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「学のシーズ、アイデア」と「産の蓄積技術」の共創による創薬スクリーニング用自動化装置を開発

株式会社ジェイテックコーポレーション ライフサイエンス部 副部長   森田健一氏(写真右)
国立大学法人大阪大学 特任教授                   植村壽公氏(写真左)

創薬スクリーニング系のニーズ「肝毒性」にフォーカスし、ゴール設定

サポイン事業による研究開発の経緯を教えてください

大阪大学植村特任教授は、産業技術総合研究所在籍時より、3次元大量培養を研究テーマの1つとして進めていた。当初は軟骨等の再生医療に利用しようとしていたが、再生医療の分野で時間も掛かるため、もっと早期に産業に適用したいと考えていた。
ヒト臨床で厳密な環境での培養が求められる再生医療に対して、創薬であれば一歩手前のクリーンレベル環境で検討していくことができる。
創薬でよく問題になるのは肝臓系の細胞である。製薬メーカーとしては大きな費用を投じて研究開発を行った薬が、市場に出回ってから販売を取りやめにすることもある。その原因の大凡は肝毒性である。そのため肝臓細胞を用いた創薬スクリーニングは非常に重要な分野である。
そこで創薬スクリーニングとして、手作業で細胞を培養しながら研究を行ってきたが、2次元的な培養には限界があり、毒性を見るためには3次元的な培養で細胞を作る必要がある。3次元的な細胞を短時間で作り、製薬メーカーの薬剤と反応させて毒性がないかを調べるスクリーニングのシステム作りをしたいと考えていた。
一方、ジェイテックコーポレーションでは、創業以来、自動装置を事業として行っており、開発要素のある自動化、例えば印刷業者での塗料の調色をコンピュータでマッチングさせるシステムでの販売実績があった。10年くらい前からはSPring-8用の高精度集光ミラー等もの事業も手掛けており、現在売上の75%を占めて、培養系や自動化システム系は残り25%となる。総売上げの8 割は海外向けである。
これまで様々な研究で繋がりがあった両者間で、サポイン事業の研究開発に応募することとした。

創薬スクリーニング用の3次元自動細胞培養のシステム化を目指す

研究開発の概要、背景について教えてください。

今回のサポイン事業の研究開発は創薬を目指している。創薬のスクリーニングへの適用となると、10や20の細胞塊でなく、何千以上の細胞塊を取り扱うことがある。そのため自動培養をシステム化しなければならない。最終的に事業化を視野に入れて3年間研究開発を進めてきた。
創薬ではいろいろな創薬候補から良いもの悪いものをスクリーニングで選んでいくため、数多く品質の揃った細胞を準備しなくてはならない。
一方で創薬に使う細胞は、事前に薬でどのように反応するかのデータは必要になるが、大量に培養して品質の揃った細胞の1 つ1 つに濃度の違う薬を反応させて細胞の状態を観察することや、本来持っている細胞の機能が失われていないかを確認するためにこの技術を適用した。ヒト臨床用技術でなく、少ない開発投資で事業化できる。iPS細胞は全ての細胞の基礎になり、分化していく細胞である。iPS細胞を増殖・分化してやると肝臓にすることができる。そこで創薬に使うiPS細胞を増やすことに、今回の研究開発のシステムを応用する試みもある。
今回のサポイン事業の研究開発では、もともと浮遊培養でiPS細胞が培養できるところまで進めたが、大量培養するには難しいことから、新たに当社でiPS専用の培養装置システムを開発した。

スクリーニング細胞用大量培養ベッセル

培養細胞を用いたスクリーニングのノウハウや実現に向けて、保有する要素技術、工夫で対応

研究開発中に発生した問題とその対応について教えてください。

培養器設計時にはアイデアや工夫を図面に落とし込むが、いざ実証しようとすると、工学系と培養系の技術者が設定する時間軸の長さが異なる。つまり工学系の技術者が2~3日で出来ると思っていた評価も、培養系の技術者が実際は2~3週間かかることが多い。培養コストが掛かり、準備の手間も多いことを考えると、検証するためのノウハウや工夫が多分に必要となることに苦労した。設計側も理解した上でバックフォワードしないと研究が終わらない。大量培養を自動化する際に、画像処理で浮遊している小さな細胞の位置を認識することや細胞の入った溶液をピペットにより自動で吸い上げること等も難しい技術であるが、自社の保有している要素技術で対応できた。
さらに大型装置であるため、位置を合わせて決まった動作をさせること等の調整が大変であったが、社内には経験者も多く、対応できた。また、バイオ関係なので材料選びにも気を遣った。
サポイン事業の成果を展開して、創薬スクリーニング装置は開発品のユーザ探索、iPS細胞継代培養装置は適用可能なアプリケーションの創出によって市場が拡大できると考えている。

回転浮遊培養装置CellPet 3D-iPS

サポイン事業を効果的に利用する上でのメッセージ、アドバイス

最後に、今後サポイン事業に応募を検討される方や、現在実施されている方にメッセージをお願いします。

技術開発は木を見て森を見ずという面が多分にあり、将来の事業化の森を目指すことの意識が必要である。3年間の中で申請時の内容と変わってくることや、技術的に難しいと断念しそうになることもあるが、サポイン事業でコミットした内容を到達するように日々の行動計画を確認しました。
今回の研究開発のコーディネートの難しさを感じたことから、共同体の調整がサポイン事業の根幹ではないかと思う。管理機関を務めていただいた(公財)新産業創造研究機構のコーディネータに感謝します。

サポイン技術情報
プロジェクト名:
iPS細胞等の3次元大量培養技術の開発
事業実施年度:
平成26年度~平成28年度
研究開発の目的:
製薬業界では現在細胞培養技術による創薬スクリーニングの評価技術は全て静置培養での2次元培養系で実施されてきたが、評価結果等の相関に限界があった。静置式3次元大量培養では十分な大きさの培養が困難であり、培養液浸透阻害や攪拌による懐死等で品質上問題があった。iPS細胞や均質なガン組織、肝臓組織等の3次元細胞の大量培養を可能とする回転浮遊培養法の3次元培養技術を高度化し、大量培養技術を確立する。
事業化の状況:
本事業終了後から2年間を目途に、また創薬スクリーニング用自動化装置は継続する形で、製薬メーカー等と協業並びに成果を実用化レベルまで改良・改善を進めることを計画する。