機械制御
簡単に高精度を実現する次世代のプレス加工技術
三重県
株式会社一志精工電機
2023年2月11日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 安定した高精度プレス加工を可能にする“加工力調整装置”を搭載した金型構造及びプレス生産技術の研究開発 |
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基盤技術分野 | 機械制御 |
対象となる産業分野 | 自動車、情報通信、電池、エレクトロニクス |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高性能化(精度向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(人件費削減)、環境配慮、低コスト化 |
キーワード | 下死点の安定、高精度プレス |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中 |
事業実施年度 | 令和1年度~令和3年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
自動車等の電装部品で用いられるコネクタ端子は、小型・軽量化のニーズから高い寸法精度の生産品が増加している。従来のプレス加工法では、プレス機スライダの位置精度が不安定なため、高い寸法精度の端子を安定して生産するのが困難である。そこで本事業では、新たに開発する“加工力調整装置”を金型に搭載することで、スライダの位置誤差の影響を受けず、高精度品を安定して生産可能なプレス生産技術を研究開発する。
開発した技術のポイント
・誰でも簡単に同じ条件で金型のセッティングが可能
‐リターンスプリングの最適化により、上型の固定が不要となり、プレス機の位置精度と切り離して加工が可能
‐ストッパーによる安定した位置決め精度を保持することにより、初期から終了時までダイハイト調整が不要
・プレス機の変異の影響がなく、下死点が常に一定(添付図参照)
‐長時間下死点位置を保持(添付図参照)
‐ストッパーの初期なじみ後は下死点の変動が3μm以内
‐プレス機の影響を受けず製品の潰し加工の高精度化が可能
・通常の金型+加工力調整装置のシステム構成
‐シミュレーションによる金型設計が可能
‐特殊な構造を持たないため、容易に事業展開が可能
具体的な成果
・加工力調整装置及びリターンスプリングの設計手法確立のための研究開発
‐本研究開発で試験加工するコネクタ端子を、順送プレス加工で必要な「抜き」、「曲げ」、「つぶし」が全て含まれるものを対象とし、これを加工するための加工力変化を成形シミュレーションにより取得して、得られた加工力変化をもとにした加工力調整装置の設計手法及びリターンスプリングの設計手法を確立した
‐設計パラメータには、ばねのばね定数とダンパの減衰係数があり、シミュレーションにより得られた加工力変化とスライダ位置軌道より、動的な理論計算から最適なばね定数と減衰係数を導出する手法を開発した
・加工力調整装置の実用的開発及び動作・機能の検証
‐加工力調整装置及びリターンスプリングを搭載した金型を用いてプレス機による順送プレス加工を行い、シミュレーション結果との比較検討より妥当性の評価を行った
・加工力調整装置を搭載した金型の耐久性に関する研究開発
‐開発した加工力調整装置及び金型の耐久性について100万ショットまでの加工試験を行い、1万ショットごとの成形品の加工精度を調査し、精度に劣化がないかを調べた
‐金型の摩耗量についても評価検討を行った
知財出願や広報活動等の状況
開発する技術の構造に対する特許を取得した。また、令和3年度にPCT出願を実施した。今後は意匠登録を計画中。
研究開発成果の利用シーン
・自動車関連のコネクタの製造
・医療機器、IoT等の情報通信機器、ロボット分野などの精密プレス部品の製造
・『潰し』が重要なバッテリーセルなどのターミナル製品の製造
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
本事業で確立するプレス生産技術は、まず自動車用の電装部品に用いられるコネクタ端子を自社で取り組んで事業化をしていく計画である。これらの部品が使われている自動車の動向としては、ハイブリッド自動車(HV車)、電気自動車(EV車)での需要拡大があり、かつHV車・EV車の出荷量は増加していくため、益々の需要拡大が予測される。同時に本事業で製作した加工力調整装置を搭載した金型は、アドバイザーである遠藤製作所に出荷するとともに、評価を受けながら、その結果をフィードバックしていくことにより、加工力調整装置を搭載した金型の出荷の準備も進めていく。
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作
製品・サービスのPRポイント
・自動車関連のコネクタの高精度化・低コスト化
・自動車関連のコネクタ形状の複雑化・小ロット化への対応
・安定した高精度プレス加工による不良率の削減、イニシャルコスト、ランニングコストの削減による、無駄なコストの削減
・ダイハイトの微調整が不要であること、日々の環境変化によるプレス変位などの影響を受けないことから、一度設定したダイハイトで繰り返し生産が可能となり、金型セッティングの時間が大幅に短縮され、小ロット生産が可能となる
・生産中に発生する加工熱や気温の変化の影響、プレス機のガタによる位置ズレの影響も受けないことから、加工始めから終わりまで常に一定の寸法制度を保つことが可能となる
今後の実用化・事業化の見通し
本事業で確立する加工力調整装置を搭載した金型構造とプレス生産技術には、「プレス機のスライダ位置ずれの影響を受けずに高精度なプレス加工を安定して実施可能」という大きな特長がある。これは精密プレス部品の製造を行っている全ての分野で応用可能である。そのため、今後成長が予測される、医療機器、IoT等の情報通信機器、ロボット分野などに事業が拡大していくことができる。さらに、電気自動車で最も重要な構成の一つとなる、バッテリーにおいても、『潰し』が重要なバッテリーセルなどのターミナル製品が存在する。さらに市場拡大が加速している電気自動車の分野においてはバッテリーが大きな課題であり、バッテリーの高性能化によって電気自動車の市場が決まるといっても過言ではない。そのなかで本事業がバッテリーの性能だけでなく製造コスト面においても優位性を持つことが可能となるため、今後の事業展開に期待できる。
実用化・事業化にあたっての課題
新型コロナの影響は大きく、納入の遅れや人の移動の制限などで開発自体が遅れ、最終構造の開発に時間がかかり、最終構造での耐久性評価が20万ショットまでしか実施できなかった。ただし、令和2年度までの評価内容と照らし合わせ、20万ショットでも構造的問題点の解決、耐久性の評価は十分に行えた。よって、今後の事業化実施までのなかで、再度評価を実施していく。
事業化に向けた提携や連携の希望
本技術は、金型に搭載した加工力調整装置によって加工力を発生させるため、加工能力が20t程度迄に制限されます。よって、銅や黄銅のターミナル系部品をターゲットとし、下死点の安定化が優位に働く潰しやカシメ形状の高精度化に特化しています。プレスの下死点位置の制御が困難な部品に対し、試験を行いたい企業様と連携し、事業化に向けた実績を積み上げていきたいと考えております。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社一志精工電機 代表取締役 北角 真一 |
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事業管理機関 | 公益財団法人三重県産業支援センター 事業部技術支援課 |
研究等実施機関 | 国立大学法人三重大学 大学院工学研究科 教授 池浦 良淳 三重県工業研究所 ものづくり研究課 主査研究員 中村 創一 |
アドバイザー | 株式会社遠藤製作所 国立大学法人岩手大学 有限会社浦尾金型製作所 住友電装株式会社 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社一志精工電機(法人番号:1190002001786) |
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事業内容 | 配線部品の金型からプレス加工、組み立て包装までの一貫生産。小型から大型の精密プレス金型の設計製作販売 |
社員数 | 36 名 |
生産拠点 | 第2工場(三重県津市) |
本社所在地 | 〒514-1113 三重県津市久居野村町811 |
ホームページ | https://www.i-seiko.co.jp |
連絡先窓口 | 株式会社一志精工電機 北角 真一 |
メールアドレス | info-hp1@i-seiko.co.jp |
電話番号 | 059-255-2456 |
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