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国際標準規格に対応し、機能安全と相互運用性を両立する農業機械の効率化・自動化技術で地元に貢献

株式会社ヴィッツ 組込制御開発部 産機応用技術室 室長 札幌事業所 所長   和田学氏(写真右)
                                  髙野哲一氏(写真左)

国際標準規格に対応し、安全と相互運用性を両立する農業機械技術の研究開発を実施

サポイン事業による研究開発について教えてください。

当社は創業21 年で、元々は工作機械を制御するソフトウェアを作っており、機械制御に強い会社である。組み込みソフトウェアが事業主体であったが、研究事業を強みにして取り組むことになり、車載制御向けOS を中心として、ソフトウェアのプラットフォームを開発してきた。
2005年頃にはサポイン事業で安全技術に関する研究を行い、利用者の安全を守るためにメーカの責任を定めた国際ガイドラインで、日本で初めて機能安全の認証を取得した。その技術は、自動車、工作機械、建設機械、医療機械など様々な分野で利用が広がっている。当社は、国内のメーカが取り組んでいない新技術を研究事業に取り込んで実用化し、国内市場に広めることをビジネスモデルとしている。
今回のサポイン事業では農業機械を対象としており、その背景として、比較的危険な機械であること、いろいろなメーカのトラクタと作業機を組み合わせる関係でメーカ固有の通信方式の場合、繋いで使えない問題がある。
特に北海道では、昔から農業従事者の担い手不足はあるが、その結果1 戸あたりの圃場面積が広くなっており、植え付けと収穫には対応しなければならないことから、広い面積での効率的な対応が農家に求められている。
現状は大型農業機械で対応しており、欧米の輸入機械の比率が大きくなっている。
輸入機械には、安全性の対策と相互運用性の確保のために国際標準規格が設けられてお、その規格に対応している。相互運用性の通信方式の規格はISOBUSと呼ばれ、機能安全に対応した機械が出始めている。
輸入機械ではユーザの利便性が悪く、国内機械では異なるメーカの機械を接続して使えない場合がある。その対策として、国際標準の安全規格や通信方式に対応するソフトウェア基盤を整備して、国内の農業機械メーカがそれを用いることで容易に国際標準対応できるようにするための開発に取り組んだ。
サポイン事業では、通信プロトコルと機能安全の両立を目指しており、自動車にも使われている最新のコンポーネント技術を採用してメンテナンスをやりやすくし、ドイツのISOBUSの規格団体に加入し入手した相互運用性の確保に関するガイドラインに沿って、実装を行った。

自社技術で出来ることを見極め、市場の技術を上回るための体制作り

サポイン事業の研究体制について教えてください。

操作端末シミュレータツールの実行例

北海道の大学、高専と共同で研究を行った。北海道は大規模農業での先端地域であり、農業機械を効率化・自動化することで、地元に貢献できる技術を開発することに取り組んだ。
役割分担として、企業側は日本の市場ですぐに使われる通信技術、北海道大学/はこだて未来大学・苫小牧高専側は次世代の技術の開発を行った。
体制作りでは、自社が持っている技術が出来るもの、出来ないものを見極め、市場の技術を上回れる体制を考えた。機能安全のコンサルを行うアトリエ、アプリケーション開発を得意とするアーク・システム・ソリューション、農業分野の電子制御の第一人者である農業情報設計社と、各々の強みを組み合わせた体制で研究開発を行った。
また、アドバイザーの選定は大事であると考えており、特に農研機構での国際的な情報を踏まえた最先端の農業分野の実情や最先端の研究と課題、法改正に関する情報が非常に大きい。その他にアイシン精機、アイシン・コムクルーズ、ヤマハ発動機等には使用する側の立場で多くの助言をいただいた。

欧米等の動向も掴みながら、研究開発のタイミングの重要性を認識

研究開発の推進上での課題と対応を教えてください。

開発した作業機の操作画面編集ツール

技術に関してはお互いに情報交換を行ったが、成果を出そうとするほど権利の扱いの問題に直面する。また補助金以外に各社で資金負担もあり、各社でどのようにメリットを出すかを考える必要があった。そのため、各社が何を事業化するかを初年度に各代表者と話合いし明確にした。
研究対象の技術の事業化はサポイン事業開始時には時期尚早という見方もあったが、事業期間中に海外メーカで同様の取り組みや製品発表もあり、事業終了時には国内メーカの関心も非常に高くなっていた。始めた時は一般にはまだ先の技術と考えられていても、実際には各社が水面下で取り組んでいることもあるので、
事業化に向けた研究開発は先見性とタイミングの重要さを認識した。
実務的には農業に関する業界の常識感や国際標準規格の専門技術の習得に苦心したが、体制内外の知見者に教えていただきながら効率的に習得していった。

初めての分野で販売、他分野へも事業を展開

事業化に向けた活動について教えてください。

農業分野は当社で初めての事業であるが、ハードウェアを製作するメーカや商社と組んで営業活動を行っており、すでに何件かの製品は販売している状況である。また派生技術として商用車への事業展開も進めている。

サポイン事業を効果的に利用する上でのメッセージ、アドバイス

最後に、今後サポイン事業に応募を検討される方や、現在実施されている方にメッセージをお願いします。

研究開発計画は市場動向に合わせて柔軟に補正することが大事。初年度はアバウトに決めておいて、アドバイザーの意見を取り入れつつ、市場調査も毎年実施しながら、事業化に必要な製品仕様の見直しをはかった。各社のゴールを決めておいて役割分担を決めると、各社事業にも直接結びつき、力を入れて取り組みやすい。進捗管理は、毎月委員会を開催し、隔月でアドバイザーも出席して事業化の観点で助言いただいたことが効果的であった。メンバーの集中的なワークも成果に繋がった。
今回は過去2 回のサポイン事業の経験・ノウハウに基づいて、事業化に向けてスピード感をもって取り組んだ。

研究開発技術情報
プロジェクト名:
農業機械のさらなる高度化と海外進出に資する次世代電子制御ソフトウェア基盤の開発
事業実施年度:
平成26年度~平成28年度
研究開発の目的:
農業機械は、トラクタと作業機を組み合わせによる相互運用性確保と安全性確保が課題である。農業従事者の担い手不足と一戸当たり圃場面積の拡大に対して、欧米の大型機械は国際業界標準の通信方式と安全規格への準拠により対応。国内の農業機械の対策として、容易に国際標準に対応できるソフト基盤を開発する
事業化の状況:
研究終了後2年間は追加研究とサンプル出荷を実施する。農業機械メーカ等の協力を得て試作品を開発し、国内機械メーカの開発環境実現のツールに改良して販売開始予定。