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短い研究開発期間の中で、地域の団結力やアドバイスを有効活用してゴールを目指す

株式会社Trees Network 代表取締役社長   齊藤 健氏

地域振興の観点から函館に研究室を設立

サポイン事業に応募されたきっかけを教えてください

開発成果の電磁遮蔽繊維

もともと電磁波の遮蔽技術に関する研究を前職で行っていた。独立して研究所を創ろうとしたのは3年前で、当時、場所は富士山麓と決めていた。
ところが東日本大震災の後、周辺では大規模な余震が発生していたため場所を変更せざるをえなかった。前職の同僚より北海道を提案され、数か所が候補に挙がり、視察・調査した結果、最終的に函館を選択。かつては日本有数の栄えた都市だった函館が、産業を活性化させようと努力を続けているからだ。東京などの大都市圏では決して知ることができない、日本全国の各地域が直面している厳しい現状を、函館は映し出していると感じた。長い年月をかけて築き上げてきた市の支援体制や産学官連携が充実している部分も魅力であった。そこで、微力ながらも何か貢献できることはないかと考えた。
そのような経緯があって、地域振興の観点から函館に研究室を設立した。サポイン事業は、函館市役所の方と話をしている際にご紹介いただいた。

御社はベンチャー企業ですが、研究体制のメンバー選び
やサポインのゴール設定はどのように行われたのですか

2011年7月に初めて函館を訪れた後、11月頃にサポインの存在を知った。それから公募締切までの約1カ月間で函館市役所や北海道経済産業局などから紹介を受け、自らトップダウンでメンバーを選定、ビジョンを明確にしてチームを組んだ。
とにかく積極的に人を模索し、会いに行った。翌年5月のキックオフミーティングの時点では、ビジョンを共有する最適なメンバーをほぼ固定することができた。ゴール設定に関しては、申請前にメンバー間で十分に調整できたわけではない。国際的な動向も鑑み高い目標を設定したが、メンバーは全員よく力を出し切ってくれたと思う。
活動拠点は研究室のある函館を中心に、本社がある東京と、メンバーに入っていただいた(独)産業技術総合研究所がある筑波の計3カ所であった。函館では集中して実験を行い、分析等は東京・筑波で行う。場所にこだわるというよりは、実質10カ月間の研究開発期間の中でベストの成果を出すため、時間的効率を重視した。現在、函館には研究などのため月1、2回足を運んでおり、それ以外は海外展開も見据えて都内で販売システムの構築や販売ルートの開拓などを実施している。

的確な役割分担とアドバイスを受けていたことが成果達成と実用化への近道

サポイン事業開始当初は基礎研究の段階であったにもかかわらず、10カ月後の終了時点では実用化間近まで到達していらっしゃいます。サポイン事業開始前に事前準備を周到に行われたのでしょうか

前職からこの分野でずっと研究を行っていたので、ある程度の知見は持っていた。ただ、基礎研究の段階から1年弱で実用化間近まで到達できたのは、共に研究開発を行ってきたメンバーが良かったからだと考える。(独)産業技術総合研究所が基礎研究、他のメンバーが応用、というように役割分担をした。また、打ち合わせ時には北海道経済産業局や函館市役所の方々にもご参加いただき、その場で様々なアドバイスを受けた。
サポイン事業の管理は厳正であり、経験豊富な(公財)函館地域産業振興財団に事業管理機関として牽引していただいたことも、スムーズで安心な推進に有効であったと思う。その結果、前職ではできなかった技術の基礎や原理まで遡り、集中力を高めて研究が出来たことは、今後の技術力向上にも直接的、間接的に効果が現れてくると思われる。
本音を言えば、大上段に構えた目標に対し、研究開発期間1年間という限られた時間でどこまでやれるか確信はなかった。ただ、地域貢献の思いも強かったため、目標に向かって一生懸命に取り組んだ。

問題が発生しても一つずつ解決、その過程を通じてのネットワーク構築は財産

サポイン事業を振り返ってみて、どのような問題が起きましたか、またそれらをどのように解決されましたか

最も研究開発に影響を与えた問題は、資金繰りに関するものであった。当社はベンチャー企業のため、精算払いのシステムや銀行借入のノウハウが不足していた。他にも、体制の人員確保等、様々な問題が発生したが、ひとつずつ紐解いていき、丁寧に解決していった。
活路を見出すためには、成功した経営者、特に自分と同様の創業経営者に話を伺った。皆様同じような苦労をされており、資金繰りの問題だけでなく、共に事業を進めていく上で、人や組織を的確に見極めるためにはどうしたらよいか、といったマネジメント面でのアドバイスもいただいた。 資金繰りについては、研究体制にも入っている企業の社長に銀行をご紹介いただいたり、函館市役所や北海道経済産業局のご紹介により、多くの方々との出会いをいただいた。
サポイン事業を通じて、企業や組織の垣根を越えて、普段はなかなか出会えないような技術者・経営者の方々から温かく熱心なご指導をいただくことができ、日本という国の素晴らしさを改めて感じた。今回築けた国内外の様々なネットワークは、今後事業を展開していく上で大変貴重な財産となった。

研究開発上の問題はいかがでしょうか

研究の進捗の遅れ等、研究開発においても問題は発生した。研究は人に任せられる部分と自分でやらなければいけない部分がある。任せていた部分で成果が上がらない場合は、サポートしたり、自分が並行して進めなければならない場面もあったが、大切な場面では大胆に優先順位を付けて進めた。振り返れば反省点もあるが、得難い経験ができた。

サポイン事業を効果的に活用する上でのメッセージ、アドバイス

最後に、今後サポイン事業に応募を検討される方や、現在実施されている方にメッセージをお願いいたします

サポイン事業を実施させていただいたことで、企業としての信頼性や技術力の高さに関する客観的評価が向上したと感じる。おかげさまでサポイン事業終了後も、各機関からの協力、資金調達や、新聞・雑誌・書籍への掲載、海外からの注目度の高まりなど、手応えを感じている。サポイン事業に採択されたことにより、国を代表しているという意識も芽生えた。
まずは、何事も経験してみることが重要であり、その経験そのものが財産となる。特にベンチャー企業の方々に対してのメッセージは、何か困ったときはチーム内だけで解決しようとせず、経済産業局や自治体にも相談することをお勧めしたい。直接ゴールを目指すとなかなか辿り着けないこともあるが、周囲の手助けを借りながら間接的に目指すことによってうまくいくこともある。今回も事業管理機関である財団、市役所や行政の方々などに多くの場面で助けていただいた。サポイン事業は「地域振興」という大義名分があり、皆が同じ方向を向いている。会社の経営が大変でもそれを忘れずに進んでいけば、必ず路は開けると確信している。

サポイン技術情報
プロジェクト名:
高い電磁遮蔽性能と透明度を有する繊維製造のための織染加工技術の高度化開発
事業実施年度:
平成23年度~平成24年度
研究開発の目的:
高い電磁遮蔽性能と透明度を有し、広帯域の周波数に対応する電磁遮蔽繊維の製造技術の開発
事業化の状況:
サポイン事業終了時点では実用化間近の状況
現在は成果の一部を活用し、MRI室やスマートフォンカバーとして実用化、海外へも展開予定