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バイオ

キノコ菌糸(ヒラタケ)への青色LED照射によるシキミ酸の生産効率向上技術と高純度シキミ酸単離技術の開発

東京都

三栄製薬株式会社

2022年1月28日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 青色LEDを用いた高効率シキミ酸新規製法の開発と実用化技術の開発
基盤技術分野 バイオ
対象となる産業分野 医療・健康・介護、化学品製造
産業分野でのニーズ対応 高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(生産性増加)、高効率化(シキミ酸原料(トウシキミ)の中国依存からの脱却)、低コスト化
キーワード シキミ酸、青色LED、キノコ菌糸、タミフル、培養
事業化状況 実用化間近
事業実施年度 平成29年度~令和1年度

プロジェクトの詳細

事業概要

シキミ酸は、新型インフルエンザ治療薬であるタミフルの合成出発原料として、また美白有効成分として化粧品の製造配合原料等に利用されている。しかしシキミ酸はトウシキミの実から抽出し製造されるため、収量が少なく安定的な確保ができない。そこで当提案では、キノコ菌糸への青色光刺激が飛躍的にシキミ酸蓄積を引き起こす特許技術を用いて、シキミ酸生産効率を高める培養方法と、高純度シキミ酸を単離する手法を確立する(添付1参照)。

開発した技術のポイント

・シキミ酸を高含有するヒラタケ菌糸薄膜の培養方法
-液体培地を用いて暗所培養することで、ヒラタケ菌糸薄膜(厚さ4mm以下)の培養を達成した。
-得られた菌糸薄膜は青色LED刺激によって、高濃度のシキミ酸を生産した。
-暗所培養期間が短い菌糸は、生長のための活性が高く、その時点でLED照射培養に移行することで、夾雑物が少ない状態でシキミ酸を高濃度に産生することが判明した。
・ヒラタケ菌糸薄膜の⼤量培養システム
-液体培地内に撹拌分散する方法で、種菌の培養に成功した。
-菌⽷薄膜を大量培養するための培養システム(種菌の自動植菌機など)を開発した。
-菌⽷薄膜の湿重量100kg/⽉の⽣産を達成した。
・シキミ酸の精製工程
-シキミ酸抽出から精製までの一貫方法を確立した。
-限外ろ過により、抽出液中の高分子不純物、分子量5000~2万以上の除去に成功した。
-再結晶法を確立し、純度97%のシキミ酸結晶の取り出しに成功した。
-シキミ酸結晶を評価・分析した結果、人体に有害なアニサチンは認められず、安全性を確認した。

具体的な成果

・シキミ酸を高含有するヒラタケ菌糸薄膜の培養⽅法を確⽴(添付3参照)
-ヒラタケ菌糸薄膜(厚さ4mm以下)の培養技術を開発。
-菌⽷薄膜は青色LED刺激によって、高濃度のシキミ酸を⽣産。
・ヒラタケ菌糸薄膜の⼤量培養システムを構築
-菌⽷薄膜の湿重量100kg/⽉の生産を達成。(大量生産を可能とする自動植菌機を自社開発、添付4参照)
・シキミ酸の精製工程を確立(添付5参照)
-純度97%のシキミ酸結晶の取り出しに成功。
-シキミ酸結晶の評価・分析により安全性を確認済み。

キノコ菌糸薄膜の大量培養システム概要図

大量培養を可能とする自動植菌機の自社開発

知財出願や広報活動等の状況

・知的財産権
本補助事業内容のシーズとなる知的財産権の取得については、信州大学が取り組んでいる。シキミ酸製造法に関わる本基本技術は、日本、アメリカ、カナダ、中国、欧州5ヵ国で権利が成立。主要国での知的財産権は既に確保されている。

「糸状菌から有用代謝産物を生産する方法」
国際公開番号WO2013/035473(国際公開日:平成25年3月14日)(※日・米・加・中・欧州5ヵ国で権利取得)

・学術論文
2015 年にNature 姉妹誌・Scientific Reports に発表。
Kojima, M., Kimura, N. & Miura, R. Regulation of Primary Metabolic Pathways
in Oyster Mushroom Mycelia Induced by Blue Light Stimulation: Accumulation
of Shikimic Acid. Sci. Rep. 5, 8630; DOI:10.1038/srep08630 (2015).

研究開発成果の利用シーン

開発した技術では、入手が容易なキノコ類を原料としている。また短期間で、工場で安定に周年生産が可能である。このため、川下ユーザーは高品質なシキミ酸原料及び配合製品を安定的かつ安全に入手し、医薬品合成中間原料や化学品、化粧品の製造原料等として使用することができる。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

サポイン事業の成果を基に、サポイン事業終了時点の課題である、シキミ酸生産量の増大を更に目指した技術開発を進めている。
培養技術の改良、菌種の再検討、新規な抽出技術の開発、精製工程のブラッシュアップ等により、成果は表れており、今年度中のサンプル提供(実用化)を目標とし、次年度の事業化を目指す。

提携可能な製品・サービス内容

製品製造

製品・サービスのPRポイント

開発したヒラタケ菌糸由来高純度シキミ酸は、中国産の従来のシキミ酸と比べ、品質が一定して保持され、さらに長期にわたるトレーサビリティが可能なため、川下ユーザーは高品質なシキミ酸原料及び配合製品を安定的かつ安全に入手できる。これは品質保証をする上での大きなメリットである。

今後の実用化・事業化の見通し

・現在達成しているシキミ酸純度95%~97%の原料サンプルを化粧品・化学品業界に向けて提供し、評価を得た後、原料としての製品化を進めていく。並行して、自社製品に配合した製品の開発を進め、事業化を目指す。
・シキミ酸純度がより高い98%~99%の原料サンプルが提供可能となり次第、医薬品業界向けに原料サンプルを提供し、製品化に向けた活動を進める。

実用化・事業化にあたっての課題

・シキミ酸の製造量をより増大させ、事業化に向けた製造量を今後確保すること。
・シキミ酸の純度を現在の97%から更に98%まで上げるための単離・精製技術。

事業化に向けた提携や連携の希望

現在も信州大学との共同研究開発を継続中。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 三栄製薬株式会社 蓼科工場、研究開発部
事業管理機関 公益財団法人長野県テクノ財団 諏訪テクノレイクサイド地域センター
研究等実施機関 国立大学法人信州大学 農学部 特任教授 小嶋 政信、非常勤技術職員 木村 仁奈子
アドバイザー 信州大学 学術研究・産学官連携推進機構 URA室 助教 赤崎 寿樹
信州大学農学部 特任教授 桃崎 英司
国立研究開発法人水産研究・教官機構 水産大学校
岩瀬コスファ株式会社
一丸ファルコス株式会社

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 三栄製薬株式会社(法人番号:9010901004395)
事業内容 医薬品、医療器具、医薬部外品、化粧品、動物用医薬品jの製造販売
社員数 30 名
生産拠点 世田谷工場(東京都 世田谷区)及び蓼科工場(長野県 茅野市)の2拠点を保有 本サポイン事業は主に蓼科工場内にて実施
本社所在地 〒157-0061 東京都世田谷区北烏山8-13-23
ホームページ https://www.sanei-pharm.jp/
連絡先窓口 三栄製薬株式会社 代表取締役社長 藤森 博昭
メールアドレス h-fujimori@aaa-s.jp
電話番号 03-5313-3333