表面処理
フッ素フリーのアルミ冷間鍛造表面処理
大阪府
貴和化学薬品株式会社
2021年2月15日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 革新的アルミ冷間鍛造用表面処理としてフッ素フリーの粘土化法潤滑表面処理技術の開発 |
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基盤技術分野 | 表面処理 |
対象となる産業分野 | 自動車、建築物・構造物、工作機械 |
産業分野でのニーズ対応 | 環境配慮 |
キーワード | アルミニウム、冷間鍛造、潤滑処理、粘土化、フッ素フリー |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中 |
事業実施年度 | 平成29年度~令和1年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
アルミ冷間鍛造技術は、軽量化が求められる金属部品への適用拡大が見込まれながら、前工程にあたる潤滑皮膜化成処理(フッ化アルミ亜鉛処理)が足かせとなって市場が拡がらなかった。この半世紀近く変わらなかった潤滑皮膜化成処理を、愛媛大学の技術シーズ「粘土化法」を導入し、その技術を高度化することで、現有の設備のまま新しい環境負荷のないプロセスに変える技術(潤滑処理薬品)を開発する。
開発した技術のポイント
・粘土化膜の高強度化
-Ca処理を適用することで摺動回数が140回となった。
-粘土化膜付着量が4g/m2を超えた。
・粘土化膜上の金属石鹸の高密度化
-3g/m2以上の金属石鹸層が形成された。
-粘土化膜中のアルミに対する亜鉛のモル存在比が、旧粘土化法の0.33を大幅に上回る1.7となった。
-ZnがAl材表面全体に均一に分布していた。
・粘土化処理時間の短縮
-Ca処理を用いると、処理時間10分で粘土化膜が形成された。
・冷間鋳造パフォーマンスの検証
-リング圧縮試験で摩擦係数0.06を下回る条件を見出した。
-後方押出し試験でフッ化アルミ亜鉛処理と同レベルの潤滑性能を確認した。
-後方押出し試験では、粘土化膜、金属石鹸の残存率が60%以上となった。
具体的な成果
粘土化膜置換処理をNaからCaに変更し、実用化の目途を得た。
・粘土化膜の⾼強度化
-粘土化膜付着量︓0.4→4g/m2超の付着量増加を確認。
-摺動試験︓120→140回に増加。
・金属石鹸の高密度化
-⾦属⽯鹸層の膜重量︓1.2→3g/m2に増加。
-粘土化膜中の亜鉛量︓存在⽐0.4→1.7に増加。
・粘土化処理時間の短縮化
-粘土化処理時間︓数時間→10分以下に短縮。
知財出願や広報活動等の状況
学会発表:
能浦崇太,福垣内暁,北村憲彦,フッ素フリー粘土化法潤滑膜よるアルミニウム冷間鍛造潤滑剤のリング圧縮試験
第71回塑性加工連合講演会講演論文集,P5~P6(2020)
特許出願:
発明の名称 金属表面前処理剤
出願番号 特願2019-220972
研究開発成果の利用シーン
開発したアルミ冷間鍛造用の潤滑皮膜化技術は、環境負荷が少なく、排水処理や廃液処理といったコスト要因も減らすことができるものである。この技術を用いることで、アルミ冷間鋳造を自動車部品の製造に積極的に使用することが可能となる。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
本開発で得られたプロセスを顧客に売り込み中。特定顧客にてプロセスの合わせこみを実施中。
提携可能な製品・サービス内容
製品製造
製品・サービスのPRポイント
開発した薬剤を用いることで、アルミ冷間鍛造の潤滑処理から環境負荷等の阻害要因を排除することができ、同時に排水処理や廃液処理といったコスト要因も減らすことができる。これはアルミ冷間鋳造適用分野の拡大につながり、結果として、鋳造や切削といった時間とコストのかかる加工方法からの転用や、強度不足で適用できなかった部材などへのアルミ部材の採用がすすむことになる。
今回の技術は、将来の成長が予想されるアルミニウムの冷間鍛造市場のボトルネック(環境負荷)を解決し、日本発の技術を広く世界へ普及させることを可能とするものである。
今後の実用化・事業化の見通し
今計画の狙いは自動車部品市場である。自動車業界では部品の軽量化がニーズとなっており、軽量化とリサイクルとを総合的に考えるとアルミ素材が望ましい。現状のアルミ使用比率は車輌重量の約1割程度とみられているが、今後大きく伸びることが確実視されている。アルミ鍛造部品はその中でも大きな展望が予想できる分野である。
現状フッ化アルミ亜鉛処理を使用している顧客に本処理をPRし、実際の金型、材料を用いての冷間鍛造テストを実施し、課題を抽出、解決し事業化を進めていく。顧客には現行薬剤からの代替を働きかけてゆく。令和3年度から試験販売(1トン/月程度)を開始し、令和5年度には本格販売(10トン/月程度)を目指す。
実用化・事業化にあたっての課題
顧客はほとんどの場合、既にアルミ潤滑処理のプロセスを保有している。
顧客毎に異なる設備、条件に潤滑処理条件を合わせこむことが課題である。
事業化に向けた提携や連携の希望
アルミ潤滑処理を実施している企業との連携を希望。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 貴和化学薬品株式会社 |
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事業管理機関 | 一般財団法人大阪科学技術センター 技術振興部 |
研究等実施機関 | 国⽴⼤学法⼈愛媛⼤学 |
アドバイザー | 国立大学法人名古屋工業大学 教授 北村 憲彦 株式会社ワークアップアサクラ 代表取締役 朝倉 洋一 古山精機株式会社 技術部 依田 聡 ゼノー・テック株式会社 技術開発部 開発課 課長 河野正宏 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 貴和化学薬品株式会社(法人番号:2120901023531) |
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事業内容 | 各種工業薬品の販売、活性炭の販売、医薬品の販売、入替作業一式、金属表面処理剤の製造販売 |
社員数 | 70 名 |
生産拠点 | 豊中工場(大阪府)、海外(中国)にも展開 |
本社所在地 | 〒546-0062 大阪府吹田市垂水町2-20-25 |
ホームページ | https://www.kiwachem.co.jp/ |
連絡先窓口 | 貴和化学薬品株式会社 生産本部 技術部 次長 能浦 崇太 |
メールアドレス | s.noura@kiwachem.co.jp |
電話番号 | 06-6170-6320 |
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