接合・実装
軽量化と疲労強度・耐衝撃力を備えた新難燃性マグネシウム合金による車両用腰掛フレームの開発、実用化
大阪府
株式会社ノチダ
2022年1月28日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 輸送機器の軽量化に資する高強度新難燃性マグネシウム合金溶加材を用いたAI制御溶接技術による高速鉄道車両用腰掛フレームの開発 |
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基盤技術分野 | 接合・実装 |
対象となる産業分野 | 環境・エネルギー、航空・宇宙、自動車、工作機械 |
産業分野でのニーズ対応 | 高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(小型化・軽量化)、環境配慮 |
キーワード | マグネシウム合金、難燃性、溶接、溶加材、輸送機器 |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中 |
事業実施年度 | 平成30年度~令和2年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
輸送機器のさらなる高速化が望まれる中、同時に省エネルギー化ひいてはCO2排出量削減が求められ車両の軽量化が必須かつ急務である。高速鉄道車両用腰掛フレームを対象に現在使われているアルミニウム合金の代替として溶加材は世界初Ga入り新難燃性マグネシウム合金、母材は高速押出型新難燃性マグネシウム合金、溶接プロセスは入熱制御、AI技術を開発し、軽量化と疲労強度・耐衝撃力を備えた腰掛フレームの実用化を図る。
開発した技術のポイント
研究目標を達成するために解決しなければならない課題ごとに対応させたサブテーマを設定し、それぞれの研究目標を下記に示す。
【1】新難燃性Mg合金溶接材(溶加材および部材)の開発
【1-1】世界初Ga入り新難燃性Mg合金溶加材の開発
【1-2】高速押出型新難燃性Mg合金部材の開発
【1-3】新難燃性Mg合金溶接材の基本溶接技術の開発
【1-4】新難燃性Mg 合金溶接材の耐衝撃値とじん性値の取得
【2】AI制御溶接技術の開発
【2-1】新難燃性Mg合金製腰掛フレーム構造最適化の設計
【2-2】新難燃性Mg合金製腰掛フレームの溶接技術の開発
【2-3】溶接実証システムでAI制御溶接技術を研究開発
【3】溶接の実用検査技術の研究開発
【3-1】溶接画像のリアルタイム撮影と溶接欠陥の計測技術開発
【3-2】溶接状態が強度に与える影響のAI解析技術の構築
【3-3】新難燃性Mg合金製腰掛フレーム強度及び耐久性の評価
具体的な成果
【1】最適なGa入り新難燃性Mg合金溶加材の成分量決定。引張試験は、最大継手強度が目標値である母材強度90%の240.3MPaを超える強度を示した。
高速押出型新難燃性Mg合金製腰掛フレーム部材を押出し加工し、中実形材、中空形材を試作。形材外形の許容差±0.50mm以内、形材肉厚の許容差±15%以内を実現。
Ga入り新難燃性Mg合金溶加材を用いて溶接継手を製作、引張試験等の評価により適正な溶接条件範囲の決定。4万回程度の低サイクル数領域で疲労特性向上因子を明らかにし、小型試験片で疲労試験目標値達成。大型試験片も目標値とほぼ同等の疲労特性を達成。
Ga入り新難燃性Mg合金溶加材を用いてMIG溶接した溶接継手の耐衝撃性とじん性値を取得。
【2】Aℓ合金製腰掛フレーム一人当たりの座席重量を新難燃性Mg合金製に置換することによりAℓ合金と同等の剛性を備えて6.7㎏、23%軽量化を達成。
新難燃性Mg合金の溶接条件適正範囲を明確化。
赤外線サーモグラフィーが計測可能な溶接近傍部位置において、溶接適正条件下で500±20℃となることを確認。
【3】新難燃性Mg合金溶接時の電流、電圧、ガス流量、画像、温度、音の各データと溶接内部欠陥には相関関係の無いことを確認。
画像データが溶け落ちの検知に有効であること 、 レーザ3次元形状測定器により、 Aℓ合金外観試験の合否判定基準に記載されている欠陥の種類のうち、人による溶接外観検査の一部をレーザ 3 次元形状測定器に置き換えられる可能性を見出した。
溶け落ちを検知するAI解析技術を構築。アーク音によりビードの乱れを検知するAI解析技術の構築が可能であることを見出した。
信頼性試験において、座席回転繰り返し試験で、背ずりを除く、 脚台、台枠、座面 の構成部品が 40,000回以上の耐久要求をクリア。座面荷重試験では、脚台、台枠、背ずり、座面 すべての構成部品が、一席当たり100㎏以上の耐久要求をクリア。事業終了後の補完研究において、補強を追加した背ずりを改めて製作し、座席回転繰り返し試験を実施した結果、背ずり、 脚台、台枠、座面 の全ての構成部品が 40,000回以上の耐久要求をクリアした。
知財出願や広報活動等の状況
2021年10月6日~8日インテックス大阪にて開催された第24回関西機械技術要素展に、関西サポインビジネス推進ネットワークの一員として「新難燃性Mg合金製高速鉄道車両用腰掛フレーム」を出展した。また、同年12月8日~10日東京ビッグサイトでの中小企業テクノロジー展 戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)成果展示・商談会へも出展した。
研究開発成果の利用シーン
輸送機器等の軽量化によるCO₂排出量の削減。具体的には、航空機、船舶、バス等の輸送機器、軽量化を目指す溶接構造体に使用。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
高速鉄道車両用腰掛フレームにおいて、信頼性試験の座席回転繰り返し試験は40,000回以上の耐久要求をクリア、座面荷重試験は一席当たり100㎏以上の耐久要求をクリア。木ノ本伸線は、マグネシウム溶接技術の高度化はマグネシウム構造体製作の基盤技術であり今回を含めて諸条件の蓄積が課題の解決につながると考えており、高信頼性の接合を実現することに注力している。Mg合金の溶接技術は、JISでも規定されておらず、知見や情報が公開されていない。基準というものが無い状態であり、ノチダは、今回の補助事業で得た知見を基にMg合金の溶接技術の確立を図る。
提携可能な製品・サービス内容
素材・部品製造、製品製造
製品・サービスのPRポイント
研究開発成果に係る製品は、Aℓ 合金の従来品より 軽量化された高速鉄道車両用腰掛フレームであり、本事業のアドバイザーとしてご参画頂いた川下企業と今後も連携し 、Mg合金の高速鉄道車両用腰掛フレームの事業化を目指す。
今後の実用化・事業化の見通し
木ノ本伸線は、溶加材や溶接技術について、高機能金属展への出展や「Mg合金溶接・接合セミナーin Kansai」(地域中核事業中)の開催でニーズの発掘に努めている
ノチダは、高速鉄道車両だけではなく、航空機や船舶、バスなど軽量化メリットが大きい輸送機器をはじめ、軽量化を目指す溶接構造体製造メーカーへのアプローチを検討していく。高速鉄道車両用腰掛フレームを出展した第24回関西機械技術要素展では、ブースを訪問された方々からMg合金製溶接構造体実用化の可能性を評価された。軽量の大型構造体を目の当たりにすることで、具体的な案件をイメージしやすくなるからと考えており、このような大型構造体の紹介機会を増やすことを検討している。
実用化・事業化にあたっての課題
ものづくり基盤技術の高度化を実現する際の課題は、原材料が高価であることがあげられる。現在の主要鋼材である鉄やAℓ合金は、各種業界に広く普及しているが、Mg合金の普及は一部に止まるため、その市況価格は高価になっている。Mg合金製溶接構造体の事業化には、個々の案件に対し、明確なコストメリットの調査、提示をする必要がある。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社ノチダ 木ノ本伸線株式会社 |
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事業管理機関 | 一般財団法人大阪科学技術センター |
研究等実施機関 | 公立大学法人大阪(大阪府立大学) 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
アドバイザー | 川重車両コンポ株式会社 東日本旅客鉄道株式会社 大阪大学名誉教授 中田一博 国立研究開発法人産業技術総合研究所 三協立山株式会社 三協マテリアル社 権田金属工業株式会社 奥野製薬工業株式会社 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社ノチダ(法人番号:6122001019695) |
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事業内容 | 鉄・アルミ・ステンレスなどの金属加工(プレス・板金・溶接・スポット溶接) |
社員数 | 97 名 |
本社所在地 | 〒581-0092 大阪府八尾市老原9丁目30番地 |
ホームページ | http://www.nochida.co.jp/ |
連絡先窓口 | 株式会社ノチダ 取締役部長 三輪 容照 |
メールアドレス | ncd12000@nochida.co.jp |
電話番号 | 072-994-1921 |
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