材料製造プロセス
ナノシート合成における各種プロセスを見直し,燃料電池,蓄電等さまざまな分野のニーズに応える生産技術を開発する
東京都
石福金属興業株式会社
2021年2月17日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 次世代燃料電池用酸化ルテニウムナノシート作製の高効率化・迅速化による生産技術開発 |
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基盤技術分野 | 材料製造プロセス |
対象となる産業分野 | 自動車、電池 |
産業分野でのニーズ対応 | 高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、高効率化(生産性増加)、低コスト化 |
キーワード | 燃料電池触媒、キャパシタ、ナノ材料、生産技術 |
事業化状況 | 事業化に成功 |
事業実施年度 | 平成29年度~令和1年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
本事業は信州大学で開発された「酸化ルテニウムナノシート」(以下本ナノシート)の量産・事業化に向け、「高効率な製造プロセスの実現」を達成するものである。これを達成して、本ナノシートの主要な市場であり、近年拡大している燃料電池市場の拡大および環境、エネルギー問題の解決につなげていくものである。
開発した技術のポイント
・混練工程の自動化:機械によって粉砕と混練できる装置を導入し、混練工程の高効率化・迅速化を行う。
・成型工程の自動化:粉末の秤量・供給から加圧成型まで自動化できる粉末用の成型機を導入して成型工程の自動化による高効率化・迅速化を行う。
・熱処理工程のスケールアップ:電気炉を大型化し、スケールアップによる熱処理工程の高効率化・迅速化を行う。
・水洗浄工程の自動化:粉砕後の粒度の最適化と自動化、洗浄効率の向上できる装置により水洗浄工程の高効率化・迅速化を行う。
・剥離工程のスケールアップ:反応系内の流体の動きを制御して剥離時間を短縮し、スケールアップによる剥離工程の高効率化・迅速化を行う。
・リサイクル:洗浄溶液からの層状ルテニウム酸カリウムを分離回収できる技術を開発し、再度原料とすることで歩留まりを向上させることによる製造プロセスの高効率化を行う。
具体的な成果
'・混練工程の自動化:混錬状態を蛍光X 線によって定量評価し、自動機による混練工程のキーパラメーターを明確にし、スケールアップと自動化により製造量当たりの工程時間を大幅に改善した(1/100 以下)
・成型工程の自動化:ペレット成型体内部の分散状態、近接状態を蛍光X線、電子顕微鏡観察によって評価し、自動機でのキーパラメータを 明らかにし、スケールアップと自動化により製造量当たりの工程時間を従来技術の大幅に短縮した (1/50 以下)
・熱処理工程のスケールアップ:熱処理工程で起きている反応機構を明らかにし、装置設計と作製条件の検討によって、製造単位の大幅な向上が可能となった(50倍以上)
・水洗浄工程の自動化:従来工程での洗浄方法について、洗浄前後の不純物残留量を示差熱重量測定によって定量化する評価方法を明らかにし、自動機にて従来工程と同程度の粉砕および洗浄可能な条件を明らかにした。単位製造量当たりの工程時間を短縮できた(1/10以下)
・剥離工程のスケールアップ:剥離された酸化ルテニウムナノシートの表面状態をゼータ電位、 pH、 粒度分布測定によって定量的に評価する方法を明らかにした。
評価手法に基づいて実施した剥離技術とスケールアップによって単位製造量当たりの工程時間を1/200に短縮した。
・リサイクル:水洗浄工程での流出成分の回収と剥離率の改善によって歩留まりを従来技術の50%から70%に向上できた。
研究開発成果の利用シーン
製品としては、酸化ルテニウムナノシートのコロイドや粉体、あるいは白金系の触媒との混合品での販売を想定している。
・エネファーム:電極触媒に酸化ルテニウ ムナノシートを添加することで触媒の耐一酸化炭素特性を向上させて安価な燃料改質機を採用し、コストを下げることで普及拡大に繋げることができる。
・燃料電池自動車(FCV):酸化ルテニウムナノシートを添加することで触媒を高耐久化し、他のコストダウン要素と合わせてFCV のコストダウンが実現する。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
生産量を格段に大きくすることが可能となり、研究室の試作のレベルから工場の生産のレベルに移ることが可能となった。
今後は、製品化の次のステップに移り、川下企業へのサンプル出荷を通じて、実際の要求仕様、 要求量,要求価格等を明らかにし ていく。
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作、製品製造
製品・サービスのPRポイント
エネファームの市場規模:2016 年改訂の水素・燃料電池戦略ロードマップによると 2019 年の PEFC型のエネファームの目標販売価格は80万円となっており、 2020年のエネファームの販売台数を30万台とすると2400億円の市場が形成される。そのとき必要な触媒量は数100kg/年と推定され、従来技術では対応できなかった需要に対し、これを可能にすることができる。
FCVの市場規模:FCV のコストダウンが実現してFCVの販売価格が400万円(現行のミライの価格が723万円)、2025年の販売台数が 50,000台とすると 2,000億円の市場が形成され、普及期には更に市場が大きくなることが予想される。
今後の実用化・事業化の見通し
本研究開発の成果を活用することで平面構造制御ナノ材料の新しい事業分野を立ち上げることができる可能性がある。
従来のナノ材料は、コロイドや担持触媒に代表されるように表面張力によって安定化された球形粒子が主流である。
形状を制御したナノ材料は研究分野では報告があるが事業化した例はなく、本研究開発の成果は恐らく世界で初めて平面構造制御ナノ材料を工業レベルで供給できる体制を構築する。
エネファームメーカーは高い耐一酸化炭素耐性を有する電極触媒材料のニーズがあり、この点は川下製造業者との打合せで確認しており、サンプル提供を複数回実施し、要求に対応するさらなる性能向上とほかの構成部材とのマッチングを進めている。
FCVメーカーも同様にシステムで触媒を保護するのではなく、材料によって電極触媒を高耐久化することのニーズがあることを確認している。
更にFCVメーカーには既に提案をしており、サンプル評価に向けて準備を進めている。
ナノシートは蓄電材料としての性能も有しており、電子部品メーカーにサンプル提供を複数回実施し、要求に対応するさらなる性能向上とほかの構成部材とのマッチングを進めている。
実用化・事業化にあたっての課題
製品としての酸化ルテニウムナノシートのコロイドや粉体、あるいは白金系の触媒との混合品の販売において品質安定性や輸送、保管の管理、コストが見合う形での提供が必要。
製品化の次のステップに移り、川下企業へのサンプル出荷を通じて、実際の要求仕様、要求量、要求価格等を明らかにしていく。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 石福金属興業株式会社 第1技術部 第3グループ |
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事業管理機関 | 株式会社信州TLO 技術移転グループ |
研究等実施機関 | 国立大学法人信州大学 繊維学部 |
アドバイザー | 日産自動車株式会社 総合研究所 先端材料 研究所 パナソニック株式会社 テクノロジーイノベーション本部 資源・エネルギー研究所 クリーンエネルギー研究部 水素燃料電池研究課 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 石福金属興業株式会社(法人番号:1010001010624) |
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事業内容 | 各種貴金属製品の製造、販売、回収精製 |
社員数 | 344 名 |
本社所在地 | 〒101-0047 東京都千代田区内神田3-20-7 |
連絡先窓口 | 第1技術部第3グループ 青木 直也 |
メールアドレス | n-aoki@ifk.co.jp |
電話番号 | 048-931-4581 |
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