研究開発された技術紹介

有機薄膜太陽電池、有機ELなどの高性能、長寿命化のためには水蒸気・酸素をほぼ完全に遮断する超ガスバリア封止フィルムの開発が不可欠である。本研究開発では新しい有機・無機ハイブリッド薄膜材料であるSIOC、SICN、SIONCなどの耐熱性水蒸気バリア材料を用いた耐熱超ガスバリアフィルムを開発する。また、耐熱超ガスバリアフィルムの量産化を目指したロールツーロール型有機触CVD装置の開発を行う

CVDプロセスとロールツーロール成膜法の確立
・ Si 系有機・無機ハイブリッド薄膜材料の化学合成(CVD)プロセスの開発 → 水蒸気透過率10-2g/m2/day 以下
・ Si 系有機・無機ハイブリッド薄膜材料のロールツーロール成膜法の開発 → ロールフィルム輸送速度1m/min
(新技術)
新型の耐熱ハイグレイドバリアフィルム
1.PEN,PES,PIなどのフィルム基板を用い、耐熱性が高い
2.ガスバリア材料のSiCNなどを150℃以上で成膜しているため、耐熱性が元来高く、バリア性も高い

・各種性膜条件の検証と最適化
‐SiCN、SiOCN系ガスバリア材料の有機触媒CVD法による成膜条件、成膜パラメーターの最適化によりWVTR=0.001g/m2/dayレベルの値を可能にする成膜条件を確認
‐簡易型ロールツーロール型有機触媒CVD装置を用いた場合のPET及びPENフィルムのロール成膜条件を確認
・Si系有機・無機ハイブリッド薄膜材料に係る知見の蓄積
‐XPS(X線光電子分光法)によるSiCN系ガスバリア材料の分析を行い、N原子周りの局所的原子配置に関する新しい知見を入手
‐複数サンプルの膜密度を評価し、SiCNH系2.0gcm-3、SiCO系2.2gcm-3の値を得た
‐組成比の深さ分布をSIMS測定で実施した結果、極表面を除いて180nm程度までは一様な組成分布であることを確認
・ロールツーロール型有機触媒CVD装置の開発に成功
‐世界に先駆け、インライン式ロールツーロール型有機触媒CVD装置のグランドデザインと仕様を作成し、装置完成まで到達
・ガスバリアフィルムの分析で進展
‐耐候試験後にバリア性が低下する試料では、シミ、クラックなどの構造的欠陥と膜組成の変化が生じていることを発見
‐ナノ領域における機械的特性評価により膜の緻密度と密着性を評価し、より耐候性の高い皮膜の形成へつながる知見を入手

・実用化に時間がかかる(補完研究中)、H26年度に実用化の見込み
・有償サンプルあり(応相談)

・低コスト化 → 最大750mm幅のフィルムをロールツーロール型有機触媒CVD装置によって連続成膜
・機能向上 → この装置で成膜できるフィルムの水蒸気透過率は、ほぼ10-3g/m2/dayレベル

補完研究を行うとともに連携先メーカー・商社等を調査・検討
・補完研究として、ガスバリアフィルムのバリア性向上のための各種パラメーターの最適化を進めている。また、緻密な膜を成膜するために成膜前後のフィルムの処理についての研究も進行中
・研究開発を継続するための資金確保が必要となることから、現在、岡山県の補助金を活用したり、川下企業との共同開発を進めたりしている
・ハイグレイドガスバリアフィルムなどの商品を扱うメーカー・商社などの調査を行いつつ、提携などを検討していく