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産業界からのリクエストを解決するために、産学連携、企業連携によるチームで加速して、世界最⾼品質の深紫外レーザー加⼯機⽤の波⻑変換素⼦を開発・実⽤化

株式会社創晶 代表取締役社⻑    安達宏昭⽒

産業界からのリクエストに基づく課題解決に向けてサポイン事業に採択され目標達成

研究開発の経緯、応募のきっかけをご説明ください。

株式会社創晶(以下、創晶)の⽴ち上げは2005年、CLBO(CsLiB6O10)は1993 年に⼤阪⼤学(以下、阪⼤)で発⾒され、特許はJSTに帰属している。JST、NEDOプロジェクトを経て実⽤化した波⻑変換素⼦である。物性に優れ、基本特許は既に切れているが、製造法や応⽤の特許は有効で、現時点でも世界最⾼の性能である。産業界のリクエストがあり、2011年に創晶での研究開発をスタートさせ、製品化のメドも⽴った。CLBOの市場規模は⼤きく、素⼦販売はアウトソースされ、産業に役⽴っている。しかしながら昨今、産業界の要求が⾼くなり、紫外線の発⽣出⼒を上げるため、結晶を⾼品質にする、結晶径を⼤きくすることが求められている。現状⽣産しているメーカーでは対応できないため、阪⼤にリクエストがあり、阪⼤と創晶で⼿を組んで対応した。サポイン事業の予算がマッチし、研究加速させることを計画した。⽬標は、⼤型、⾼品質のスーパーCLBO結晶で、ハイエンドユーザーを対象にしている。

技術的な課題のポイントについてご説明ください。

課題はまず歩留まり向上である。初期の取組で寿命は⻑くなったが、品質に問題があった。結晶を⼤きくするには、⾼速に成⻑させる必要があるが、品質が保てない。品質が悪いと波⻑変換の過程で、結晶が割れ強い光が出せない。また⽋陥が⽣じると、散乱の密度が⾼くなる。初期の歩留まりは2〜3割であったが、新型撹拌技術の⾼度化等の製造⼯程の⾒直しで7〜8割になった。トレードオフの関係をサポイン事業で両⽴できた。強い光を照射しても、崩れず強い紫外光を出すことができる結晶を製造するメドが⽴ち、⾼品質化、⼤型化を実証できたことが⼤きい。⼤型化によって、素⼦の製品化率が上がり、コストダウンに繋がる。

CLBO結晶化技術の各研究開発フェーズに沿って、外部資金の導入を図り、技術開発を推進

サポイン事業の資⾦はどのように活⽤されましたか。

⼤型CLBO単結晶育成装置

サポイン事業の資⾦はほとんどが設備投資、装置整備に使⽤した。結晶を⼤型化しようとすれば、炉本体も⼤きくなり、装置費⽤も⼤きくなる。売上げが⽴つまで資⾦が必要であった。創晶では、⽂科省の資⾦で⽴上げ後、公的資⾦に頼ることなく、⺠間サービスによるキャッシュフローで運営していく⽅針で、タンパク質の結晶化、低分⼦医薬品の結晶化が主要事業であった。
これまでに、阪⼤助⼿の時期から、⽂科省、NEDO、JSTのCRESTで公的資⾦の使い⽅に慣れていたことから、今回のサポイン事業も含めて、⾊々な資⾦を使って、CLBO結晶育成技術の各研究開発フェーズに沿って、タイムリーに技術開発を進めることができた。キー技術の⼀つである攪拌技術については、新技術開発財団からの平成24年度新技術開発助成⾦で新型溶液撹拌法の基礎を固めていた。
資⾦の有効活⽤のためには、産業界の動き、市場の流れを読み、常に計画を前倒しで考えておくことが必要である。資⾦がなくて時期を逸してしまうこともある。⾼品質化、⼤型化の実証により、銀⾏融資の獲得、株主への説明責任に繋がった。

市場拡大時期にあわせて、競合製品を凌駕する高品質化、結晶大型化にメド

今後の事業展開についてご説明ください。

技術的には、結晶育成を繰り返し⾏い、⽣産効率の向上、⽣産技術の向上を⽬指す。競合製品は、国内の従来型CLBO製品や、中国の製品があるが、⾼品質の点で、既存製品とは棲み分けが可能で、新規市場に⼊ることができる。既存市場の置き換わりは、製品のサイクルが変わるまでは、メーカーの仕様が変わることはない。従って当⾯はハイブランドに絞る。メーカーが次世代機に更新する時期には、ハイブランドがノーマルブランドになる。新規市場として、今後市場が拡⼤するIoTのマイクロサーバーのようにガラス基板加⼯が必要となり、そこには紫外線加⼯が⽤いられる。マイクロサーバーの市場は2014年に約2100億円で、以降も急成⻑が続いており、2020年には約8倍となる1兆8000億円と予測されている(リサーチステーション合同会社の調査結果)。
孔径10μm以下の⽳あけを実現可能なレーザー加⼯は最もホットな局⾯を迎えている。シフトには数年かかるが、スマートフォンの⾼密度化は今後も進む。微細加⼯の実績と予測値から推定すると、レーザー加⼯装置の市場規模は、2020年で300億円、UV加⼯機ユニットは2020年には数⼗億と⾔われており、CLBO結晶のビジネスも急拡⼤が⾒込まれる。その期待から、第22回半導体・オブ・ザ・イヤー2016「グランプリ(半導体⽤電⼦材料部⾨)」をいただいた。
エンドユーザーとして、海外の半導体メーカーが相⼿となる。⼀⽅、国内メーカーは規模が⼩さく、⽇本には⼤きなレーザー会社もないため、サポイン事業で連携したスペクトロニクス株式会社にて⾰新的なレーザー装置を開発しており、今後、⽣産も拡⼤する。結晶の⼤きさは、⼀般的には200g、サポイン事業の⽬標は350gであったが、468gまで拡⼤できた。2016年3⽉にはCLBO結晶の製造・販売に特化する「株式会社創晶超光」を新たに設⽴した。

知的財産権への対応についてお聞かせください。

スーパーCLBO結晶を⽤いた波⻑変換特性

製造のノウハウは開⽰したくないため、現在は考えていない。⾼品質と⼤型化の両⽴ができるのは、創晶しかないと考えている。
創晶は、⽴場上、⼤学、産業界の両⽅に近く、コーディネーターとなっている。対話の場では、本⾳の話が出てくる。それらの話しの中から、ニーズをキャッチ、技術をキャッチし、達成可能性、インパクトで取り組むべき課題の優先度を決める。「結晶」という間⼝は特化しているが、産業界がリクエストや話しに来る存在であり、そこで課題解決していく存在でありたい。

サポイン事業を効果的に利用する上でのメッセージ、アドバイス

最後に、今後サポイン事業に応募を検討される⽅や、現在実施されている⽅にメッセージをお願いいたします。

公的資⾦を使っていることから、成果によって、社会に還元する使命感を持って臨むことが必要である。
企業だけでできないことに予算が付き、技術⼒がある企業は資⾦があるとブレークスルーできる。ただし、タイムリーに資⾦が付くことが重要である。今回は産業界で使えるものができた。⽬利きができれば、もっとイノベーションが進む。また、国が中⼩企業やベンチャーにより多くスポットライトを当ててほしい。社会的信頼がアップする証拠となり、2次的、3次的メリットがある。
チャレンジするときは、技術的基盤を固めてから応募することが重要で、決して無理しない。予算ありきで研究開発を⾏うと良い成果が得られない。

研究開発技術情報
プロジェクト名:
高出力深紫外レーザー加工装置を実現するスーパーCLBO(CsLiB6O10)波長変換素子の開発
事業実施年度:
平成25年度~平成27年度
研究開発の目的:
次世代の孔径10μmΦの微細マイクロビア径を⾼効率加⼯できる、Nd:YAGレーザーの第4⾼調波(波⻑266nm)を⽤いた深紫外レーザー加⼯機を実現するために、⾼品質CLBO波⻑変換素⼦を開発・実⽤化する。
事業化の状況:
新たに「株式会社創晶超光」を設⽴し、これまでの開発に携わってきた開発要員も投⼊し効率的に対応し、ユーザーの要望にもきめ細かく対応していく。設置後のメンテナンス、アフターサービスも重要な要素である。このため、営業、開発、技術サービスの各部⾨が密接な連携をとり、事業化を展開していく。すでに⽶国等の海外企業からも受注を得たこともあり、海外営業も積極的に展開していく。