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企業経営と研究開発の視点をバランスよく保ち戦略的に顧客への価値提供を実践する

株式会社新日本テック代表取締役社長   和泉 康夫氏

顧客の声を踏まえつつ、品質の改善を大目標として開発を実施

研究開発を開始されたきっかけを教えてください

サポイン事業で開発した金型部品

ダイヤモンドを金型部品に使用する上では、①硬い、②燃える、③電気を通さないという3つの特徴をクリアしなくてはならない。コバルト焼結ダイヤモンド(以下、PCD)は、金型部品の精度、長寿命、メンテナンスフリーを実現するための材料として有望視されているが、PCDの製造技術が確立していなかったことで、実用化に到っていないのが現状であった。
当社は、サポイン事業を開始する時点で金型部品の試作品の販売はできていたのだが、その加工方法はPCD専用の加工方法ではなく、超硬合金の加工方法を流用した試行錯誤の上の方法であった。そこで、サポイン事業では戦略的に攻略するという目的を持ち、ダイヤモンドが持つ上記3つの特徴を踏まえて、専門の先生方に指導をいただきながら、1) 熱劣化レスPCD接合技術、2) 熱分解カーボン式放電加工技術、3) 紫外光励起PCD研削加工技術製造技術の確立を目指して、原理を突き詰めて研究を行う必要があった。

研究開発の高度化と将来的な事業化の2つの視点を常に意識

研究開発はどのような点に配慮して進めてこられたのでしょうか

私自身が技術畑上がりの経営者であるため、経営者の視点と技術者の視点両方持って考えるように努めた。また、技術者なりの経営手法や事業計画に配慮していたように思う。
申請書の時点で、研究開発後のストーリーが明確でなければ採択されない。自らが研究開発のリーダーを務めるのは初めてではあったが、以前にメンバーとしてサポイン事業に参画していた経験を活かし、技術経営の難しさを理解した上でストーリーを重視して臨んだ。
技術者の視点は、技術をどのように形にするかという点で考えることが多く、技術の高度化に集中してしまうため、派生テーマの創出や事業化までは持って行きづらいのが正直なところである。対して、一般的な経営者の視点は、人事や経理、営業など、技術だけではない事業推進上の課題を踏まえることが多い。開発して生み出した技術をどのようにして世に活かすことができるのか、ということを常に考え、どちらか一方の視点に偏らないようにしていた。

研究開発を進めてこられた中では、成果を活用する方向性が様々拡大されたようですね

ある方からの紹介をきっかけに、熊本大学の渡邉純二教授から指導を受けることになり、結果的に派生テーマの創出にも繋がった。先生がサポイン事業の研究メンバーに入られたのは偶然に近い要素もあるが、先生からいただいたアイディアが新しい成果へと繋がっている。人のご縁がもとになり、本来のサポイン事業の研究から派生的にテーマが生まれたことで、研究開発の新しい可能性が広がっていくことは非常に面白いことだと思う。

高度化した技術を活かして、まずは既存の顧客に新たな価値を提供する

サポイン事業を開始された当初は、研究開発のゴールとしてどこまでを想定しておられたのでしょうか

PCD専用の接合・放電・研削という3大技術テーマの開発を当初から研究内容に掲げて取組んだが、メンバー各位のお蔭で、開発期間も大幅に前倒しできた上に、ほぼ目標も達成することができた。
ただ、「イノベーションのジレンマ」とも似ているが、高度なことをすればするほど顧客の別のニーズから乖離し、自分達のストライクゾーンを狭める結果になる。技術を高度化してもそこに市場が在るか分からないし、合理的な判断だけでは壁にぶつかることもあるだろう。

どのような取組みを通じて技術の高度化に伴う壁を乗り越えてこられたのでしょうか

当社は、最終的には半導体の業界まで顧客対象を広げることができたが、改めて振り返ると、既存の仕事・技術を高度化して既存の客先に提供したことで、売上も上がり、事業化が進んだように思われる。
既存の技術を既存の顧客に対して提供するのが足元の事業だが、次に手を打つとなると、既存の顧客に新しい技術を提供するか、新しい顧客に既存の技術を提供するかのどちらかになる。これは、前者のほうがやりやすいのではなかろうか。差別化のネタとして技術の高度化を行っているが、技術を活用して新規の顧客と商売をしようとしても既存の同業他社が入っていることもあり、なかなか入りにくいところである。例えば、自社や関連各社が持っている顧客のネットワークを用いれば既存の客先に新規の分野を提供できる機会が増える。新規の客先に新規の技術を提供するケースは、技術も顧客も新しいのでなかなかうまくいかないのではないかと考える。

サポイン事業を効果的に利用する上でのメッセージ、アドバイス

最後に、今後サポイン事業に応募を検討される方や、現在実施されている方にメッセージをお願いいたします

サポイン事業に応募する際には、あらかじめ試作品を製作し展示会等でマーケットテストを行い、売れる可能性があることを確かめてから応募する・資金をつけるといった方法も考えられる。
少なくとも当社は、自社の製品がある程度売れる見込みがあったことで、サポイン事業に踏み込みやすい状況だった。 ある程度売れるかどうかを把握するには、いろいろな場に出向いて情報を発信したり、まずは知ってもらうことが重要である。また、目に留まるものを出していかなければいけない。

製造装置の外観

サポイン事業を事業化に向けてのアクセルとして活用したということですね

はい。もちろん、事業を行い顧客へとつながるネットワークを構築する上で、良いコーディネーターとの出会いは重要であるが、これは運に左右される要素もあるのではなかろうか。
経営は単にものづくりだけではなく、販路開拓やどうやったら売れるかということを考えて進めなければいけない。ものづくりだけで終わってはダメで、価値づくり・仕事づくりを同時に進める必要がある。
日本の企業は先行事例を求めるため、概してビジネスのスピードが遅いように思う。対して、海外企業の動きはとても早く、例えば台湾でチラシを配ると、香港や上海から問い合わせが来ることもある。考えすぎるよりも、まず事業としてやってみよう、というスピーディーな考えが海外では主流のようだ。

今後サポイン事業をより盛り上げていくには、どのような取組みができるでしょうか

経済産業省では産業牽引型ポスドク採用インターンシップを行っており、ポスドクを中小企業にインターンに行かせているが、サポイン事業と産業牽引型のインターンを掛け合わせて、ポスドクが産業を牽引するようなことも考えられるだろう。
サポイン事業を通じてポスドクの研究者が企業と共に研究開発を行い、技術を高度化する上で、社会への価値の出し方を学ぶ機会にもなるだろう。彼らにとっても進路を考える場になったり、ネットワークもそこから生まれる。
事業を行う上で、毎回新しい事業シナリオやストーリーを作成し、ビジネスモデルを構築するのはとても難しいことだ。過去の事例に共通したスキームや成功事例をもとに、これからの事業を実施することは悪いことではない。成功事例のパターン化や、スキームは同じでも、地域産業に合った形に独自にカスタマイズして事業を実施するのがよいのではなかろうか。

サポイン技術情報
プロジェクト名:
長寿命・微細PCD(コバルト焼結ダイヤモンド)金型部品の開発
事業実施年度:
平成22年度~平成24年度
研究開発の目的:
接合技術、放電加工技術、研削技術に関して、従来の課題を克服する専用製造装置を製作し、革新的なPCD金型部品の高精度加工技術の開発
事業化の状況:
サポイン事業終了時点では事業化間近の状況
サポイン事業の終了と同時に、多くの受注に成功し、現在も順調に事業化が進んでいる