精密加工
EV用リチウムイオン電池ケースプレス加工の汎用化を推進し海外勢に負けない中小サプライヤーを創出する
神奈川県
有限会社山内エンジニアリング
2023年2月14日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 圧倒的な高品質・低価格を実現するプレス複合深絞り技術を具現化した汎用プレス機用金型の開発 |
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基盤技術分野 | 精密加工 |
対象となる産業分野 | 自動車、電池 |
産業分野でのニーズ対応 | 高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、高効率化(人件費削減)、高効率化(使用機器削減)、高効率化(生産性増加) |
キーワード | 電池缶成形法、工法標準化、工程短縮 |
事業化状況 | 事業化に成功 |
事業実施年度 | 令和1年度~令和3年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
車載リチウムイオン電池のニーズ増大に伴い、プレス加工によるアルミ角深絞り電池ケースの需要が爆発的に増えているが、その量産には高額な専用機と金型が必要な為、後発メーカーの参入が困難でコストと品質を両立できるメーカーは国内に2-3社という寡占市場である。本事業では革新的な電池ケース加工法である複合成形工法を金型に具現化し、中小メーカーでも標準的に設備している汎用プレス機活用による先行メーカーや海外勢を凌駕するQDCを掲げた強い中小サプライヤーを創出する。
開発した技術のポイント
・量産構造を有する試作金型の開発
‐標準プレス工法解析から機構形状を最適化した試作金型製作
‐量産性(事業化)を担保する加工速度向上法の明確化
‐汎用プレス機を活用した疑似量産プレス加工による量産性実証
・成形時材料流動解析・板厚制御手法の確立
‐FEM解析による工程毎の加工設定値の影響調査及び適正化
‐簡易型による実証試験を積み重ねた高精度解析の確立
・摩擦抵抗の低減法の確立
‐試験片による摩擦抵抗性・耐摩耗性の検証
‐コーティングによる成形性及び金型寿命の向上検証
具体的な成果
・量産構造を有する試作金型の開発
‐川下ユーザーより提示されたBEV用大型アルミ電池ケースという具体的な形状及び寸法を実現する為に機構形状を最適化した試作型を製作し、量産時の工程能力指数Cpk1.67以上を担保したプレス試作品を完成させた
‐汎用機による高精度加工のために、機械剛性や精度のばらつきを吸収して標準化する手法とデータベースの作成に取り組んだ
・成形材料流動解析・手法の確立
‐有限要素法(FEM)解析によってブランク形状、パンチR、ダイR等の設定値が成形性に及ぼす影響を系統的に調査し、形状の適正化によって容器側壁部分の局所減肉率3%、スクラップ耳高さ10%以下を達成できる可能性を示した
‐簡易金型を作製し、成形実証実験により高精度なFEM解析の妥当性を検証した
・摩擦抵抗の低減法の確立
‐金型⇔被加工材間で発生する摩擦抵抗を低減させる指標を得るために、点接触及び面接触の両面からトライボ試験機による摩擦係数の深掘り測定を行った
‐アルミ電池ケース量産用金型に最適と考えられる金型コーティング方法と加工油選定法を確立した
知財出願や広報活動等の状況
本事業のプレス加工法に関する基礎的な知見については、補助事業開始以前に「角形電池ケースの製造方法」として特許出願済であったが(特願2018-053876号)、その後に特許権利化への審査請求を行わなかったため、令和3年5月に期限内審査未請求によるみなし取り下げ処分となっている。本事業で確立した大型電池ケースの超工程短縮工法の知財権取得については、今後の事業化の進捗を加味しながらより具体的な請求項のブラッシュアップを進め、その上で独立した別特許としての出願の可否を事業管理機関及び研究共同体、さらには川下ユーザーの意見を踏まえて決定する予定である。
研究開発成果の利用シーン
・EV用アルミ製角型リチウムイオン電池ケースの製造
・住宅用、産業用の定置式大型リチウムイオン電池や高精度・高強度を必要とするアルミニウム製箱型容器の製造
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
本事業のニーズについては1.金型のみ、2.プレス機と金型、3.プレス機と金型と洗浄機と周辺装置といったさまざまな組み合わせパターンのニーズが想定されている。その中で特に3のニーズに対応したフルバージョンでの提案力の構築を目標にして協力メーカーと共同での開発を進めており、すでにプレス機製造メーカーとの協業体制を敷いて顧客からの受注活動に邁進中である。
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作、加工・組立・処理、製品製造、共同研究・共同開発、技術ライセンス、技術コンサルティング
製品・サービスのPRポイント
国内26,000社の中小スタンピングメーカーが保有している一般的な汎用プレス機械に本事業で開発した金型を搭載するだけで、安価に高精度な製品加工が可能となり、その結果として高価な「A社製電池ケース角絞り専用プレス機」を多数設備している先行メーカーに負けないコスト競争力の普遍化を達成することで業界の活性化に寄与したい。
今後の実用化・事業化の見通し
2022年4月に川下ユーザー1社より、アルミニウム製大型リチウムイオン電池ケースの試作金型及び製品試作を2023年2月納期で正式に受注し、最初の事業化を達成した。さらに2023年2月には次世代バージョンの電池ケース試作も決定した。川下ユーザーは2024年までにこの試作型を使用した実証テストを繰り返しながら、量産フェーズに移行していく予定で、金型のみならずプレス機を含めた周辺装置の提案依頼もある。試作金型検証が順調に進めば2023年前半には複数の電池ケース用量産金型の受注が期待できる。
実用化・事業化にあたっての課題
事業化につながった川下ユーザーは東証プライム上場の自動車系大手メーカーのため、さらに中小規模のプレスメーカーに新開発金型をPRして拡販していくことがこれからの課題である。
事業化に向けた提携や連携の希望
中小プレスメーカーが大手電池メーカーと直接口座開設して取引を開始するのは、いかに技術力があっても企業与信の問題等からかなりハードルが高い。そこで与信担保力のある大手製造系、材料系商社との提携が必要となる場合があり、当社もできる範囲で微力ながらネットワークを活かした仲介をしていくつもりだが、やはりビジネスマッチング等の公的な支援があればさらに心強いと考えている。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 有限会社山内エンジニアリング 田名工場 |
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事業管理機関 | 一般社団法人首都圏産業活性化協会 八王子事業所 |
研究等実施機関 | 国立大学法人電気通信大学 情報理工学研究科 久保木教授、梶川准教授 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター 開発本部 物理応用技術部 玉置上席研究員、中村主任研究員 |
アドバイザー | 日産自動車株式会社 株式会社東芝 神奈川県立産業技術総合研究所 公益財団法人相模原市産業振興財団 株式会社さがみはら産業創造センター |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 有限会社山内エンジニアリング(法人番号:8021002025760) |
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事業内容 | 製造業 金属プレス用金型設計・製作、プレス加工エンジニアリング |
社員数 | 7 名 |
生産拠点 | 田名工場(神奈川県相模原市中央区田名2327-2) |
本社所在地 | 〒252-0243 神奈川県相模原市中央区上溝2448-2 |
ホームページ | http://yama-eng.com/ |
連絡先窓口 | 営業部 郡司 章 |
メールアドレス | a-gunji@y-eng.jp |
電話番号 | 042-713-1980 |
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