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自社技術が持つ強みを活かし、製品を世に出すことを強く意識した研究開発目標を設定

ソフトワークス株式会社      代表取締役         塩見俊夫氏(写真中央)
                 技術部長         鈴木康司氏(写真右)
株式会社浜名湖国際頭脳センター ソフト人財開発課長     鈴木温子氏(写真左)

自社技術が持つ強みを生かした研究開発を実施

研究開発を開始したきっかけを教えてください

本サポイン事業の共同研究先である産業技術総合研究所(産総研)では、従来より「半導体製造プロセスにおける微細尖端バンプ」の研究開発を実施していたのだが、その中で微細尖端バンプを高速で検査する技術を探索していた。様々な技術を比較検討した結果、当社のスタッドバンプ検査装置を使用することで比較的大きな尖端バンプの検査ができることがわかった。「スタッドバンプ装置に用いている技術をベースに改良を行うことで、より微細なバンプの検査が可能になるのでは」と、産総研のコーディネーターの方からアドバイスを頂いたこともあり、本研究開発に着手することを決断した。
微細尖端バンプには、今後普及の見込みがあるだけではなく、レーザー照明を用いた高速の高さ測定技術が世界で類を見ないものであり、競争力のある研究開発成果につながるだろうと考えていた。本技術の適用先は、第一には半導体実装の分野なのだが、それ以外にも多様な分野に展開が可能であることから、市場の拡大を期待している。

市場のニーズはどのように把握したのでしょうか

産総研の研究者の方を通じて市場ニーズを把握した。市場の要求スペック等に詳しかったため、相談を重ねながら研究開発を推進した。
研究者の方とは、サポイン事業を開始してからの付き合いになる。過去に、友人から私(塩見氏)に紹介があった産総研のコーディネーターの方と、受注生産を行っていたスタッドバンプ検査装置の研究開発をテーマに、あるプロジェクトへと応募したことがあった。その時に連携したコーディネーターの方から、産総研の研究者を紹介いただき、
今回の体制に結び付いた。

過去の良い縁が今回の研究開発体制に結び付いたのですね。その他、社外の関係者とはどのようにしてコミュニケーションを取ったのでしょうか

事業管理機関の方とは少なくとも月に1回は顔を合わせて進捗確認を行うとともに、アドバイザーが集まる場(委員会)では市場ニーズや求められる技術の話を多く耳にすることができた。開発した装置を見ていただきながら、多くの議論や話をするため、可能な限りメンバーが全員参加できるように委員会の日程を調整したが、それは同時に、多くの意見をもらいたいという考えから、タイムリーな成果創出にもプラスに働いたように思う。

製品を世に出すことを強く意識して研究開発のゴールを設定

研究開発の目標はどのようにして設定されましたか

微細先鋭バンプの高速検査装置

サポイン事業終了後に受注生産を行い、製品を提供できるレベルを目標としていた。国からの支援を得る中で、資金やリソースを有効に活用することで将来的な事業化が近づくと考え、サポイン事業期間中に製品を提供できるレベルに達することを目標とした。

研究開発中に何か問題は発生しましたか

レーザー照明の性能が当初想定していたほどには出なかったことだろうか。光学系の設計者と様々なディスカッションを行いながら性能を改良すべく研究成果を積み重ねた。

検査画面例(上:円錐パンプ、下:円柱バンプ)

問題解決に向けていかなる点に配慮されたのでしょうか

今回開発した装置は複数の既存技術を上手く組み合わせるものだったのだが、社外に開発を委託した顕微鏡とレーザー照明については、よりうまく性能のコントロールを行う必要があった。開発委託先には、当社が開発した装置を用いて実現したい具体的な内容とともに、実現のために必要な装置のスペックを詳細に伝え、単に結果を共有するだけではなく、より良くするためのフィードバックやディスカッションを随時行いながら、製品の仕様を詳細まで詰めて開発を進めるようにした。

社外の開発メーカーはどのような視点で選定されましたか

既存の付き合いがあった事業者の中でも、当社の研究内容に興味を持ってくれたメーカーを選定した。今回開発した装置に近いスペックの製品は国外企業で既に販売していたのだが、レンズと撮像素子のサイズの問題からそのまま導入するにはハードルがあった。国外企業に既存製品の改良を依頼するにしても、コストや時間を考えると現実的ではない。実現可能性を踏まえて、問題解決が可能な国内のメーカーに新規で開発を委託することとした。事業化を見据えてゴールを共にするパートナーと研究を進められたことが、製品開発につながったと考えている。

製品投入のインパクトが強い様々な産業への技術展開を想定

技術の出口としていかなる産業を想定されていますか

今回開発した技術を使用する主たる顧客は半導体実装の分野である。しかし、例えば食品分野でも今ではICタグ等が使用されており、製品が関係する産業は幅広いだろう。技術そのものの横展開を考えた場合、高速処理が出来る点を活かして、他の検査分野にも適用できるのではないだろうか。将来的には、半導体のパターン検査やプリント検査、エリアセンサなどにも適用できる可能性があると考えている。

検査装置はどのような顧客が導入しているのでしょうか

また、導入によるインパクトをどのようにお考えでしょうか顧客の中心となるのは、製品の生産量が増えて、目視の検査では追い付かなくなるような業界だろうと予想している。検査装置を導入するメリットは、人件費の削減と問題が起きた際に不利益を生まないようにすること等が考えられる。検査そのものは直接利益を生むものではないことから、従来、検査装置の導入優先度は低い傾向にあった。ただし、最近は検査装置の重要性を認識した顧客も増えてきているように思う。検査装置を導入すると、例えば不良品の発生を数値で統計的に把握することが可能になる。これらのデータを製造技術にフィードバックすることで、製造技術の向上につながることが期待される。

開発された技術にはそのほかにも様々な活用の出口がありそうですね

サポイン事業で開発した高速処理技術は、サポイン事業以外の研究開発分野にも使用可能な汎用性の高い技術だと考えている。この分野で重要な知見を得ることができた。高速処理の技術については、サポイン事業とは別の市場の顧客が興味を持ってくれており、新たな市場開拓のきっかけともなっている。

サポイン事業を効果的に利用する上でのメッセージ、アドバイス

最後に、今後サポイン事業に応募を検討される方や、現在実施されている方にメッセージをお願いいたします

サポイン事業は中小企業が研究活動を推進する上で非常に有用な仕組みだ。一方で、活用に際しては様々なルールも決められている。サポイン事業の実施に際して、特に初めて取組む場合は、先例を参考にして事業成果を出すために様々な情報を収集して進めるとよいのではないだろうか。本案件では、関東経済産業局のご担当に相談しながら、事業をより効果的に進めるための様々な取組を行った。研究開発の進め方は案件によって異なるものではあるが、既存の知見を上手く活用することによって成果創出までの時間を短縮することができるだろう。

研究開発技術情報
プロジェクト名:
3次元LSI積層実装技術に対応した微細先鋭バンプ検査装置の開発
事業実施年度:
平成25年度~平成26年度
研究開発の目的:
次世代高密度実装に用いられる円錐・角錐等の微細尖端バンプの形状検査技術を確立する
事業化の状況:
本装置では、5μmがかろうじて測定出来る限界であるため、さらに微細なバンプ測定技術の向上を目指す予定である