研究開発された技術紹介

自動車産業では近年、燃費と効率向上が望まれている。このためには自動車のトランスミッション部の軽量化・コンパクト化と歯車強度向上が課題となる。また、建設機械産業でも歯車の耐久性が鍵となっている。その解決法としてショット・バレルの特徴を活かして大幅に歯車長寿命化が図れる処理法を見出した。本研究ではその処理法の量産実用化をねらい、ショット・バレル複合化プロセスによる長寿命歯車加工装置を開発する

ショットピーニング技術とバレル技術を組み合わせ、量産化を目指す
・加工精度:1μm以下
・加工位置決め精度:±0.5mm(歯車モジュール1.5～7に対応)
・最大加工物:最大径250～300mmのハイポイド歯車で、モジュール5を3個以上同時加工
・タクトタイム:複合加工のそれぞれのリードタイムを考慮した、バッチ処理による量産化
・加工条件の自由度:ショットピーニングのボール径(0.1～1mm)、ショットピーニングの噴射圧力(～0.5MPa可変)、バレル研磨の砥石径(2～10mm)、バレル研磨の加工物最大回転速度(90rpmまで可変)、バレル研磨槽外径(1.5～2.0m)
(新技術)
＜新しいショットピーニングとバレル研磨を組み合わせた歯車処理方法＞
ショットピーニングを歯車歯面へ均一に施した後、さらに歯車表面を円滑化
(新技術の特徴)
・歯元の強化と歯面の強化を同時に達成できる
・歯面が滑らかになり、より精度の高い部品を生産可能

・ショットピーニング自動化のための付加機能装置設計製作
‐チルト機構及び移動機能が搭載された、ロボット装置付きのショットピーニング装置を新しく開発した
‐プログラムプロセスに応じたシーケンシャル的動作が可能であり歯車の立体加工が可能となった
・ショット・バレル複合プロセスシステムによる処理加工評価
‐一連のHASB処理(ショットピーニング、バレル処理、および全体移動)を行い、個別単体処理時との比較を実施
‐本研究で開発したシステムにより、同一ロットの複数個同時均一処理が可能であることを確認した
・騒音負荷評価のための設計製作
‐HASB処理を行った歯車の静音性を適切に評価するため歯車専用負荷装置を設計製作
‐HASB処理におけるバレル処理部分での騒音を小さくすることができ、全行程での低騒音化が確認できた
・ショットピーニング装置を新たに深したHASB装置
～ショットピーニング装置、バレル装置、ロボット装置及びその制御装置を搭載した複合プロセス装置。本装置にて、HASB加工処理を実施～

・論文:橋本宗到「長寿命歯車加工装置の開発」(H22.2)
・出展:中部ものづくりシンポジュウム2009(H21.11)

輸送機器用トランスミッションギア、長寿命歯車加工装

・H24年度の実用化成功を目指し、継続研究や事業化促進を実施中
・HASB処理の試作加工が可能

・強度向上:伝達力は従来比40%アップ、寿命は従来の2倍以上
・快適性・静寂性:従来比約50%の低減
・省エネルギー化:燃費の低減

性能評価や耐久試験を引き続き実施し、事業化を更に促進させる
・川下企業へ試作品を提供しており、現在性能評価・耐久試験を実施中
・引き続き、量産化装置への改良及び研究を進めている
・事業化が近い段階に到達しているが、販売体制の構築を推進させることにより、事業化をさらに促進させている