機械制御
永久磁石を使った非接触のメリットを変速機に応用
宮城県
株式会社プロスパイン
2021年2月15日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 高伝達特性・低コストを目指した、海中自立発電向け新型IPM式磁気ギアの研究開発 |
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基盤技術分野 | 機械制御 |
対象となる産業分野 | 環境・エネルギー、産業機械 |
産業分野でのニーズ対応 | 高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(小型化・軽量化)、高性能化(信頼性・安全性向上) |
キーワード | 非接触動力伝達、磁場解析、伝達効率向上、永久磁石、潮流発電 |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中 |
事業実施年度 | 平成29年度~令和1年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
海中自立発電機とは、海水の潮流や海流でタービンの回転を、磁気ギアを用いて増速して、発電機を回す仕組みとなっている。本研究では、当社で開発実績のあるSPM型磁気ギアよりも、さらに高伝達特性・低コストを目指した、新型IPM型磁気ギアを開発することを目標とする。
開発した技術のポイント
東北大学中村研究室の磁気ギアの先進的研究をベースに、既存のSPM型磁気ギアを構成材質・磁気回路から見直した。磁場解析シミュレーションで、海中自立電源磁気ギアとして設定した体格内で、磁場解析とそれに基づく実機制作、評価を行った結果、目標とする伝達特性を得ることができた。また磁気ギアを搭載した水中発電装置における実験においても、想定する発電特性を得ることができた。
具体的な成果
1)IPM式磁気ギアの開発
・伝達トルク20N・以上、伝達効率98%以上(但、機械損は除く)の達成
・海中自立電源用として必要な起動トルク1N・m以下の目標特製の達成
2)ポールピースASSY最適化設計
・最適な材質として、純鉄組成の圧粉磁心(神戸製鉄ML25D)、ポールピースホルダーはCFRPを選定
・通算3000時間の耐久性試験時間を達成
3)フィールド試験
・IMP式磁気ギアを搭載した水中発電機を、回流実験水槽設備にてベンチ試験の結果、発電効率は総合効率で65%以上、タービンが起動する流速は0.3m/sと目標を達成し、磁気ギアは増速機(増速比10.33)として伝達特性、水密機能の確保も確認された
・海洋実験(釧路漁港沖の防波堤)を行ったが、実験2日目より海域の状況が悪く、中断した
・代わりに大型水槽にて、走行台車に設置した電源制御盤を用いた発電システムの曳航実験の結果、走行台車のスピード0.9m/sより発電電力が得られ、発電した電力により衛星通信機能も正常動作していることが確認できた。
・走行台車のスピード0.8m/s以上になると、タービン姿勢が安定せず、発電出力も振られ変動し、今回採用した水レンズ方式の方向制御機能が不安定になることが分かった。
知財出願や広報活動等の状況
1)学会発表、論文
・水穴裕真、中村健二、鈴木雄真、大石悠平、操谷欽吾 「埋込磁石型磁気ギアの性能向上に関する検討」、日本磁気学会、論文特集号、Vol3,pp.74-78.2019
・水穴裕真、中村健二、鈴木雄真、大石悠平、操谷欽吾 「磁束変調型磁気ギアの性能向上に関する検討」、2018.7.19、2018IEEJAPAN
2)特許
・2018-53877:「磁気歯車」
・2018-55085:「磁気歯車」
・2018-55086:「磁気歯車」
・2019-029505:「回転電機」
研究開発成果の利用シーン
本研究の結果より、IMP式磁気ギアを海中自立電源用の増速機として使用することにより、磁気ギアの特長である非接触に起因する隔壁機能により、ナセル内の水密構造が可能となる。そのため高価なメカニカルシール等が不要になり、メンテナンスフリーへの道も開ける。
また今回、発電した電力による衛星通信が可能であることが確認された。この結果、密漁の課題を抱えている日本の漁協、浮漁礁用の電源など使用でき、さまざまなデータを衛星通信によりリアルタイムで状況確認が可能となる。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
IMP式磁気ギアは、企業の研究機関、大学等で研究が進められているが、まだ広く市場には浸透していない。
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作、加工・組立・処理、製品製造、技術コンサルティング
製品・サービスのPRポイント
磁気ギアは非接触でトルクを伝達できるため、機械式ギアに比べて振動、騒音が小さく、保守性に優れるなどの特徴を有する。その中でもIMP式磁気ギアは他の磁気ギアに比べてトルク密度が高く、実用化の期待が高い。
今後の実用化・事業化の見通し
・車搭載、情報機器用等、数社から引き合いがあり、検討を進めている。本研究で得られた知見、技術を盛り込み、ユーザーの要求する性能、品質、価格を達成するよう取り組んでいく。また隔壁機能、生産性等で優位なアキシャル型磁気ギアの事業化に向けて開発を進めていく。
・海中自立電源の事業化については、タービン、発電機当を含めたシステム全体の方向性を連携企業と調整する。同時にこれまで情報交換を進めてきた漁業協同組合にアプローチし、通信衛星機能も含めた実証実験の計画を進めていく。
実用化・事業化にあたっての課題
本研究で使用した水レンズ方式のタービンの方向制御機能が不安定であった。タービンの姿勢安定化のためには、方向舵付加、アンカー、吊り下げ重心位置の検討等、発電装置設置に工夫が必要である。
事業化に向けた提携や連携の希望
磁気ギアを使ったギアドモーター小型化の取り組みをモータメーカと模索中
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社プロスパイン |
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事業管理機関 | 国立大学法人東北大学 |
研究等実施機関 | 株式会社プロスパイン 国立大学法人東北大学 |
アドバイザー | 株式会社沖縄経営システム 長崎大学・海洋未来イノベーション機構 株式会社神戸製鋼所 NTTドコモ 宮城県産業技術総合センター 宮城県経済商工部 椿本興業株式会社 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社プロスパイン(法人番号:3370201000214) |
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事業内容 | 機械部品製造 |
社員数 | 51 名 |
生産拠点 | 宮城県大崎市 |
本社所在地 | 〒987-1305 宮城県宮城県大崎市松山次橋字新千刈田117番地 |
ホームページ | http://www.prospine.jp/ |
連絡先窓口 | R&Dセンター 主任研究員 立谷雄一 |
メールアドレス | y.tachiya@prospine.co.jp |
電話番号 | 0229ー55ー3375 |
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