情報処理
誰でも簡単に操作できるCAM機能を搭載。小型、軽量、省電力で設置環境を選ばずに本格的な切削加工が可能
京都府
株式会社プロト
2022年1月28日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | CAM機能を搭載した小型で低価格な歯科用CAD/CAM冠切削加工機の研究開発 |
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基盤技術分野 | 情報処理 |
対象となる産業分野 | 医療・健康・介護、環境・エネルギー、工作機械 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(小型化・軽量化)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(人件費削減)、低コスト化 |
キーワード | 冠切削加工機、CAM内蔵、CAM操作不要、製作時間短縮、患者負担軽減 |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中 |
事業実施年度 | 令和1年度~令和2年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
歯科技工分野では、10数年前からコンピュータを使った歯科用CAD/CAMシステムによる歯科補綴物の製作法が広まっている。小型/安価で複雑な操作を必要としないCAM機能を内蔵した数値制御切削加工機を開発することにより、小規模な歯科技工事業所への導入やコンピュータ操作に不慣れな歯科技工士でも使いこなせるシステムを提供する。
本製品は加工用プログラムを自動生成するCAMシステムを搭載した9インチの液晶表示とタッチパネルを持つPCを組込み、直感的で非常に簡単に操作できるユーザーインタフェースを持ち、CAD/CAMに不慣れなユーザーでも簡単に使用することを考慮したシステムである。
開発した技術のポイント
・数値制御装置に実装するCAM(加工用プログラムの自動生成ソフトウェア)
工具の位置と姿勢を自動で計算する機能と切削加工シミュレーションの技術を活用して切削加工データを自動生成でき、CAMの操作技術を有さない歯科医師/歯科技工士でも装置の導入直後から利用することが可能なソフトウェアの開発技術。
・補綴物の切削加工に特化した小型で軽量の切削加工機
造形可能な形状の自由度が高い3Dプリンターの特徴を活かして鋳造型を作成し、切削加工機の躯体を精密鋳造による一体構造とすることで、既存の切削加工機に比べて部品点数や組立工数を大幅に削減し、製造コストを抑えた軽量で高剛性の躯体を設計する技術と5軸加工技術を活用して、低いコストで高精度な機械加工法を確立する技術。
・補綴物の切削加工に特化した低コストな数値制御装置
CAD/CAM冠材料の加工に充分な精度を確保できるステッピングモータを用いた同時5軸のNC制御機能を持ち、保守性に優れた入出力のモニター、工具データの確認などの拡張機能や将来の多用途化へのバージョンアップにも対応可能なシステムの開発技術。
具体的な成果
・数値制御装置に実装するCAM(切削加工用データ生成ソフトウェア)の開発
CADからのSTLデータと材料の形状、加工条件のパラメータを選択するのみの簡単な操作で行え、複雑な画面操作がなく誰でも簡単に扱えるソフトウェアを開発した。
・補綴物の切削加工に特化した小型で軽量の切削加工機の開発
切削加工機の躯体を精密鋳造による一体構造とすることで、既存の切削加工機に比べて部品点数や組立工数を大幅に削減した。さらに部品の機械加工に際して5軸加工に適した治具の設計、使用工具や加工条件の選択、加工用プログラムの作成を行って高精度加工を達成するとともに、製造コストの低減につながる加工時間と作業時間の短縮を実現した。
・補綴物の切削加工に特化した低コストな数値制御装置の開発
サーボモータに比較して低コストのステッピングモータを使用してオープンループ制御とすることで低コストな歯科用CAD/CAM冠切削加工機専用数値制御装置を開発した。 これにより、多様な機能を有しながら、従来のサーボモータ駆動の数値制御システムに比べて同じ5軸制御機能の場合に於いて60%以下のコストを実現した。
知財出願や広報活動等の状況
知財出願:特になし
広報活動:令和3年12月8日~10日に東京ビックサイトで開催された全国中小企業団体中央会主催の“中小企業テクノロジー展”に出展した。合わせてポスター、カタログを製作した。
研究開発成果の利用シーン
この成果技術の展開は、本事業での歯科用切削機にとどまらず、例えば介護分野や医療分野における補助器具、体内装着機器のように個別の患者ごとに制作する必要があるケースで、“簡単”“スピーディー”かつ“低コスト”で製作可能なシステムへの応用をモデルの一つとして想定できるように、省エネルギー、工数の削減、納期の短縮等において、これまで大きな工作機械設備で生産していた方式の代替えとして利用できる分野は多くある。
また、歯科医院での口腔内スキャナーの導入によって、これまで歯科医院では患者の欠損歯から“印象”と呼ぶ石膏型をとり、歯科技工士が専用スキャナーを使ってデータ化する流れであったものが、歯科医院内で直接データ化される事で最終的には医院内で補綴物製作を完結できる可能性が生まれ、今後CAD/CAMの需要が歯科医院側にシフトしていく事が予想される。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
歯科用CAD/CAMシステムが歯科医療の市場に登場して約15か年、CAD/CAM冠材料による歯科補綴物の保険適用が開始されて7カ年が経過し、初期は小臼歯のみであったものが現在では大臼歯、前歯にも適用が拡大された。この間、当初に導入したユーザーではすでにシステムの更新が始まり、市場には海外から輸入された製品を含め新規参入メーカーのシステムが登場している。
本事業で開発した歯冠加工機はユーザーにおけるシステムの新規導入時はもとよりであるが、システムの更新を進めるユーザーに向け、小型で安価である特長を活かしてパーソナルユース(歯科医師/歯科技工士1名につき1台)の利用が可能な切削加工機とした販売を目指している。市場規模としては2020年3月時点で歯科用CAD/CAMシステムを導入している歯科技工所、歯科クリニックは1800軒を超えていると想定されており、本装置が180~200万円の販売価格を実現したときの年間販売台数はその10%として180~200台と予測している。
提携可能な製品・サービス内容
加工・組立・処理
製品・サービスのPRポイント
本補助事業で研究/開発した“小型で低価格な歯科用CAD/CAM冠切削加工機”は、小型ながら機構としての耐久性、精度の維持に優れていることに加え、専用で開発した数値制御装置は耐電気的ノイズが高い、動作温度の幅が広いなど、大きな利点を持っている。これは3Dプリンターによる自由なデザインによる鋳造木型と精密アルミ鋳造技術、さらに5軸NC加工機による高精度な機械加工などが寄与しシンプルかつ剛性の高い機構を実現した。これらの利点は製造/検査工程においても、想定した作業時間の50%以下というメリットがあり、結果として、ユーザーに於いても使い勝手の良いシステムとなっており、歯科治療の基本である補綴物の品質を維持しながら低コストで迅速に提供することによって歯科医療でのサービスの向上につながる。すでに市販されている歯科用CAD/CAMシステムはその実現のためのひとつの手段であるが、更にシステムの一体化を図った“CAM機能を搭載した小型低価格な歯科用CAD/CAM冠切削加工機”は補綴物の製作コストと期間のさらなる削減を実現するものである。
今後の実用化・事業化の見通し
本製品を市場で販売するには、“生産体制”、“販売ルート”、“製品保守体制”等の確立と、本製品を“医療機器”として登録する為の作業が必須となる。また、それらに基づいた的確な製品価格の設定が必要である。そのため、補助事業終了後のR3年度も上市に向けた準備として量産に向けた機器の改良やテスト、および技術/販促資料の作成を現在まで継続している。事業化については当初、令和3年9月を目標に本製品の上市を計画していたが、現時点(令和3年12月)に於いても“コロナ禍”の事態がターゲッとする市場にどのような影響を及ぼすかを掴むことが困難で、事業化に向け準備している資金を有効に活用するには今後の市場動向を注意深く見定める必要があると判断し、製品の上市時期を令和4年4月以降とした。現在市場での広範囲な活動は行っていないが、本年12月には全国中小企業団体中央会主催の“中小企業テクノロジー展”に出展し、またアドバイザー各氏及びその紹介の歯科医師、歯科技工士からの情報入手等の活動を行っている。
実用化・事業化にあたっての課題
市場での発売時期については、量産における部品調達の目途が明確となり、初期ロットの生産時期が確定しなければ決定できない。
製品開発での部品選択についてはこれまでの経験から充分検討して市場で安定供給されているタイプを選び、本年中には初期ロットの生産を開始する予定であった。しかし、昨年からの世界的な半導体部品不足は令和3年12月現在まで全く解消しておらず、逆にさらに深刻化している部品もあり、我々にとってはその入手が大きな課題となっている。
もしこのまま問題が継続した場合は、製品の一部を改造して別な部品で対応しなければならない事態の発生等が考えられ、現在上市のために用意している資金について不足となることも想定せざるを得ない。このため、市場における実際の販路開拓活動はこれらの要件を検討しながら可能な範囲で臨機応変に進めることとした。
事業化に向けた提携や連携の希望
現時点では、これまでのプロジェクトメンバー及びアドバイザー各位との連携により必要充分な情報や意見の交換を行っている。
上市の目途が立ち次第、有力な販売店/OEM供給先等とのコンタクトを確立する為の準備を進めている。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社プロト 本社 |
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事業管理機関 | 一般財団法人大阪科学技術センター |
研究等実施機関 | 国立大学法人神戸大学 大学院工学研究科機械工学専攻 モディアシステムズ株式会社 |
アドバイザー | 井上 富夫(医療法人 井上歯科医院 理事長) 佐藤 正明(有限会社かんとうセラミック 代表取締役) 岩間 正俊(株式会社岩間工業所 代表取締役) 池田 順治(国立大学法人 大阪大学 大学院工学研究科 特任教授) |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社プロト(法人番号:5130001034054) |
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事業内容 | 各種工業用試作品の一括受託、および量産化に向けた様々なサポート |
社員数 | 45 名 |
生産拠点 | 本社工場 (京都府久世郡久御山町野村村東123番1 )、富山工場(富山県高岡市戸出栄町45-3 )、プロトラボ(大阪府枚方市茄子作2丁目16番14号) |
本社所在地 | 〒613-0023 京都府久世郡久御山町野村村東123番1号 |
ホームページ | http://www.proto-tec.co.jp/company.html |
連絡先窓口 | 長谷川 美成 |
メールアドレス | y.hasegawa@proto-tec.co.jp |
電話番号 | 0774-41-2833 |
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