文字サイズ
標準
色の変更

研究開発好事例を探す

  1. トップ
  2. 研究開発好事例を探す
  3. 革新的蓄電技術でエネルギー社会に貢献高出力型バッテリ「HYPER Battery」の事業化に向けて

革新的蓄電技術でエネルギー社会に貢献高出力型バッテリ「HYPER Battery」の事業化に向けて

CONNEXX SYSTEMS 株式会社 研究開発本部 開発企画室長    可知直芳氏

二回目のサポイン事業を実施

サポイン事業に応募するまでの経緯を教えてください。

当社は、2011年創業で現在従業員48名の会社で、独創的かつ革新的な次世代型発蓄電システムの開発、製造、販売、企画設計、システム・インテグレーション等を行う、エネルギー分野における開発型ベンチャー企業である。一般的なリチウムイオン電池は、高容量、高エネルギー密度であり、スマートフォンや電気自転車(以下、EV)に使われているが、当社ではこれとは別に、瞬間的にパワーを引き出せる高出力型のリチウムイオン電池「HYPERBattery」の開発を創業時から、目標の1つとして取り組んできた。HYPER Battery のアプリケーションを模索する中で、自動車分野における省エネ、CO2削減対策として、アイドリングストップシステムの重要性が高まっており、研究が進んでいることから、同システムへの適用を目指した。サポイン事業に関しては、中小企業基盤整備機構からお話を頂き、H25年度からリチウムイオン電池の負極材料の開発を実施していた経緯があり、初回のサポイン事業の終了後に、今回のサポイン事業の提案を行った。

電力回生性能、および高エネルギー性能の更なる向上及び量産性の確立を目指す

研究開発のゴールをどのように設定しましたか。

試作した金属・樹脂一体型電池ケース

マイクロハイブリット車用の12Vバッテリとして川下企業のニーズを満たすために、HYPER Batteryの電力回生性能、および高エネルギー性能の更なる向上及び量産化プロセスの確立をゴールとした。企業や大学との共同体制も検討したが、当社で一通りの主要技術は保有しているものと判断し、今回は単独で取り組んだ。京都高度技術研究所には、サポイン事業以前から、開発成果の事業化を相談していた経緯があり、事業管理機関になって頂いた。その他にも、大手化学メーカー、電池メーカー、国立大学教授などのアドバイザーにご支援頂いた。

必ず実を結ぶ技術であるという認識を終始一貫して持っていたことが事業推進の原動力に

研究開発の体制、研究開発中の苦労した点について教えてください。

絶縁層一体型セル外観

小規模の会社で、技術開発メンバーも限られる中、複数の技術開発を並行して実施する必要があり、適材適所の体制を組むことが難しかった。そこで、主要部分は自社で構想を練り、他の実験作業は外部企業に委託することにより効率的に進めた。事業期間中は、自動車業界のトレンドがドラスティックに変化した時期であり、市場ニーズの把握に苦労した。事業開始当初は、EVの普及は穏やかなペースで進むと考えていたが、想定以上のペースで普及が進んだ。川下企業のニーズも流動的に変化する中、市場のタイムリーな把握と、それを踏まえた軌道修正に苦心した。そんな中で研究開発を円滑に進められた要因としては、前述した外部企業や川下企業、京都高度技術研究所の力を借りられたことが挙げられる。どんな製品も、製造技術がないと製品化することができない。開発した電池の量産試作について、アドバイザー、外部企業に相談させて頂いた。京都高度技術研究所には予算やスケジュール管理など技術以外の抜け漏れに対して指導して頂き、大変有難かった。EVの普及により、高エネルギー型の蓄電デバイスに注目が集まる一方、当社技術に期待を持って頂ける川下企業が一定数あった。高出力型のリチウムイオン電池は、未来社会にとって必要な技術だという認識を、会社としてブレずに持ち続けたことが、事業推進の原動力になった。

今までの知見を活かして、産業分野、重量車EV分野での事業化も目指す

事業化に向けた今後の活動について教えてください。

自動車の電動化が当初の想定よりも急ピッチで進んでいるため、アイドリングストップシステムに限らず、本事業で蓄積された知見を基に、フォークリフトやAGV(無人搬送車)等の産業分野へ参入する準備も行っている。産業分野には急速充電の強いニーズがあるため、大電流を受け入れる、高い入力性能が必要となる。この性能は、アイドリングストップシステム用バッテリの特徴と類似しており、技術の水平展開を図っている。2019年中の大手機械メーカー向けの製品化を目標に開発を行っている。一方で、トラック・バス等の重量車EV分野への参入も検討している。重量車EVは、求められる航続距離が、乗用車の3~10倍程度あり、乗用車と比較して要求性能が厳しい。現状のEVバッテリでは、この性能には到達していないが、高出力バッテリを併用することで、性能向上を図れる可能性がある。また近年は小型軽量のバッテリを搭載し、超急速充電を繰り返して走行するバスが欧州や中国で注目を集めており、EV分野でも高出力型リチウムイオン電池のニーズが高まっていると感じる。このようなニーズに対して、当社のHYPER Batteryを用いることで、システムの最適化を図れると考えている。事業化は2021年以降を見込んでいる。

サポイン事業を効果的に利用する上でのメッセージ、アドバイス

最後に、今後サポイン事業に応募を検討される方や、現在実施されている方にメッセージをお願いします。

サポイン事業では多くの人々にサポートして頂いた。予算を頂いたことで、これまではできなかった外部委託が可能となり、効率的に事業を推進できた。アドバイザーから様々な貴重な意見を頂いた。中小企業は、自社だけでは出来ないことが多いので、サポイン事業が可能性を広げるきっかけになればよいと思う。新しい技術の開発には、どんなに入念に準備しても予期せぬ事態は発生する。その際は事業管理機関と問題を共有化し、早期に事業を軌道修正することが重要である。普段から事業管理機関と情報を共有しやすい関係を結んでおけたことも良かった。

研究開発技術情報
プロジェクト名:
瞬間的な電力回生に特化した12Vリチウムイオン電池の開発
事業実施年度:
平成27年度~平成29年度
研究開発の目的:
12Vバッテリのおける川下企業のニーズを満たすために、HYPER Batteryの「電力回生性能」、「高エネルギー性能」及び「量産性」を更に向上させるための技術開発を目的とする。
事業化の状況:
アイドリングストップシステムの開発で得られた知見を基に、フォークリフトやAGV(無人搬送車)等の産業分野へ参入のため、2019年中の大手機械メーカーでの製品化に向けて、開発を行っている。一方で、重量車EV(トラック・バス)分野への参入も検討している。