニックスバイオ 受託試験部 加国 雅和 |
メールアドレス | masakazu.kakuni@phoenixbio.co.jp |
電話番号 | 082-431-0016 |
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