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脱VOC・簡便化に大きく貢献する工業界の
救世主
事業化好調の理由は「業界への深い見識」と「確実な攻め」

中島ゴム工業株式会社 代表取締役社長 中島 幹雄様

大気汚染・労働環境も改善する画期的な製品

今回のサポインは二度目となりますが、前回サポインを活用し事業化に成功した
「ACULAH®(アキュラ)」誕生の経緯について教えてください。

加硫接着剤フィルムACULAH®(アキュラ)

当社は、日本のゴム産業の創生といわれる九州・久留米にあり、工業用ゴム製品の開発・成形加工をはじめ、自動車用フッ素ゴムパッキングなどの製造を行っている。
長らく下請けであったため、何とかして独自技術を開発し、自社製品を持ちたいと考え、地道な開発を進めていた。そのきっかけとなったのは、平成24年に印刷事業場でおきた事故である。業務を行った従業員に胆管がんが相次ぎ、当時大きな社会問題となった。
自動車業界でも、その危険性は充分にある。自動車用防振ゴムやエンジンシールなどは「加硫接着」でゴムと金属を接着しているが、この時に使う加硫接着剤とは、塩素系ゴムが揮発性有機化合物(VOC)に溶解・分散されたものであり、使用時には大量のVOCを排出するリスクがあるのだ。このように従業員の健康を脅かす産業界の現状を何とか改善できないだろうかと考えた。
加硫接着剤における課題としては、まず刷毛やスプレーで塗工するため、膜厚みのバラつきが生じ、またスプレーでは塗着効率が低くなり、接着剤のロスを生むという点がひとつ。また接着剤成分が溶剤に溶解分散されているため、接着剤に含まれる分子が溶剤を介して自然に化学反応を起こしゲル化してしまうことから、在庫リスクも高い。危険物であるため海外へ運搬することも容易にできない。
そのため、第1回目のサポインでは、これらの問題をすべて解消する方法として、通常、プライマーと接着剤という2層に塗工し乾燥して焼付する工程を、樹脂フィルム上に再現する製品を開発した。こうして生まれた「ACULAH®(アキュラ)」は、当社売上の7割を占めるまで急成長している。

二度目のサポインではどのような開発を行いましたか。

この技術の応用として、第二回目のサポインでは免震装置に用いられる高減衰ゴムと金属を強力に接着するプライマーと接着剤の開発に取り組むことにした。ご存じの通り日本は地震国であり、大型建造物の免震化は喫緊の課題であるが、高減衰ゴムと金属をつなぐ「接着剤」については、充分な性能を発揮する製品が見当たらない。高減衰ゴムは、機能向上のために添加している配合剤が接着を阻害するものがあるため、もともと金属との接着の相性はよくないうえに、短時間での成形が難しく、不良率も高く、作業時間も長いため、全体としてコストも高くなるという悪循環が起きている。
このような状況の中、アキュラの技術を応用した新しい接着剤とプライマー、それを一体化した接着シートの開発に至った。これも従来のようにプレス機を必要とせず、接着力を高め、現場で保護シートを剥がして取り付けられる簡便さが売りだ。

ACULAH®(アキュラ)は欧米や中国の引き合いが多いそうですね。

VOCを出さない加硫接着剤フィルムについては、日本よりVOC規制が厳しい欧米の自動車業界での需要が高い。そして大気汚染の深刻な中国でも昨年12月よりVOC規制の厳格化により、溶剤の重量比率が75%を超える接着剤は使用できないためVOC対策をしない企業は正常な生産活動が出来ない状況となっている。そこで、当社のアキュラの注目度は極めて高く、多くの引き合いがある。人材確保が難しい中、作業環境の改善に取り組もうとする国内の大手自動車メーカーからのアクションもあった。この開発がなければ、下請けから抜け出せず、コスト競争で疲弊してしまっていただろう。

大切なのは第一顧客の心をつかむこと

サポインでの事業化によって、ACULAH®(アキュラ)は今、大きく成長していますね。
事業化は最も難しい部分だと思いますが、どこにポイントがあったとお考えですか。

まず、接着剤と業界を熟知しているキーマンがいたということだ。当社の技術顧問である江口力人は、自動車部品メーカーに在籍中に数多くの接着関連の開発を行った後、接着剤メーカーに転身した加硫接着剤のスペシャリストである。ゴムと接着剤について、学術的なことだけでなく生産現場もよく知っていたからこそ、本当のニーズに合致した製品が生み出せた。つまり、企業秘密に関わることが本当のニーズであり、顧客へのヒアリングだけではうまくとらえきれないということだ。
そして、加硫接着技術について世界一と評される彼は、各方面に多くのつながりを持っていた。
そのネットワークを活かし、第一顧客である欧米の大手ユーザーには早い段階でサンプル提供を行っており、採用に向けての有益な情報交換を進めていた。事業化の成功は、そこが肝となると考えている。VOC規制が厳しい国では、VOC処理コストを既に負担しているので、アキュラを採用することで、そのコストが削減され、さらに接着性能が向上するのであれば喜んで採用する。反対に日本はVOC規制が欧米や中国に比べ緩いので、VOCの排出はそれら諸外国に比べれば許されており、アキュラの採用は単にコストアップとしか考えない。また、日本の加硫接着剤市場は世界市場のせいぜい10%程度しかないので、日本企業へのアプローチよりも海外を優先したことが成功の大きな要因と考えている。

どのようにPRされましたか。

国内の展示会に出展しているが、重要度はさほど高くない。それよりは、海外の専門誌(今回は中国や欧州のゴム工業系専門誌)に広告を出すほうが、効果的だったように思う。私はかつてヨーロッパに住んでいたことがあり、欧州の人々の考え方や生活様式などを理解している。環境を考慮した製品は、日本よりも海外向けに展開するほうがはるかに受け入れられやすい。
そして、補助金を受けるタイミングも良かった。1回目のサポインが終了し、その発表をしながら2回目のサポインが採択されたため、相乗効果があった。むやみやたらに情報を出すよりも、確実なところに出していくことを考えていくと良いだろう。それらが功を奏し、今では、メーカー側から連絡が入り、遠方からでもわざわざお越しいただけるようになった。

補助金を大いに活用して自社の未来を切り拓こう

サポインを活用してよかったところはどこですか。

やはり企業にとって「金額の大きさ」は魅力だ。提出書類などを揃えていくのが大変だという声もあるが、慣れてしまえば手順通りに進めていけばいいものなので、それほど苦にならないと思う。
採択されるには、良い事業管理機関に出会えるかどうかも重要だ。当社の場合、福岡県工業技術センターから、どのようなことを書類に盛り込めばよいかという部分について、的確なアドバイスを頂くことができた。本当に開発をしたいなら不採択を恐れて諦めるのではなく、まずは出すべきだろう。また、基礎研究がある程度できていないと申請書類を書くのも難しいので、まずは自社開発を進め、そこからサポイン申請を行うと良いと思う。
研究開発の目標値の設定については、サポインの書類中に書いてある目標値を100とするならば、我々は常に150のレベルを目標としている。つまり、サポインはゴールではなく通過点という考え方だ。サポインが終了しても研究開発を続けながら、粘り強く事業化へつなげていくといいだろう。

今後の展望について教えてください。

国内の大手企業や中国の免震装置メーカーから引き合いがあり、2021年末には、製品として出荷する予定だ。今後5年で売上高を従来比5倍以上の15億円に増やすことを目標にしている。
同時に、高減衰ゴムも日進月歩で技術が進んでいるため、その高性能化に合わせ、さらに難しくなるであろう素材にも対応できる新しい接着剤の開発も進めていかなくてはならない。常に免震装置メーカー等の連携を密にし、今後もうまく追随できるような体制を作っていくつもりだ。