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公設試が持つ幅広いネットワークによって研究開発体制を構築し、今までになかったCNT複合レジンボンド砥石を開発

株式会社アダマス     生産技術課   神田 修一氏(写真右)
秋田県立大学 機械工学科  教授      鈴木 庸久氏(写真中央)
山形県工業技術センター  専門研究員   村岡 潤一氏(写真左)

カーボンナノチューブの優れた材料特性を活かした新たな砥石の開発を志向

今回のサポイン事業に応募するまでの経緯を教えてください。

当社は新潟県に立地し工業用ダイヤモンド砥石の製造・販売を行っている。レジンボンド(樹脂で作られた結合材砥石は、切れ味が良い反面、製品寿命が短い点が欠点であったことから、研削品質を落とさず寿命を延ばすことを模索していた。最初は地場で共同研究を出来る企業や研究機関を探していたが、その時、山形県工業技術センターの鈴木氏(現:秋田県立大学教授)が研究されていた、CNT(カーボンナノチューブ)の複合化に関する特許や文献を見つけて、相談したことが切っ掛けだった。最初は当社と山形県工業技術センター(以下、技術センター)と小規模な共同研究からスタートしたが、その後、同センター側からサポイン事業にトライしてみないかという話があり、事業管理機関に山形県産業技術振興機構に依頼して開始することとなった。-研究開発体制はどのように構築したのでしょうか。当社は砥石メーカーであるものの、CNT という新たな材料に関しての知見は少なかったことから、技術センターが持つネットワークを十全に活用させて頂いた。そのおかげで山形大学や岩手大学、彌満和製作所と共同研究体制を構築できた。またアドバイザーとなってくれた企業や大学関係者なども技術センターが持つネットワークによるものだった。

二つの砥石開発により、新たな事業領域の拡大を狙う

研究開発のゴールをどのように設定しましたか。

砥石摩耗量の比較:通常ポリイミド砥石vs. CNT複合ポリイミド砥石

今回の砥石の開発については、難削材の加工ができ製品寿命を延ばすことが出来るCNTの強度や熱伝導等、優れた材料特性を製品性能として発現させることをターゲットとした。他方、何でも切れる砥石、というのはないので、難削材の種類に応じて、砥石も開発する必要があったことから、クリープフィード研削用とハイレシプロ研削用の砥石を開発することとした。クリープフィード研削用は切り込み深く削れるものを目指し、ハイレシプロ研削用は従来の耐熱・耐摩耗材では2~3ヶ月しかなかった砥石寿命を2~3倍に延ばし、砥石交換頻度を減らすことが出来る砥石開発を目指した。特性の違う砥石開発を行うこととなってしまったが当社としては事業領域を拡大するにあたり、どちらの製品も開発したい意向があった。

事業化に向けた量産化技術やコスト削減についての研究開発に取り組む

研究開発において苦労した点を教えてください。

CNT複合レジンボンド砥石

CNTに関わる基盤技術は技術センターが保有していたが、実際に実用化・事業化していくにあたっては、製造時間の短縮やコスト面の課題を抱えていた。製造時間のスピードアップには山形大学のシーズ技術を活用し、量産化技術の確立にあたっては、当社内で試行錯誤しながら取り組んだ。サポイン事業の資金で新たに焼結炉を導入し、比較的小さく薄い砥石は作りやすかったが、厚く大きな砥石を焼くための型を作るのは大変だった。型の大きさなどの制約があることからなるべく小さく型を作るなど工夫を行った。また材質的にポリイミドを使ったCNTの複合化に関しては材質的に厚くすることは非常に困難であり、そこをクリアするのに、相当時間をかけた。このほか事業推進や管理面については、共同研究先が遠隔地ということもあり、連絡を密にするなどコミュニケーションには十分留意した。ICT機器を活用してテレビ会議なども行ったが、やはり直接出向くなどして、意見交換を行う必要もあった。

評価用の砥石を提供中。今春からの量産化に向けて取り組みを実施

事業化に向けた活動について教えてください。

既に評価用の砥石を問い合わせしてきた顧客に提供している。今回、共同研究を行った彌満和製作所にも顧客として製品を納品しているところだ。2019年度からは量産受注を開始する。

サポイン事業を効果的に利用する上でのメッセージ、アドバイス

最後に、今後サポイン事業に応募を検討される方や、現在実施されている方にメッセージをお願いします。

サポイン事業では、それぞれ異なる専門分野の研究者が技術を寄せ合うことによって、研究に必要な知識の空白領域を最小化することによって研究の停滞時間を短縮できた。そうした専門家を集めることは、一企業だけでは難しいことから公設試験研究機関(以下、公設試)に協力を要請することは非常に有用だと考える。公設試は基本的に企業のために存在しているので、保有する技術や設備、人的なネットワークなどを活用することがサポインの成功の鍵とも言える。またサポイン事業を始める前から事業化の出口を描くことは大事だ。さらに技術のシーズ指向に偏らず、ユーザーニーズの変化にも敏感に反応することも重要な要素だと思う。

サポイン技術情報
プロジェクト名:
難削材の複雑形状加工を可能とするカーボンナノチューブ複合長寿命レジンボンド砥石の開発
事業実施年度:
平成27年度~平成29年度
研究開発の目的:
長寿本研究開発は、ハイレシプロ加工において砥粒脱落を抑制し、工具研削等における耐
熱性・放熱性を改善することにより、超硬合金や耐熱合金、高速度鋼などの高能率・高精度
加工を可能とするカーボンナノチューブ複合長寿命レジンボンド砥石を開発することを目的。
事業化の状況:
既に評価用サンプル品を川下産業に提供中。2019年3月から量産受注開始予定。今後も生
産コスト及び量産性の改善も進めていく。