文字サイズ
標準
色の変更

研究開発好事例を探す

  1. トップ
  2. 研究開発好事例を探す
  3. チームワークを活かして、軽量・高強度で価格競争力のあるアルミテーパハンドルの事業化を目指す

チームワークを活かして、軽量・高強度で価格競争力のあるアルミテーパハンドルの事業化を目指す

鈴覚株式会社   代表取締役社長         鈴木格徳氏(写真前方中央左)
         製造本部長付 開発担当     辰巳晴夫氏(写真前方中央右)
         技術部 副部長         山田和人氏(写真前方左)
         製造部 生産1 課長       奥薫氏(写真前方右)、その他生産1課一同
公益財団法人浜松地域イノベーション推進機構    米谷俊一氏(写真後方左)

自社で保有している鋼管製ハンドルの加工技術を生かしてサポイン事業を実施

今回のサポイン事業に応募するまでの経緯を教えてください。

当社は、大正2 年創業、創立100年を超える、従業員180名の会社で、各種鋼材の販売や四輪車・二輪車用部品、輸出用梱包ケースなどの金属加工を手掛けている。二輪車向けのパイプハンドルは、月1万~2万本ペースで国内大手二輪車メーカーに供給している。米国、ベトナムに海外拠点を有しており、日系メーカー向けにATV(全地形対応車)やゴルフカーのフレーム材の鋼管プレス、溶接加工などを手掛けている。二輪車の高級機種のハンドルに、軽量化のため、高強度アルミ合金管が採用されるケースが増加していることに着目し、サポイン事業に応募する以前から、アルミハンドルの開発に取り組んでいた。自社で技術を保有している鋼管製ハンドルとは異なり、アルミテーパハンドルは変形や折れが発生しやすく困難な状況であった。そんな中、川下の大手二輪車メーカーからサポイン事業の話を頂いた。サポイン事業を活用して、製品化に取り組みたいという想いがあり、公益財団法人浜松地域イノベーション推進機構に事業管理機関を依頼したことが事業のスタートであった。

軽量・高強度で価格競争力のあるアルミテーパハンドルの開発を目指す

研究開発のゴールをどのように設定しましたか。

当社の鋼管製ハンドルバー製造のノウハウを活かして、新開発の高強度アルミ管を使用したハンドルの生産に当たって、全工程の高度化と、工程順序の最適化により、軽量・高強度で価格競争力のあるアルミテーパハンドルの一貫加工ラインの構築を目指した。ベンダー(曲げ加工)によるハンドルの割れの原因解析については、浜松地域イノベーション推進機構の紹介により、静岡大学にシミュレーションを依頼した。解析結果を3次元形状測定器のスプリングバックのデータと連携させることによりインテリジェントベンダーの開発に繋がった。

曲げ解析技術により、最適加工条件を選定することを可能にした

研究開発の体制、研究開発中の苦労した点について教えてください。

大学にハンドルの割れの原因解析をシミュレーション依頼するにしても、当初はどのような動きでどんなメカニズムをしているか分からないので、解析方法の手がかりもつかめなかった。1年目は大学の先生の言っていることが理解できず、何も分からないままであったが、何とか付いていこうとした。現場の写真や動画を撮影したり、ベンダー加工機をサーボ化して追随したりして、少しずつ分からない部分を解きほぐしていった。2年目からは担当者の理解力も上がり、大学の先生との会話もスムーズになった。従来、ベンダーは職人の世界であり、ハンドルの曲げ動作は数値化されていなかったが、挙動をデータ化することで、どの段階でどのような力が掛かっているかを知ることができ、期待通りにハンドルが曲げられるようになった。研究開発を円滑に進められた要因としては、スチールパイプのハンドルを製造することの保有技術がベースとしてあったことである。元々、金属材料の曲げの専門集団であるため、大学の先生による指導のもと、メカニズムが分かってくると、理解が早く、現場対応も早くなった。また、静岡大学工学部は浜松にあり、地の利もあって大学の先生が何回も企業を訪れ、ご指導を頂くことができた。大学の先生が気にかけてくれることが励みになった。もうひとつの要因は、ハンドルを作り続けたいという経営者の強い意思があったことである。ハンドル材料の主流はアルミに移行しつつあるため、早くアルミハンドルにシフトしなければならない、ここでやらなければハンドルを作る会社として成り立ち得ないという危機感が社員全員のモチベーションとなっていた。社内にはサポイン事業対応用の部署が新たに設置され、進捗や問題があれば集まって議論した。経営者や他部門からの全面的なサポートもあり、社内全体、すなわち「オール鈴覚」で事業に取り組むことができた。

研究開発の対象製品

サポイン事業の成果をもとに川下メーカーと事業展開を検討

事業化に向けた今後の活動について教えてください。

インテリジェントベンダーの概念図

川下メーカーとの協議により、事業化の目途はついている。今後数年間に亘り、ハンドルの納入数は増加するとの見通しを持っている。ハンドル製品は多岐に亘り、鋼管からアルミに置き換わってきているため、今後その要望に応えていく予定である。他の引合いについても、ニーズを持つ企業が、当社の研究成果に着目してくれることを期待している。事業の拡大については、7000系のアルミは溶接が効かず製造しにくいが、四輪メーカーは、自由が利いて安く製造出来る6000系のアルミを扱っており、参入できる事業形態を検討している。

サポイン事業を効果的に利用する上でのメッセージ、アドバイス

最後に、今後サポイン事業に応募を検討される方や、現在実施されている方にメッセージをお願いします。

分達だけでは、大学など外部機関に話を聞きに行くことは敷居が高かった。サポイン事業に採択され、事業管理機関にここまで手厚くフォローして頂けるとは思っていなかった。自分達でできることは限られている。成し遂げたいという意思があり、事業管理機関に事業内容を正確に理解してもらえれば、色んな人脈を紹介してもらえる。受け入れ先に、磨けば光る、地域の発展に貢献できるはずと感じてもらえることが大事だと思う。

研究開発技術情報
プロジェクト名:
アルミ難加工材・テーパー管の一体成形加工技術の開発
事業実施年度:
平成27年度~平成29年度
研究開発の目的:
二輪車用のハンドルでは、ここ10年のトレンドとして7000系の高強度アルミを使用したアルミテーパハンドルが台頭し、大型二輪を中心に市場シェアを伸ばしている。当社の鋼管製ハンドルバー製造のノウハウを活かして、新開発の高強度アルミ管を使用した軽量アルミテーパハンドルを開発する。
事業化の状況:
ハンドルはモデルごとに仕様が異なり、その多くが今アルミに置き換わりつつある。今後川下メーカーの要望に応えて、ハンドルの納入数が増える見込みである。