測定計測
テラヘルツ波を用い、全固体リチウムイオン電池の局所的な内部電位分布を非接触で計測する分析装置の開発
岡山県
協和ファインテック株式会社
2023年2月14日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 次世代電池の開発加速を実現する充放電時の内部電位可視化装置(テラヘルツ波ケミカル顕微鏡)開発 |
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基盤技術分野 | 測定計測 |
対象となる産業分野 | 医療・健康・介護、自動車、電池 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(小型化・軽量化)、高性能化(信頼性・安全性向上)、低コスト化 |
キーワード | 電位計測、テラヘルツ波、非接触、可視化 |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中 |
事業実施年度 | 令和1年度~令和3年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
大幅な市場拡大が続く次世代電池は性能向上に向けた開発競争が激化しており、性能向上の鍵となる充放電時の電池内部の計測技術開発が喫緊の課題である。協和ファインテックらのグループは、世界初、充放電時における電池内部の電位分布可視化技術を基に、電池開発に重要な断面方向電位計測、数ミクロンの内部材料・高速充放電解析に対応する計測性能改善技術と、その技術を導入したテラヘルツ波ケミカル顕微鏡計測装置を開発する。
開発した技術のポイント
・正極~負極までの電位計測を実現する全固体電池断面センシング方式の開発
-電池断面計測におけるセンシングプレート電圧オフセット手法
・電池品質管理に向けた電位分布計測システム高度化
-センシングプレート及びフェムト秒レーザーの温度特性、繰返し耐久性・特性を評価
・次世代電池の高度化に対応する空間・時間分解能の改善
-テラヘルツ波の検出感度向上を図る角度可変型検出ユニット
-回折限界まで集光可能とする垂直入射型テラヘルツ波ケミカル顕微鏡装置
・製品化、計測規格化に向けたテラヘルツ波ケミカル顕微鏡の統合実証機開発
-装置構造による光学系への温度および振動影響の低減
具体的な成果
・センシングプレート電圧オフセット手法を確立し、本手法を用いた電解質支持型酸化物系電池の断面計測を実施し、電池動作中の正極~負極間(断面)内部電位分布の可視化を実現した。
・センシングプレート及びフェムト秒レーザーの温度特性、繰返し耐久性・特性を評価し、動作サイクルにおけるテラヘルツ波ケミカル顕微鏡(以下、TCMという)計測を実施した。
・角度可変型検出ユニットを用いた垂直入射型TCMを製作し、テラヘルツ波の検出感度向上、空間分解能1μmの性能を実現した。
・利得100倍の増幅アンプを製作し、空間分解能1μm、時間分解能10msの統合実証機システムを構築した。
・テラヘルツ波ケミカル顕微鏡統合実証機を製作し、第62回電池討論会に出展。
・TCM計測のベースとなる電解質支持型酸化物全固体電池を試作し、充放電試験、インピーダンス試験の実施を完了した。
・上記と同一系材料を用いて故意に劣化させた電池を製作。核磁気共鳴方式電池解析によるTCM計測との相関性検証を完了した。
知財出願や広報活動等の状況
・国際学会「IRMMW-THz 2022」登壇。
-タイトル「Electric Potential Mapping of All-Solid-State Lithium Ion Batteries using A Terahertz Chemical Microscope 」
・応用物理学会中国四国支部登壇。
-タイトル「テラヘルツ波を用いた全固体リチウムイオン電池電位分布測定装置の開発」
・第62回電池討論会登壇。
-タイトル「全固体電池の断面測定に向けたテラヘルツ波ケミカル顕微鏡の開発」
・「電池断面のセンシングシステム」は従来知財をベースに、知財化・群特許化を図る。
研究開発成果の利用シーン
テラヘルツ波ケミカル顕微鏡は、微細な電気化学反応をリアルタイムに計測可能な技術であり、全固体電池電極面、電極間の内部電位計測の実現に寄与する。その他にも用途先に最適化したセンシングプレート開発により事業展開が可能である。たとえば抗原抗体反応用センシングプレート開発による抗体医薬分野、触媒反応用センシングプレート開発による触媒反応解析、触媒材料開発分野など電池同様、先端開発が推進されている成長分野への展開可能性を有している。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
川下企業である大手自動車メーカーとの共同開発体制、受託測定等実施可能な計測ラボの構築を進めている。最初に電池や材料メーカー、大学や公的機関の電池研究部門への展開を狙う。次に量産用電池の品質管理用とへの展開を目指す。具体的には2023年度に2台、2026年度に12台の販売を計画している。
提携可能な製品・サービス内容
製品製造、試験・分析・評価、共同研究・共同開発
製品・サービスのPRポイント
電池を分解することなく、動作状態における内部電位分布計測ができる先進電解液リチウムイオン電池、全固体電池用センシングシステムである。
今後の実用化・事業化の見通し
最初は協和ファインテックの既存顧客、岡山大学と電池に関わる共同開発を推進している企業、ALCA-SPRINGで電池の研究開発を推進している研究者に対して「テラヘルツ波ケミカル顕微鏡」の提案および販売を狙う。
次に開発した統合実証機を展示会に出展し有効性・新たなニーズを確認するとともに、国内新規顧客に向けた開発用計測器としての販売を拡大させる。更に、開発用としての電池に関する各種計測結果をベースに、電池計測の規格化を推進するLIBTEC(技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター)や産業技術総合研究所に、本計測機をベースにする品質管理規格を提案し、量産品質管理用途としての展開を図る。具体的には2023年から開発用計測器の販売を狙い2025年からは品質管理用の販売を目指す。
実用化・事業化にあたっての課題
販路開拓、ユーザビリティ強化
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 協和ファインテック株式会社 医療機器開発部 |
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事業管理機関 | 公益財団法人岡山県産業振興財団 ものづくり支援部 |
研究等実施機関 | 国立大学法人岡山大学 大学院ヘルスシステム統合科学研究科 教授 紀和 利彦、博士前期課程学生 冨江 涼太、清水 雅司、研究員 Ahmed Feroz 大学院自然科学研究科 准教授 寺西 貴志、准教授 後藤 和馬 |
アドバイザー | JFEテクノリサーチ株式会社 NOK株式会社 プライムプラットエナジー&ソリューションズ株式会社 トヨタ自動車株式会社 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 協和ファインテック株式会社(法人番号:7260001002095) |
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事業内容 | 精密ギヤポンプ製作、産業機器製作(化合繊設備、環境関連機器、押出成形関連機器など)、医療機器製作(人工透析装置など) |
社員数 | 238 名 |
本社所在地 | 〒704-8193 岡山県岡山市東区金岡西町948-9 |
ホームページ | https://www.kyowa-ft.co.jp/ |
連絡先窓口 | 協和ファインテック株式会社 医療機器開発部 部長 小林 正樹 |
メールアドレス | masaki_kobayashi@kyowa-ft.co.jp |
電話番号 | 086-948-2134 |
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