接合・実装
板間隙があっても加工可能な高速・高強度レーザー接合技術
広島県
デルタ工業株式会社
2023年2月13日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 自動車用シート構造部材の軽量化と高生産性を実現する新レーザー溶接システムの研究開発 |
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基盤技術分野 | 接合・実装 |
対象となる産業分野 | 自動車、建築物・構造物 |
産業分野でのニーズ対応 | 高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、高性能化(小型化・軽量化)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、高効率化(人件費削減)、高効率化(生産性増加)、低コスト化 |
キーワード | レーザー、接合 |
事業化状況 | 事業化に成功 |
事業実施年度 | 令和1年度~令和3年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
レーザー溶接法は高速で連続の線溶接でき、溶接部の照射条件を微細にデジタル制御できるなどの利点があるが、反面、薄板鋼板に適用する場合、板間隙を厳しく制御しなければ溶接が不可能であり、この付帯設備や工程が複雑になるという欠点がある。弊社は、板間隙の有無に拘わらず、線溶接可能な新レーザー溶接法を開発した。これをシート構造部材に応用し、軽量化を図るとともに、溶接工程の自動化と溶接時間半減を実現する。
開発した技術のポイント
・ドット状の溶融池を形成し、これが凝固する前に直ちに線状のレーザー照射に移行することで、線状下の隙間に溶融金属を充填する溶接方法。
・FEM解析、疲労き裂進展の可視化
・品質工学による溶接条件の検証
・品質保証規格の標準化
・溶接部の破壊現象の解明
具体的な成果
1.溶接現象の解明とプロセス条件の最適化
高速度カメラにより溶接プロセスを観察し、溶接条件を最適化した。またプロセス条件の品質に対する崖を明確化し、品質保証要件を標準化した。
2.溶接部の破壊現象の解明と接合強度の向上
考案したレーザー溶接工法の静的・疲労強度特性を調査し、FEM解析やき裂進展の可視化を行いながら、強度を向上させるための要件を明確化し、従来工法と比較し静的強度は20%向上、疲労強度は50%向上(10^6回サイクル時)させることができた。
3.量産のための溶接プロセス、品質保証プロセスの開発
量産に向けた自動溶接工程の構想・設計・実装を行い、従来工法の工程と比較して45%の工程時間短縮と17%の工程コスト低減を実現することができた。
4.新溶接法を活かした製品構造の最適化開発
研究初期のシートバックフレーム構造に対して、7%の部品軽量化且つ10%のシートバックフレーム倒れ角低減を実機試験により確認できた。
知財出願や広報活動等の状況
板の隙間厳しく制限することなく、溶接を可能にし溶接強度を向上し従来の溶接に対して溶接時間を短縮した。これにより自動車用シート部材のコスト低減を図ることを可能とした。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
2022年3月頃より量産が開始される車種に対しては、ロバスト性の検証が完了している溶接形状「Φ型形状」のタイプで量産運用を開始する予定。
プロセスモニタの精度は、現状の65%から2022年6月までに97%の目標達成を目指し挽回する予定である。
提携可能な製品・サービス内容
加工・組立・処理、製品製造、技術ライセンス
製品・サービスのPRポイント
・溶接速度が速く(0.5秒/点)従来法の溶接時間と工程スペース半減可能。
・板間隙0.7mm程度でも線溶接が可能であり、高価なクランプ設備不要。
・従来レーザー溶接を凌駕する接合強度。
・非破壊検査の可能性と全溶接部のインライン検査の可能性があり検査コストを大幅に低減できる。
・(円形状)-(線状)の組み合わせにより、種々の溶接形状の成形が可能であり、製品の剛性強度が向上。
今後の実用化・事業化の見通し
新工法を生かした製品構造の最適化開発では、実用化対象製品である自動車用シートの後突試験での挙動改善を目的とし、多目的最適化解析と実機試験の結果を活用しながら、シートバック倒れ角10%改善かつシートフレーム重量7%改善を達成できた。しかしながらまだ改善すべき点も見つかっているため、引き続き解析と実機試験を用いて開発を進めていく。
実用化・事業化にあたっての課題
現状非破壊検査プロセスの開発では検査精度が目標値の97%に対し、65%と低いため、今後の課題として継続的に改善を続ける必要がある。
直近の量産車種に織り込み出来なかった溶接形状「クロス型形状」や「軽量化フレーム構造」は、導入コストが最小限に抑えられる次の新規車種導入時に実用化できる様、確実な検証活動を実施して進めていく。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | デルタ工業株式会社 |
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事業管理機関 | 公益財団法人ひろしま産業振興機構 ものづくり革新統括センター |
研究等実施機関 | 国立大学法人広島大学 先進理工系科学研究科 広島県立総合技術研究所 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | デルタ工業株式会社(法人番号:3240001036479) |
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事業内容 | 自動車用シート、スライダー、リクライナー、シフター、ドアチェッカーの設計、製造、販売 |
社員数 | 1,250 名 |
生産拠点 | 本社工場(広島県)、山口県に2工場、海外拠点(中国、アメリカ、タイ、メキシコ)にも展開 |
本社所在地 | 〒735-8501 広島県安芸郡府中町新地1-14 |
ホームページ | https://www.deltakogyo.co.jp/ |
連絡先窓口 | デルタ工業株式会社 2生産技術部 課長 都藤智仁 |
メールアドレス | t-tsudo@deltakogyo.co.jp |
電話番号 | 082-282-8211 |
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