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広く情報を入手する中で、研究開発のチャンスを逃さずチーム全体で事業化の可能性を高める

株式会社モールドテックジャパン取締役 営業部長      中村 修氏(写真中央)
               技術部 開発室 主任    城 祐光氏(写真右)
一般財団法人金属系材料研究開発センター非鉄材料研究部長  箕浦 忠行氏(写真左)

ライバル企業の開発情報をきっかけに研究開発の取り掛かりを入手

研究開発のきっかけを教えてください

きっかけは10年以上前に遡る。当時、牧野フライス精機(株)(以下、牧野フライス)が「デジタルしぼ加工技術」を開発した、という情報をHP上でたまたま見つけた。当社はしぼ加工技術を扱っていたのだが、他社が同じことをデジタル化したという点に強く危機感を覚え、ライバル企業ながら牧野フライスにヒアリングさせてもらったのが最初のことになる。その後当社では継続的に(デジタル)しぼ加工の研究開発を進めてきた。

ということは、10年以上前に牧野フライスが情報を出してこなければ、今回のサポインの研究開発は生まれてこなかったのでしょうか

開発したサンプル板①

このタイミングでは開始されていなかったように思う。しかし、ちょうど5年前に、ヨーロッパでも同じような研究をしているという情報を入手した。ドイツとスイスの放電加工機メーカーが研究を行っており、現在当社との競合関係になっている。牧野フライスのデジタルしぼに関する事前情報がなければ、当社の研究開発スタートは5年前以降になっていたかもしれない。
今から考えると、自社の事業に関する情報収集やアンテナを張っていたことが、先んじて研究開発を開始したきっかけになったように思う。

技術の価値を明確にした上で、ターゲットとなる市場を選定し、早く市場に出す

市場はどのようにして選定したのでしょうか

しぼ加工のニーズは自動車産業や情報家電産業が想定される。高級車の内装などは手間暇を掛けることで品質を追求しているが、それらは当然高コストへと繋がっている。しぼ加工が対象としている低コスト製品では、そのような余計な手間暇を掛ける工程は、とても実現出来るものではない。
逆に言えば、従来のしぼ加工では再現出来ないような品質を余計な手間暇を掛けずに低コストで提供することが出来るのであれば、その付加価値は計り知れないということになる。自動車産業はその典型的な産業だと考えた。

技術が提供する価値を明確にし、早く製品を形にするために市場を選定したということですね

従来は、樹脂に塗装を施してあたかも高級そうに見せていたが、従来のエッチングしぼではとても実現出来ない高品質のしぼを提供出来れば、後加工の工程が大幅に軽減されることになり、川下の自動車メーカーへ大きな訴求ポイントとなる。
市場に早く製品を出すためには、開始時点で自動車メーカーをターゲットにすることを明確に意識していた。

目的に適した新しいチーム体制、ネットワークを確立して研究開発を推進

研究開発を進めていく上では、どのような体制を取られたのでしょうか

通常の研究開発スタイルは機能別に分け、縦割りで業務を行っている。ただし、今回の研究開発の内容は、当社に今まで縁がなかったCAD/CAMシステムを使用する必要があった。
当社が持っている既存のノウハウや知識、人材では明らかに限界があると考えた。そこでCAD/CAMシステムに通じた人材を外部から採用した。
また、新しい取組みとして社内的には4名のチームを本研究開発のために組んだ。レーザー加工に特化した新しいチームで、デザインから技術開発、加工機操作などを総合的に行う新しいチームである。
また、当社の加工機システムに対する知見の少なさを補うため、加工機メーカーに協力を依頼した。CAD/CAMシステムについては東京大学や静岡大学の先生からアドバイスをいただいた。市場のニーズを反映させるために、自動車メーカーや情報家電メーカーにはアドバイザーというかたちで要望を伺った。事業管理機関には既存のネットワークで様々な方を紹介していただいた。
大きな壁にぶつかった時、大学の先生に『原理原則に立ち返らなければいけない』と、助言を頂いたことがある。個別の課題で適切なアドバイスが受けられるシステムやネットワークが、開発には大いに必要だと切に感じた。

想定外の問題が発生した際には、一度原理原則に立ち戻って突破する

研究開発を進める上ではどのような問題が発生しましたか

サポイン事業を開始してからちょうど1年後くらいのことになる。その時使用していたCAMでは、加工に必要なデータ(しぼ形状まで再現した金型CADデータ)が膨大すぎて処理しきれないことが判明した。新たな加工方法の探索とCAD/CAMシステムの開発に1年近くかかった。今振り返るとその時間がもったいなかった。

その問題はどのように解決されてこられたのでしょうか

開発したサンプル板②

膨大なデータ処理は理論的には可能なのだが、実際に処理するとなるとスーパーコンピューターが必要であり、現実的ではない。『原理原則に立ち返る』と言う助言を頂いたことで、旧CA D/C A Mシステムを離れ、現CA D/-システムの構想を生み出すことが出来た。ただ、新たにこのCAD/CAMシステムをどこでどう作るかという問題が浮上した。
過去のサポイン事業でたまたま特殊な3Dスキャナーを開発していたのだが、そのときに共同開発を行ったメーカーが、新しい方法の実現に繋がるノウハウを持っていることが分かり、共同で開発を行った。今から思うと、現業や過去のサポイン事業でも、研究開発用のツールやソフト・ハードの研究開発に特化したメーカーとの付き合いが多かった。
結果的に、当時のサポイン事業や現業で付き合いがあった事業者が、今回の研究開発で壁に突き当たった時に力を貸してくれている。

サポイン事業を効果的に利用する上でのメッセージ、アドバイス

最後に、今後サポイン事業に応募を検討される方や、現在実施されている方にメッセージをお願いいたします

研究開発を進めていく上では、目的に即していかに良いチームをつくるかが肝だと思う。社内外を問わず、事業化までの可能性やプロセスをきちんと議論する必要がある。事業化の可能性が分からないままスタートすると、目的が共有されずうまくいかないことも多いのではないだろうか。チームがどのような分担でどういった製品を作り上げ、製品化の可能性は間違いないか、というところまで議論し、青写真を作ってスタートすることが重要だと思う。
また、開始前の準備や、どこに問題が起きそうなのかということを、見切り発車でなく詰めておいたほうがよい。国から資金を提供してもらうからには、研究開発のスケジュールを適切に管理する必要があるし、成功するという意識を持たなければいけない。成功の可能性が20%ではやるべきではない、ゴールは世に製品を出すところである。
サポイン事業の研究開発成果の事業化を進めているが、製品を開発したことによって様々なメーカーからデザインサンプル作成の要望が多数あった。うれしい半面、3次元加工技術開発の妨げになることから、自費で2次元加工機を作製し、デザインサンプル作成は、こちらの加工機で賄うことにした。
予想以上の開発の依頼があったことを考えると、製品を世に出すことはやはり大切だ。

サポイン技術情報
プロジェクト名:
金型3次元テクスチャリングレーザー加工技術の開発
事業実施年度:
平成22年度~平成24年度
研究開発の目的:
しぼ加工に対してレーザー加工技術を適用することによる、低コスト化、複雑形状化、短納期化かつ環境配慮を取り入れた金型のしぼ加工技術の開発
事業化の状況:
サポイン事業終了時点では事業化間近の状況
今後は実金型への加工を継続実施し、ロール加工技術開発も進める予定