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高いモチベーションを持つメンバーによる自発的かつ密な情報共有・ニーズ収集で事業化までの時間軸を短縮

能勢鋼材株式会社  取締役                             能勢善男氏(写真右)、
         滋賀製造第1グループ ウォータジェット・プラズマ担当 主任    西田真一氏(写真中央右)
株式会社MORESCO  金属加工油事業部 金属加工油営業部 グローバル開発グループ  稲垣秀和氏(写真中央左)
滋賀県東北部工業技術センター 機械・金属材料担当 主査              今田琢巳氏(写真左)

問題意識の高い企業が集まる場での発信をきっかけに、共同研究へと展開

研究開発を開始したきっかけを教えてください

2008年にウォータジェット切断機を導入したことを契機に、当社(能勢鋼材)では、「切断をより早く・より安く・よりきれいに行いたいという顧客の要望を叶えるための改良」と、「ウォータジェット切断機を活用した新市場の探索」に今まで以上に力を入れていた。新市場を探索する中で、ウォータジェット切断機が航空機分野で使われているという情報を得たが、航空機分野のことを殆ど把握していなかったため、情報収集のために近畿経済産業局が主催する航空機関連のセミナーに参加した。
MORESCO稲垣氏との出会いはそのセミナーがきっかけである。切断技術の改良について話をしたことをきっかけに、MORESCOとの航空機分野に向けた研究開発に動き出した。

同じようなタイミングで航空機分野への参入を考えていたのですね

当社(MORESCO)でも当時、航空機分野への参入について検討していた。当社の本業は潤滑剤等の化学品の開発だが、航空機分野で使われているCFRPを切断するウォータジェット加工に注目していた。ウォータジェット加工に使う化学品に関して何かできないかと考えセミナーに参加したところ、タイミング良く能勢鋼材と出会うことができた。

非常に良い出会いへと繋がったようにお見受けします

問題意識の高い企業が集まる場に顔を出し、積極的に情報を発信したことで、技術の事業化に高いモチベーションを有する企業の出会いに繋がった。直接顔を合わせる機会で無ければ、このような共同研究開発にまでは発展しなかったように思われる。新市場に向けた意気込みや課題は、web情報だけでは分からない。直接顔を突き合わせて話をすることで、より具体的な説明や紹介に繋がり、次のアクションが生まれるように思う。

採択に至るまでの期間を有効に活用、顧客目線を強く意識した目標を設定

サポイン事業への採択にあたりどんな準備をされましたか

実は本サポイン事業は、最終的に採択される前に2回応募を行っており、その際には採択に至らなかったという経緯があった。一方で、最初に応募してから採択に至るまでの期間には、公設試験研究機関にウォータジェット加工機の試験機を借り、サポイン事業で実施予定の研究開発の予備試験を行う等、データの蓄積や予備試験を繰り返し行い、研究開発の精度をより高める期間に充てられた。予備試験等を通じて、サポイン事業開始前から知見を蓄積するとともに、成果への手ごたえを得ることにも繋がったことが、3年間という限られた期間で成果を出す上で大きなアドバンテージになったように思う。

研究開発の具体目標はどのように設定されたのでしょうか

ウォータジェット切断機

「流体の物性を制御する」というMORESCOの技術を利用することでウォータジェットのパワーを向上させ、「より早く・より安く・よりきれいに切断するシステムの開発」を研究開発の目標とした。その中でも、顧客ニーズを探る中から、「今までの切断のクオリティを保ち、今まで以上に早く切る」ことが最優先事項であると位置づけ、スピードアップを重視した研究開発を行った。事業化の観点からは、開発したシステムによる受託加工、開発システム自体の販売、加工液の販売、パテント戦略の4つを目標として定めた。

多様な機会を活用した綿密な情報共有が強い連携を生み、研究開発をより効率化

研究開発を進めるうえでどのような点に配慮されましたか

データの解釈や方向性の検討にあたり、メンバー全員で考えることが出来るように、情報を全員で共有出来る環境づくりを心がけた。例えば、Dropbox、メーリングリスト等のツールを活用するとともに、研究開発に携わるメンバーが直接顔を合わせる「実務者会議」を月に1回以上開催し、密な情報共有に努めた。直近の研究開発の内容をメンバー全員が把握したことで、多様な視点からのコメントや意見が出ることに繋がったのではないだろうか。
また情報共有の頻度を密にしたことで、実務者会議等で上がる報告内容の事前共有や想定に繋がり、判断や意思決定のスピードアップ、より効率的な研究開発に活かされたと思う。
実務者会議のような「目的を明確に意識した場」以外でも、移動や会合前後のちょっとした間で気軽にコミュニケーションを取っており、情報共有や進捗把握の機会を多く持った。

情報をメンバー全員が知ったことが研究開発の効率化につながったような具体的なエピソードはありますか

サポイン事業で開発した加工液の循環システム

ウォータジェット切断機は切断に関わる変数が多岐に渡り、最適な切断条件を総当たりで調べるのは明らかに時間が不足する。必然性が高い変数を絞り込むノウハウがなかった際に、それぞれに専門性を持つ研究開発メンバー間で互いの研究結果を密に共有したことで、一から考えるよりはるかに短い期間で最適な変数や切断条件を設定することに繋がった。情報共有が、研究開発の効率化に繋がった一例である。
課題の解決方針をメンバー全員で検討し、話し合いを通じた解決方針に則り実験を行い、実験結果をすぐにメンバー全員で共有、更に新しい方針を検討するという課題解決のPDCAサイクルを早く回すことは、研究開発成果を生む上で強く意識するとよいと思う。密な情報共有に繋がる取組みを行っていたこともあるが、情報共有の蓄積を通じて互いに意見を言い合える柔らかな人間関係を築いていたからこそ為し得たことでもある。

研究開発従事者がニーズを収集し、明確に目標を見据えて研究開発を実施

顧客との接点構築で工夫されたことはありますか

市場のニーズを満たす技術や製品を開発する以上、ニーズ収集と研究開発の間に境目は無いだろう。研究開発に携わるメンバーが想定顧客に足を運び、ニーズ把握と研究開発の役割を同時に担う中で研究開発を行った。顧客に直接足を運び、開発や設計を担当する部門から解決すべき課題や将来の構想等の情報を直接得て、開発内容に反映した。直接ニーズを把握する機会を作ったことで、ウォータジェット切断に求められる開発優先事項をより明確に意識した研究開発を実施することに繋がった。
サポイン事業で開発したシステムは、サンプル加工等を通じて顧客から良い評価をいただいており、ニーズ収集を通じた明確な目標設定が実を結んだと考えている。

サポイン事業を効果的に利用する上でのメッセージ、アドバイス

最後に、今後サポイン事業に応募を検討される方や、現在実施されている方にメッセージをお願いいたします

メンバーとの信頼関係を構築し、個人の集まりではなくひとつのチームとして研究開発を進めることが重要なように思われる。メンバーが自分の担当領域以外にも関心を持ち意見交換ができるような、目的を共有した一体感のあるチームは、研究開発に行き詰まったとしても互いに知恵を出し合い協力することで解決に向かうことができるのではないだろうか。
また、その中では実用化や事業化の目標を明確にすることもまた重要である。目標を見据えるとともに優先順位を絞り込み、チームとして進めることで、短期間での研究開発成果の創出に繋がったと思う。

サポイン技術情報
プロジェクト名:
高密度高集束水を用いたウォータジェット加工技術の高度化に関する研究開発
事業実施年度:
平成24年度~平成26年度
研究開発の目的:
水に水溶性添加剤を加え密度を高めた加工液(高密度高集束水)をウォータジェット加工に利用することで、①WJ加工能力の向上、②運用コストの削減を達成する
事業化の状況:
サポイン事業終了時点で事業化に向けた開発の実施段階であり、今後は循環システム実稼働時の初期問題を抽出したうえで、それらを解決して循環システムの信頼性向上を実現する計画である