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研究開発された技術紹介

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表面処理

小児ぜんそく・気管支喘息・慢性閉塞性肺疾患などの、吸入治療に使われる医療用メッシュ式ネブライザの性能を決定づけるマイクロミスト発生用金属メッシュを開発する。異なる薬液に対する噴霧クオリティーの維持や粒径可選択に対応し、噴霧量増大、品質バラツキ小、低コストを実現することで医工連携に係わる課題を解決し、世界中で苦しんでいる患者への治療の高度化と生活の質の向上に貢献する。

山形県

スズキハイテック株式会社

2023年3月1日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 超音波噴霧解析とMEMS精密電鋳技術によるマイクロミスト発生用金属メッシュの開発
基盤技術分野 表面処理
対象となる産業分野 医療・健康・介護、航空・宇宙、自動車、産業機械、スマート家電、食品、電池、半導体、エレクトロニクス、印刷・情報記録、光学機器、電子たばこ
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(小型化・軽量化)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高性能化(精度向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(使用機器削減)、高効率化(生産性増加)、環境配慮、低コスト化
キーワード 噴霧量・粒子径分布に影響する超音波噴霧の理論体系、マイクロミスト発生用金属メッシュ形状の設計解析ツール群、MEMSプロセスによる高精度な3次元構造レジスト形成、マルチ噴流電極アクティブ電鋳めっき、高粘度、低表面張力の薬液の平均粒子径3μmの微細噴霧
事業化状況 実用化間近
事業実施年度 令和1年度~令和3年度

プロジェクトの詳細

事業概要

超音波駆動メッシュ式ネブライザ(薬液噴霧器)に搭載されるマイクロミスト発生用金属メッシュを開発した。超音波噴霧の流体解析【山形大学】をもとに3次元形状多段レジスト(感光性樹脂)の電鋳型を作製し【山形県工業技術センター】、精密電鋳めっき【スズキハイテック株式会社】により新たな機能を有する金属メッシュを実現した。開発したメッシュは、最適な噴霧粒子径の制御が可能であり、既存メッシュで噴霧が困難であった薬液も効率的に噴霧できることから、小児喘息、気管支炎、COPDなど呼吸器疾患において高い治療効果が期待されるものである。

マイクロミスト発生用金属メッシュ
開発した技術のポイント

【従来技術】
(課題1)既存の金属メッシュは、特定の薬液噴霧が可能であるが、粘度や表面張力など液性の異なる薬液では最適な噴霧ができないため、携帯型機器(職場や学校、外出先での活用、在宅治療)で効果的に治療できない。
(課題2) 既存メッシュは穴径のバラツキが大きく噴霧品質が低い。
(課題3) 治療部位により粒径を制御したいが、既存メッシュでは対応できない。
【新技術】
(解決策)
 ・超音波噴霧解析による金属メッシュ設計技術の構築。
 ・任意の3次元形状多段レジスト(電鋳型)を形成するための新たなMEMS露光技術の確立。
 ・大面積で均一性が高い精密電鋳めっき技術の確立。
 以上の検討により、これまで噴霧が困難だった薬液が効率的に噴霧可能であり、噴霧粒子径の制御及び、均一な噴霧を実現できた。

超音波噴霧解析・設計
MEMS露光方式
精密電鋳めっき加工
具体的な成果

【1】ネブライザの高機能化と物理的諸特性の向上
 ・噴霧量・粒子径分布に影響する超音波噴霧の理論体系構築
 ・メッシュ噴霧設計ツール構築(3次元・軸対称・準1次元モデル)
 ・粒径可選択且つ噴霧量50%増のメッシュ穴形状諸元完成
【2】高精度の3次元構造レジスト形成プロセスの確立
 ・3次元フォトリソグラフィ工法確立(ムービングフォーカス、波長選択)
 ・高性能噴霧を実証した5種類のレジスト形状創成(メッシュの型)
【3】精密電鋳めっき技術によるメッシュ品質向上と低コスト化
 ・マルチ噴流電極アクティブ電鋳法確立、従来比4倍以上の生産性
 ・携帯型ネブライザで高粘度・低表面張力の薬液に対応(世界初)
 ・肺に到達する治療効果の高い粒子径3µmメッシュ開発(世界初)

試作開発品の微細粒子噴霧
知財出願や広報活動等の状況

【論文発表】日本機械学会 第97期 流体工学部門 講演会、2019年11月7-8日、豊橋
(論文名)超音波噴霧メッシュ穴からの液滴形成過程の数値シミュレーション
(著者名)山形大学 中西為雄・小坂勘太、スズキハイテック株式会社 齋藤 潤一・三澤 孝夫、山形県工業技術センター渡部善幸
【論文発表】日本機械学会第98期流体工学部門講演会前刷り集,OS06-20,2020年11月
(論文名)超音波噴霧における複数メッシュ穴からの液滴形成過程の数値シミュレーション
(著者名)山形大学 中西為雄・小坂勘太、スズキハイテック株式会社 齋藤潤一・三澤孝夫・ぺトルス ヤサヤ サモリ、山形県工業技術センター 渡部善幸・加藤睦人
(論文名)正弦波圧力振動による平行円板間流れに関する研究
(著者名)山形大学 中西為雄・加藤俊哉・小金澤尚良、スズキハイテック株式会社 齋藤潤一・三澤孝夫・ぺトルス ヤサヤ サモリ、山形県工業技術センター 渡部善幸・加藤睦人
【論文発表】日本機械学会 第 36 回数値流体力学シンポジウム A02-3 2022年11月
(論文名)正三角形に配置された7つのメッシュ穴からの超音波噴霧の数値シミュレーション
(著者名)山形大学 中西為雄・小田 慎介・中野 麗、スズキハイテック株式会社 齋藤潤一・三澤孝夫・ぺトルス ヤサヤ サモリ

【特許出願】
(特許超出願日)令和4年7月27日
(出願番号)特願022-119702
(発明の名称)噴霧装置用メッシュ部材及び超音波液体噴霧装置

研究開発成果の利用シーン

本事業はネブライザーによる超音波噴霧での活用を目標に進めてきた。実用化する新技術は汎用性があり、サブミクロン精度の3D自由形状微細加工を活用する分野、あるいは超音波噴霧を活用する分野など、幅広い産業分野に技術革新を起こすことができる。当初展開を想定していなかった応用先も見つかり今後も新たなニーズや展開が期待されるものである。本事業の成果は、流体設計・3D形状レジスト形成・精密電鋳・超音波噴霧の4点が一体となった技術であるが、個々の要素技術においてニーズがある。【マイクロミストの発生】、【3D形状微細電鋳】、【3D形状レジスト】は具体的な試作依頼のあったものであり、今後も広く展開、応用を検討していく。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

医療用超音波駆動メッシュは川下の大手企業と具体的な開発打合せをスタートしたところである。
一方、本技術を応用した【マイクロミストの発生】、【3D形状微細電鋳】、【3D形状レジスト】の要素技術に対して、医療を含めた幅広い分野からの引き合いがあり、3次元フォトリソグラフィと精密電鋳めっきを組み合わせ、MEMS微細加工の試作開発を推進しているところである。
(MEMS微細加工1)噴霧用メッシュ・狭ピッチフィルタ・光学フィルタ、病理学用フィルタ 
(MEMS微細加工2)バイオミメティクス金型スタンパー(生体模倣技術) 
(MEMS微細加工3)マイクロ流路・インクジェット用ノズル・フォトマスク、メタルマスク 

提携可能な製品・サービス内容

設計・製作、加工・組立・処理、素材・部品製造、製品製造、試験・分析・評価、共同研究・共同開発

製品・サービスのPRポイント

世界初のあらゆる薬液に対応し、世界初の肺まで届く治療効果の高い、平均粒子径3μmの超微細粒子を実用化した。特に乳幼児の負担を軽減し、突然の発作を気にせず、いつでも、どこでも、生き生きと暮らせる社会環境を目指し、新技術の社会実装を進めていく。また波及効果としてはサブミクロン精度の3D自由形状微細加工を活用する分野、あるいは超音波噴霧を活用する分野など、幅広い産業分野に技術革新をもたらす可能性を秘めている。

今後の実用化・事業化の見通し

・超音波駆動メッシュ式ネブライザ用メッシュの事業化展開の課題として顕在化していることは、コロナ禍によるネブライザ市場の一時的な停滞である。科学的に立証されているわけではないが、ネブライザ治療時のマイクロミストによる、コロナウイルス飛沫拡散の恐れ(日本環境感染学会の対応ガイド)がある。市場動向を注視しながら、川下の大手企業と連携し着実に事業化を進めていく。
・噴霧のニーズは幅広い業種にあり、またMEMS微細加工は想定外の分野・大企業から試作依頼を受けている。今後、本事業の成果を存分に活かして順次実用化、事業化を進めていく。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 スズキハイテック株式会社 代表取締役社長 鈴木一徳、事業開発部 部長 齋藤潤一、他3名
事業管理機関 公益財団法人やまがた産業支援機構 振興部プロジェクト推進課
研究等実施機関 山形県工業技術センター 電子情報システム部 部長 工学博士 渡部善幸、他2名
国立大学法人山形大学 大学院理工学研究科機械システム分野 准教授 工学博士 中西為雄

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 スズキハイテック株式会社(法人番号:6390001000954)
事業内容 自動車部品めっき(HEV、PHEV、BEV)、半導体部品めっき、MEMS精密電鋳微細加工、研究開発(MEMS、CFRP)
社員数 162 名
生産拠点 本社工場(山形県山形市銅町2-2-30)、第2工場(山形県山形市宮町4-25-7)、尾長島工場(山形県東置賜郡川西町740-12) メキシコ工場:SURTEC&SUZUKI TECHNOLOGY MEXICANA S.A.de C.V(サン・ルイス・ポト市)
本社所在地 〒990-0051 山形県山形市銅町2丁目2番30号
ホームページ https://www.sht-net.co.jp
連絡先窓口 スズキハイテック株式会社 事業開発部 部長 齋藤潤一
メールアドレス junichi-saito@sht-net.co.jp
電話番号 023-631-4703