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綿密なマーケットリサーチによりユーザー(酪農家・畜産農家)ニーズを把握し、AI、IoTの新しい概念を盛り込んだ研究開発をブレずに遂⾏し、製品化に成功

株式会社ファームノート 執⾏役員カスタマーサクセスグループマネージャー   下村瑛史⽒(写真左)
デバイス開発マネージャー                         阿部剛⼤⽒(写真中央左)
株式会社ハイテックシステム 営業技術部ソフトウェアグループリーダー     髙橋勲充⽒(写真中央右)
公益財団法⼈とかち財団 事業部プロジェクト推進課副主任           梅沢晃⽒(写真右)

酪農・畜産の現場を回ってユーザーニーズを把握し、最終ゴールを決定

サポイン事業に応募したきっかけを教えてください。

2014年6⽉、(株)ファームノートを⽴ち上げて半年経過した頃にサポイン事業に応募した。クラウドシステムを使う⽜群管理ソフトウェアの開発販売のために、ユーザーとなる農家数百件に聞き取りしたり、牧場で研修を受けたりしていた。現場では発情の⾒逃しが多いという課題があり、クラウド技術の活⽤が求められていた。⽜の活動⼊⼒により21⽇周期の発情⾏動の管理を⽀援できるが、直接⽜の⾏動データを取る⽅が望ましいと考えた。類似製品に歩数で検知するものがあるが、新しい技術、考え⽅として、AI、IoTの概念を盛り込むことで、農家の乳⽣産、⾁⽣産のロスを抑える技術の開発を計画した。資⾦の充⾜のためとかち財団とともに応募し採択された。

体制構築の経緯を教えてください。

応募までの期間が短く、直接実施する機関のみで研究開発体制を構築した。本事業において⼤学はアドバイザーとして、必要な実験に対する指導と協⼒をお願いした。⼤学では受精卵移植等の先進的な分野が中⼼で、アカデミックと企業では関⼼が異なることも考慮した。

研究開発成果による酪農家の抱える課題解決への貢献について説明してください。

牛群管理システム

酪農では妊娠率を上げて空胎⽇数を減らせば、経済性が向上する。個体の泌乳量は分娩直後から増加し、ピークを迎えた後、徐々に低下する。ある量まで低下すると、農家には損失となる。乳量が減る前に妊娠させるため、受精の適期を知る必要がある。1年1産を⽬標としている農家は多いが、実際にできている農家は少ない。
技術導⼊により酪農家にとって利益が出るビジネスモデルができる。妊娠率を上げるためには発情発⾒率が重要な指標であり、優秀な農家で発⾒率7割、平均5〜6割である。⽬指すゴールは10割であるが、現状と⽐較してかなり精度が⾼い技術ができている。発情が⽬で⾒てわかるのは8時間程度のため、夜間の発情発⾒にもセンサーは有効である。個体毎の⾏動データを機械学習することで、個別の情報から個体差を考慮した最適な閾値を設定するアルゴリズムを構築した。
疾病検知にも展開できる。夏の⾼温などで⽜がヒートストレスを受けると、乳量の減少、受胎率の低下、卵⼦の状態が悪くなるなどの影響が出る。予防ができれば、農家の機会損失の削減に繋がる。発情発⾒とは分離して情報を得る。

牛の行動の基本データ取得を含めて、一からのスタートにより製品化に到達

プロジェクト実施中の苦労した点を説明してください。

そもそも⽜の⾏動データがなかったので、協⼒牧場や帯広畜産⼤でデータを取った。またハードウェアを作った経験がなく、⽜のどこにつけたらいいか、電波はbluetoothがいいのか等も含めて、どうしたら最適なスペックを作ることができるか苦労した。試⾏錯誤の末、プロトタイプを作製し、現在の製品に到達した。

酪農・畜産農家が望む技術、類似技術との差別点を明確にした技術開発

ユーザーニーズの把握⽅法に特徴があれば説明してください。

全国にアンバサダーと呼ぶ40〜50⼈の協⼒農家がいる。事業の初期段階から、情報提供、調査結果のレビュー等に協⼒してもらい、製品化の⼒となった。牧場経営者だけでなく、現場を知る牧場⻑や飼育管理スタッフ等で構成され、製品のファンであり、厳しいユーザー⽬線からの評価者として関係が醸成されている。

ユーザーニーズに応える製品化について説明してください。

センシング技術を⾼めても、ユーザーサービスとはならない場合がある。多項⽬のセンシングは製品価格上昇を招き、故障率が上がるリスクもある。体温などは正確にデータを得ることが難しい。ロバストネスを⾼めるには、加速度センサーが最適と考えた。価格が⾼いと、農家にとってコストメリットは出しにくく導⼊も進まない。今後も製品価格は下げていきたい。発情発⾒と疾病検知で⼤概の農家のニーズに応えることができる。製品化に絞ったからこそ、⽬標達成が早くできた。

類似技術との差別点はどこでしょうか。

類似製品はクラウドではなく、事務所のパソコンで管理するものが多い。ソフトウェアも⾼額で導⼊は進んでいない。本技術では、⽜の前でスマートフォンから確認・⼊⼒ができる。海外の製品はアップデートが難しく、農家が個別に閾値を設定していると聞く。本技術ではAIで⾃動的に閾値を設定している。また、地元に本拠を置いて活動することも差別点となっている。

知的財産権の取り決めはどうしていましたか。

内容がハードウェアよりもアルゴリズムであり、あまりなじまないと考えている。ソフトウェアの内容を記載して知財とするよりは、オープンしない⽅が良いと考えている。

事業化展開についてはどのようにお考えですか。

Farmnote Color 装着例

クラウドは酪農だと100頭以上、⾁⽜だと200頭以上の農家が対象となる。酪農家1,880⼾、⾁⽜繁殖農家500⼾、肥育農家750⼾を想定している。センサーのみだと規模感はなくなり、8〜9万農家が対象となる。将来的には、新興国市場も対象として⾏きたい。

サポイン事業を効果的に利用する上でのメッセージ、アドバイス

最後に、今後サポイン事業に応募を検討される⽅や、現在実施されている⽅にメッセージをお願いいたします。

事業を有効に使うと実⽤化を加速できる。本事業がなければ、ハードウェアの検討ができずに、ソフトウェアのみの開発に終わっていた。採択後は、当初のゴールに対してブレずに、いろいろトライできた。実施中は紆余曲折、失敗があり、最初の企画内容からいかにブレないか、何度も当初の構想に⽴ち返る必要があった。製品開発には綿密な市場調査が必要。当社では農家のヒアリングや農⽔省以下、種々の公開データの調査を⾏うことで、ある意味農家以上に市場環境を把握してきた。当社代表のネットワークを有効に活⽤することで、個別の農家とミクロ的な深い所まで話し込むことができ、調査結果を検証できた。こうして、現場の課題や、解決できると経営が伸びる要素が何かを把握できた。得られた情報をもとに、研究開発⾃体ではなく、最終製品を市場に出すことをゴールとして設定することが重要である。事業を直接実施する機関のみで体制を組んだことも、いい⽅向に作⽤した。ヒト集めには苦労したので、⼈材確保は早めに⾏うほうがよい。

サポイン技術情報
プロジェクト名:
牛個体監視兼識別用デバイス及びクラウド個体管理システムへの連携ゲートウェイの開発
事業実施年度:
平成26年度~平成27年度
研究開発の目的:
⽜の健康状態(発情・分娩・病気など)を推定し、飼養管理者に通知する機能を有する個体管理システムの構築のため、「⽜個体監視兼識別⽤センサデバイス」、及び個体管理(クラウド)システムとの統合を実現する「連携ゲートウェイ装置」の開発に取り組んだ
事業化の状況:
ウェアラブルデバイス「Farmnote Color」と「Farmnote Air Gateway」を平成28 年8⽉5⽇に発売開始。1,400農家に利⽤されている「Farmnote」と連携して、より精度の⾼い異常検知が可能。畜産における意思決定を可能とする仕組みが上⼿くデザインされていると評価され、2016年度グッドデザイン賞受賞