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明確な役割分担を行うとともに、活発な意見交換を通じて、研究開発を強力に推進

株式会社ホクエイ  製造部 係長(光触媒関連担当)  冨樫邦弘氏

明確な役割分担を行い、活発な意見交換を通じて、研究開発を推進

研究開発を開始したきっかけを教えてください

当社は元々光触媒の事業を行ってはいなかったのだが、10年ほど前にOEMの依頼を受けて光触媒製品の製造を開始した。その後、東京大学が主導で行っていた国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の光触媒関連の大規模プロジェクトに参画したことをきっかけに、本格的に光触媒の研究開発を開始した。サポインプロジェクトにおける共同研究先の内、北海道大学触媒化学研究センター、昭和電工(株)および昭和電工セラミックス(株)はNEDOプロジェクト当時からの付き合いとなる。

サポイン事業に応募したきっかけを教えてください

サポイン制度は自分が前職の在籍中に取り組んだことがあったため、以前から制度の存在は認識していた。また、北海道経産局や支援機関等からは補助金制度に関わる情報を頂いていた。 NEDOプロジェクトの終了後、サポイン事業の応募分野に「塗装」が追加され、当社の抱えている課題解決の研究分野と合致していたため、サポイン事業への応募を決意した。
NEDOプロジェクトでは、基礎的な研究開発の観点から当社の課題を整理することができたため、その点では大変に有意義であった。しかし、揮発性有機化合物(以下、VOC)の分解という当社の事業化イメージを達成するには、さらなる開発努力が必要であった。今回のサポイン事業では当社を中心とした産学官連携により、川下ユーザーの課題を技術目標に反映させながら、研究開発を推進することができた。

プロジェクト実施にあたって工夫した点を教えてください

大企業の方が生産設備や技術レベルが高いため、本件は大企業の皆様にも多大なご協力を頂いた。さらに役割分担として、北海道大学には光触媒材料や反応などでの基礎研究を、昭和電工(株)には新触媒の量産技術など、日機装(株)にはLEDの光源開発を担当して頂き、切り分けを明確に行ったことが今回の研究開発をより上手く進めることに繋がったと思う。
また、プロジェクトの中では実際の利用シーンを想定した実証実験も行った。これには手間と資金が必要となるため、とてもではないが当社単独では行うことができなかった。この実験により、実用化に向けた有意義な結果が得られた。

共同研究先との進捗確認はどのように行っていましたか

新規改良した光触媒ユニット(小型空調用イメージ)

年に3回進捗確認を行う委員会を北海道で開催していたほか、随時個別に相談を行うことで研究課題への対応を行っていた。進捗確認を行う委員会では、毎回会議の情報を外部に漏らさないことを約束する書類に全員で署名を行ってから会議を開催していた。これは自分の発案で行ったことであるが、書類1枚に署名するだけでも外部に漏れないという安心感が生まれるため、自社の技術的な情報・動向を本音で話してくれた。そのため、今回の研究開発に役立つ情報を聞くことができ、有意義な会議となった。

サポイン事業を通じて、研究開発に関わる人材の重要性を認識

研究開発中に生じた問題はありましたか

サポイン事業での研究開発を担当していた技術系社員がプロジェクトの途中で退職し、研究開発計画に支障が生じた。他に研究開発分担を完全に任せられる人材が社内には少なく、研究開発に関わる人材面での不足を痛感した。

人材不足により生じた問題をどのように解決されましたか

本開発リーダーである自分が研究・生産・技術営業等に関わる全ての仕事を片付けていく手法を取った(中小の技術者としては当然であるが)。そこで、多方面に動いて諸問題を解決させていった。現在の事業化に向けた活動では、光触媒部材の製造・量産技術などは自分が担い、実際に図面を引く作業や機械を作る作業は別の技術者が担当している状態である。
新規に研究開発人材を登用しようと何人もアプローチを行ったが、光触媒に関連する技術・知識を有する人材が実際には少なかった。今回のサポイン事業の研究開発が、当社の本来の事業とは異なる分野であることが、人材を確保できなかった要因だと考えている。
現時点での事業化に向けた大きな課題は人材の確保であるため、政府には中小企業に入社してきた若い人材に奨学金を支給する等、良い人材を採用するための支援を行って頂けるとありがたい。

想定顧客以外からもニーズを収集し、活発なPR活動により成果を発信

市場のニーズはどのように把握していましたか

サポイン事業に参画頂いた共同研究先・アドバイザーの方に市場ニーズについての意見を頂いた。その際、アドバイザーを交えて、VOCで実際に問題を抱えている企業情報などを交換し、有意義な委員会とすることができた。以前のサポイン事業(別テーマ)でアドバイザーとして多方面の想定顧客を呼んだところ、情報流出を気にしてあまり積極的に発言してもらえなかったことから、このような工夫を行った。これらの企業・大学とはサポイン事業が終了した後も引き続き連絡を取り、事業化に向けた研究開発に協力を頂いている。
それ以外にも、当社の関東営業所からの活動情報や、東京方面の技術系商社からの汚染ガス除去分野の知見を多く有していたため、市場のニーズ把握に役立った。
また、今回開発した技術からの派生で、コートした光触媒部材から触媒材料が剥離しにくいようにする手法も開発した。こちらの技術についても展開先を検討し、自動車分野からサンプル提供の依頼を受けている。想定顧客以外の横展開を検討することで、幅広く顧客開拓を進める必要性を感じた。

多孔質光触媒部材(上)、大型処理装置イメージ(下)

研究開発成果のPRはどのように行っていますか

光触媒関連の講演や研究会発表、各種報告書などを通じて、研究開発成果と新事業のPRを実施している。また、先々の展開を見越して、空調関連の展示会にも出展を行う等、PR活動を行っている。その際、展示会出展に当たり、北海道経産局に出展費用の支援を頂いた。

サポイン事業を効果的に利用する上でのメッセージ、アドバイス

最後に、今後サポイン事業に応募を検討される方や、現在実施されている方にメッセージをお願いいたします

まずは各プロジェクトが、社長主導か技術者主導かタイプを2分して各支援策を考慮して頂くのが最良と思う。主導するリーダーの特徴により、サポイン事業の出口は大きく異なるのではないか。また、今回のサポイン事業では開発途中で人材が退職し、研究開発計画に支障が生じたため、途中で技術者の不足に陥らないよう、新規人材活用の施策を行った方が良い。
最後に、本流の研究開発から派生した技術開発に、当初の予想と少々異なる自動車分野からの引き合いが来たように、想定していた展開先以外にも幅広く横展開を視野に入れ、顧客を開拓した方が、事業化を進めるためには有効であると考える。

研究開発技術情報
プロジェクト名:
環境汚染ガスを無害化するための、先進的な光触媒分解処理システムの開発
事業実施年度:
平成24年度~平成26年度
研究開発の目的:
光触媒方式の特性を生かして常温処理を遵守し、従来光触媒技術では成し得なかった除去能力の高い装置システムを開発する
事業化の状況:
国内外市場の再調査、光触媒関連の製造環境の整理・改善、光触媒技術の専門員らの増員を行いながら、本プロジェクトでの協力体制の下、新技術の展開を行う予定である